昔の人

僕はどこからが自分と空間の境界か分からない様なふわふわした感覚で空を漂っていた、人の形をしているような気もすれば煙のようにも感じる、

周りを見渡しても真っ白の何も無いような空間のような気もすれば街並みが見えるような気がする、そんな曖昧な空間だった。


しばらく当たりを漂っていると真っ黒な虚が空中に浮かんでいた、この曖昧な空間でそれだけははっきり認識できて、その虚が自分であるということも直感的に理解した、

その虚に近づいてみると、周りには様々な色の光があることに気がついた、その光は虚を避けるように動いたり逆に虚の近くにとどまったり様々な様子を見せた、しかし光がその虚に近づきすぎると虚は逃げていく様な素振りを見せていた。


そんな様子をしばらく眺めていると今にも消えそうな儚い光が虚に飲まれ消えていく光景が見えた、

次の瞬間僕がいた空間が消えた。


「おきて」


どこからともなく声が聞こえて体を揺さぶられる、そして目を開けると少し髪が乱れている愛菜が僕の隣に寝そべっていた、

少しの時間考えて昨日愛菜と付き合うことになって、もう別で寝る必要はないよねという話になり同じベッドで寝たのを思い出した


「もう昼、おなかすいた」


そう言われて時計を見ると12時過ぎを示していた、こんなに長い時間寝れたのは久しぶりだった、今日の予定を思い浮かべるが、布団を買いに行く必要が無くなったので適当にのんびりすることに決める


「おはよう愛菜、ご飯作るね」


そう言ってもぞもぞとベッドから起き上がり洗面台に向かって歯を磨く、そしてぼんやりとしばらく愛菜がこの家にいるなら歯ブラシなんかの日用品を揃える必要があるなと思い浮かべ、ご飯の後に買い出しに行くことを計画する。


リビングに戻ると愛菜は誰かと電話しているようだった


「だから、アタシのこと嫌いならほっとけばいいじゃん、学校も辞めるし家にも帰らない、お互いこれでスッキリでしょ!もう連絡してこないで」


そう言って通話を切った愛菜は僕に聞かれていたことに気づいて少し悲しそうにだけど微笑んだ


「アタシの居場所ここだけになっちゃった」


その言葉を聞いた僕は愛菜の頭を撫でた


「しばらくここにいればいいよ」


そう言った僕の顔を見て嬉しそうにありがとうという愛菜を可愛いと思った。


「そうと決まれば、買い出しに行かないとね

歯ブラシと服他にも必要なものを買いに行こう、ついでにご飯も食べに行こうか」


愛菜は頷いて準備するねと言って洗面台に向かった。


しばらくして愛菜が戻ってきて買い物に出る

愛菜に食べたいものを聞くとハンバーガーと答えたので近くのファストフードのチェーン店で注文して食べた。

その後大きなショッピングモールに行き愛菜の必要なものを揃えていく。


あらかた買い物が終わって夕食の買い出しをして帰ろうとショッピングモールを出ようとした時一人の女性と目が合った。

相手も僕に気づいたようで僕に話しかけてくる。


「久しぶりー、元気してたー?」


そう言って僕の全身を値踏みするような目線で見回しているこの人は僕の高校生の時の先輩で彼女でもあった人だ


「愛城先輩お久しぶりです、お元気そうで何よりです、それでは失礼します。」


そう言って直ぐに離れようとする僕に愛城先輩は腕を組んできた


「なんか冷たくなーい?前みたいに可憐さんって下の名前で呼んでよ〜」


僕は愛城先輩の、自分の感情を相手に押し付ける子供みたいなところが苦手だ。

僕は直ぐに腕を振りほどき急いでるんでと言って愛菜の手を引いて足早に立ち去ろうとする


「えーまって、その子彼女なの?アンタってロリコンだっけ?私の方が絶対いいよー」


そう言ってまた僕の手を取って引き留めようとする愛城先輩にイライラし始めたところで愛菜が愛城先輩の手を叩いた


「人の彼氏にやめてくれます?あなた達がどういう関係だったのか知りませんが先輩はあなたに微塵も興味ありません、ですよね先輩?」


そう言って僕を見上げる愛菜に驚きながらも心の中でありがとうと感謝を述べる


「愛城先輩、すみませんが今僕はこの子と付き合っています、そして僕はこの子以外眼中にありません、何を思って僕に話しかけたのか、何を思って私の方が絶対いいよなんて言ったのか分かりませんが僕は相手をしません、諦めて貰えませんか?」


愛城先輩の目をしっかり見ながら僕の気持ちを伝える、すると愛城先輩は泣き出しそうになりながら語り出した


「ごめん、でもまだウチらが別れたの納得いってないし、まだアンタのこと好きだし、でも知らない女の子と歩いてるしどうしていいか分からなくなっちゃって」


そう言ってしゃがみ込んだ愛城先輩はとうとう泣き出した


「お願いだから嫌いにならないで」


そういう彼女にどうしていいか分からずオロオロしていると、愛菜が愛城先輩に近づいて何か耳元で囁いた後お互いのスマホを見せ合いそして仲良さげに手を振って愛城先輩はショッピングモールに歩いていった。

僕は何があったのか愛菜に聞くと


「さすがに同情したから先輩の家教えた、後で来るって」


僕は愛菜のまさかの行動に驚きつつ、2人としっかり話し合いしないといけないなと心に決めた。


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