解決

「おじゃましまーす」


愛城先輩が僕の家にやってきた、手には大きなレジ袋と紙袋を1つづつ持っていた。


「お菓子とかお酒とか買ってきたよ」


そう言って愛城さん、高そうなワインをテーブルの上に取り出して見せた


「ありがとうございます」


事件の後家に帰ったあと愛菜から話をされた


「どんな理由で別れたか知らないけどお互いが納得してないのは良くない、と思う、だから話し合おう?先輩が取られたら嫌だけど友達くらいなら許すから」


愛菜は適当そうに見えて意外としっかりしてるところがあるようだ、僕の知らない愛菜をまたひとつ見つけれた。


「愛城先輩ありがとうございます、ご飯は食べていきますか?出前とか取りますよ」


「じゃあ食べてこうかな、何頼むかは愛菜さんが決めていいよ」


そう言った先輩に僕は驚いた、昔なら自分が食べたいものを優先させようとしていた人が人に譲ったのだ、時間が経てば人は変わるということを目の当たりにして変われない自分を見て虚しくなった


「じゃあピザで」


愛菜の要望通りピザを注文した、僕はワイングラスを2つ用意しながら愛城先輩に話しかける


「酷いことを言うようですが、まず最初に言っておきます、僕は愛菜以外と付き合う気は無いので、今日はなぜ別れたのかお互い納得させるために話しましょう」


「わかった、じゃあまず聞かせて、なんでメールで一言別れようとだけ言ってウチの事を無視したの?」


ワインをグラスに注ぎながら聞いてくる

ボソッと愛菜が「さいてー」とか言っていたが聞かなかったことにする、僕は自分のことがずっと嫌いだ、だからこそ嫌いな自分を本気で好きになってくれた先輩が嫌いになってしまった、だからこんなに好きになってくれた人にこんな曖昧な理由で別れてくれというのは気が引けた、だからこそ嫌われるように最悪な終わり方をして見せた、どうやら効果はなかったようだが。


「それは、愛城先輩に嫌われるためですね、当時の僕はそれくらいしないと愛城先輩は諦めてくれないと思いましたから、足りなかったみたいですけど」


愛城先輩は僕の話を聞いて少し険しい顔になりながらワインを一気に飲み干した。


「なんで別れようと思ったの?」


あくまで冷静に聞いてくるが、僕の心境は取り調べを受けている犯人のようだった、しかも隣で愛菜が僕の顔をずっと見ているのもプレッシャーだった


「上手く言えないんですけど、僕は自分の事がずっと嫌いなんですよ、その嫌いな奴を好きな愛城先輩を次第に好きになれなくなったんです」


ぽかんと口を開けて困惑する愛城先輩と愛菜を見てしまったなと思った


「理解されないのはわかってます、だけど本当のことなので…」


黙って僕らの話を聞いていた愛菜が口を開いた


「先輩…アタシのこともきらいになる?」


袖をちょこんとつまんだ愛菜の手が少し震えていた


「ごめんね、先のことは僕にも分からない、でも愛菜なら大丈夫だと思う、もしそうなっても追い出したりしないから安心して」


最低なことを言ってるなと自覚しつつ愛菜の手を握る、この子には僕しかいないんだと再確認した


「えっと、ウチがアンタを好きだからアンタは私を嫌いになったの?」


「まぁ平たく言えばそういうことになりますね」


「意味わかんない!そもそも自分が嫌いって何?どういうことなの?」


取り乱したように大きな声を出した愛城先輩が愛菜の怯える目を見て我に返りごめんなさいという


「ごめんなさい、でも説明してもきっと理解できないですし、説明したくありません、そこは納得してくれないと」


「先輩ひとつ忘れてる、まず別れる時のこと謝らなきゃ」


僕は愛菜に言われてハッとした、自分より年下の子に言われるなんてやっぱり僕はダメな人間だ


「愛菜、教えてくれてありがとう、愛城先輩あの時適当な終わらせ方をしてすみませんでした」


「うん、許す」


寂しそうにだけど何か決意をしたような表情で愛城先輩は僕を許してくれた


「結局、納得は出来なかったけど、ウチとはもう無いのよね、じゃあ今度こそはっきりアンタの言葉で終わらせて」


瞳に涙を滲ませながら愛城先輩は言う、僕はこの人にずっと呪いをかけていたのか、とても残酷な運命を歩ませてしまったなと反省する


「愛城先輩、僕はあなたの事が愛せなくなりました、別れましょう、」


(愛城先輩との時間は楽しかったですありがとうございました)


後半のセリフは口に出してはいけないと思い飲み込んだ


「うん、今までありがとう」


瞳から溢れる雫を気にもとめずに微笑みながら真っ直ぐ僕の目を見る愛城先輩は確かに輝いていた、愛菜がテッシュを用意して愛城先輩の涙を拭き取る


「愛城さん、アタシと友達なろう?」


思ってもみない愛菜の言葉に驚いた愛城先輩だったが微笑みながら、うんと答えた


「愛菜って呼んでもいい?ウチは可憐って呼んで」


「おけー、可憐ね」


謎の友情が芽生えた2人を横目に、タイミングよく届いたピザを受け取りに行った。

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