魔法の授業1
「今日の授業は魔術の実践になります」
その言葉に学級全体が待ってましたと
魔術学校に入ってしばらくが経ったある日。とうとうその日は訪れた。
「グレイ、聞いたか? 急に実践なんて言われても心の準備ってもんがよお」
情けない声を出すハイレンを尻目に、俺は考えていた。
もう上級魔法を使ってぶっ倒れるわけにもいかない。ある程度、
昼過ぎの学舎を出ると、太陽が嫌に眩しい。ぞろぞろと移動するうちのクラスの生徒と共に、俺たちは学内にある魔道訓練場に向かっていた。
訓練場は体育館のような建物で、中に入ると的や木人形などが並べられており、教官が先頭に立って号令をとる。
「これから皆さんには基礎的な魔法の使い方から復習してもらいます! まずはみなさんに誰かとペアを組んでもらいます。この一年間そのペアで魔術の訓練を行うことになりますので、自由に決めてもらって構いません」
そう言った教官が、決まったペアの名前を書いて提出して下さい、と俺たちに紙を配る。
……ペアか。共に歩いてきていたハイレンに話しかけようと振り返る。
と、ハイレンは俺の後ろから姿を消していた。
驚いて周りを見渡すと――同じクラスの女生徒に話しかけられている奴を見つける。
「ハイレン・ロスタールくんだよね?」
「お? ああ、そうだぜ」
「ロスタールくん、あたしとペア組まない? あたしの家とロスタール家、関わりあるし。あたしたちの親交も深めておこうよ」
「いいね。こちらからも是非お願いするぜ」
俺には目もくれずに奴は、女生徒と楽しそうに喋りながら歩いていく。俺とは一応友人なんじゃなかったのかよ。というかそもそもアーネット様一筋じゃないんかい。
その裏切り者の背中をジト目で見送っていると、肩がぽんぽんと叩かれた。
「アールグレイ君! ロスタール何某にフラれたようだね」
「別にそんなわけじゃない」
俺が振り向くと、にやける
「以前から君の魔術は直に見てみたかったんだよ。いつか対戦するときの予習がてら、私とどうだい?」
「別にきみと
そう言うと満足そうに頷いた彼女は、俺が手に持っていた紙をひったくると勝手に名前を書き込んで教官に提出しに行く。
俺はその背中を見送ると、一人魔力を集中させてみた。
いつも魔法を使うとき、痛む目の奥は何の感触もない。そしてその代わり、身体を巡る魔力も微々たるものだった。
やはり、感情の魔力変換なしでは、俺は以前の魔法からっきしの俺と大して変わらない。多少とは言え無茶は必要そうだった。
「全員ペアは決まりましたね! では「試魔石」をみなさんにお配りします」
色々と書き留めていた教官が大きな声で全員を呼んだ。
そして彼は全員に何かを渡し始める。
受け取ってみると、それは透明な石だった。
「これは?」
「それは「試魔石」と呼ばれるものだねえ。魔術を使った時には魔力が消費される。その消費された魔力を貯めこんで、色を変える魔力純度の高い宝石だよ」
スウィッツが光にその宝石を透かしながら解説してくれる。
「全員、魔術を行使するときはその石を身に付けてからにして下さい。魔術を使った際、綺麗に石に色が出たかどうかで、魔法がうまく使えていたかどうかを判断することができます」
なるほど……。自分が魔力をうまく使えているかどうか確かめられるというわけか。
俺が納得していると、教官はでは、と手を挙げた。
「魔術実践訓練を、これより開始する!」
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