第24話 意外に重要なことを言うキャラっているよね

 ダザイたち四人のパーティーは町を出て農場に歩いて向かった。


「俺は毎朝のように鏡を見て自分に問いかけるんだ。もしも今日が人生最後の日だったら、今これからやろうとしていることを、本当にやりたいと思うだろうかと」


 ジョブズが自慢げに言った。


「言っていることはカッコイイですけど、やっていることは昼間からお酒を飲むことですか?」


 ラプラスが皮肉たっぷりに言った。


「だってコンピューターのない世界だぞ。退屈で死んでしまう。俺が発明してやろうかと思ったが、この星の文明が低すぎて出来ない」


 ジョブズがめちゃくちゃなことを言い出した。


「コンピューター?」


 ピコがジョブズに聞いた。


「ピコちゃん。変な人に話しかけたらダメだよ」


 ラプラスがピコに釘を刺した。


 ダザイはコンピューターも聞いたことがあると思った。


 それどころか、どうして今まで忘れていたのか不思議なくらい、ハッキリと思い出せた。


「お前は知っているよな。親友よ」


 ジョブズがダザイに語りかけた。


「聞いたことはあります。でも勝手に親友にしないでください」


 ダザイは毅然とした声で言った。


「お前は絶対に地球の出身だと思うぞ。俺だけじゃない。有名なエッフェルも絶対に地球の出身だ」


 ジョブズが鼻息を荒くした。


「どうしてそんなことが分かるんですか?」


 ダザイはあきれたように言った。


「だってこの星に来る前から名前を聞いたことがあるぞ。絶対に輪廻転生ハローワークを通じて、地球からこの星に送り込まれたんだ。何と言っても俺を含めて、地球の人材は優秀だ。俺の考えでは特殊能力者は、ほとんど地球の出身だ」


 ジョブズが大声で唸った。


「ジョブズのパスポートを見せて」


 ラプラスがジョブズのパスポートを奪い取った。


「戦闘力5000と頭脳5000はすごいけどさ、他のステータスがゼロに近いじゃん。輪廻転生ハローワークに行ったんだろ。どうしてもっとポイントをバランスよく配分しなかったんだよ。その丈夫そうな身体なら、身体にもかなりポイント使っただろ」


「前世は病気で早死にしたんだよ。だから今度こそは丈夫な身体で長生きしてやろうと思った。そして高度な文明社会に転生して、俺の頭脳で革命的なコンピューターを発明してやろうと意気込んでいた。そしてハローワークのウィトゲンシュタインとかいう長い名前の職員にそのことを話したら、お客様にぴったりの星がありますよ、とか言われて送り込まれたのが、この星だ。ところが来てみたらまるで中世の世界だ。ゲームもない、マンガもない、アニメもない、コンピューターもない、俺はこんな星はイヤだ!」


 ジョブズがまるで小さな子供が駄々をこねるように騒いだ。


「でも輪廻転生ハローワークに行った時点で、トータルのポイントが少なくとも10000はあった計算になるぞ。前世で頑張ったみたいだな」


 ラプラスが少しジョブズを見直したような口調になった。


「ラプラスかー。お前の名前も聞いたことがある気がするぞ。お前も地球の出身じゃないのか?」


 ジョブズがラプラスを見つめながら言った。


「私は前世のことは覚えていないな」


 ラプラスは困惑したような表情になった。


「でもジョブズはどうして前世の記憶があるの?病気で死んだことまで覚えているなんて」


 ダザイは首を傾げて聞いた。


「知りたいか?」


「知りたいです」


「なぜなら俺が天才だからだ」


「やっぱりこいつダメだ」とラプラスが言った。


「おかしいのは輪廻転生ハローワークの奴らだ。絶対に何かを企んでやがる。地球の優秀な人材を、どんどんこの星に送り込んでいる」


「そもそも惑星ベートーヴェンという名前がおかしい。この名前も聞いたことがある気がするぞ」


「惑星の名前って誰が決めるの?」とダザイは聞いた。


「輪廻転生ハローワークの奴らだと思うぞ」とジョブズが答えた。


「輪廻転生ハローワークの人たちはどこから来たの?」とダザイは続けて聞いた。


「それは謎だな。でも地球と関係ある気がするぞ」


 ジョブズが低い声で唸った。

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