第21話 ビジネスチャンス

 ダザイたちはエッフェルに連れられて町の外の草原に出た。


 スライムが出るたびに、フェルマーが魔剣シューベルトで得意げに倒した。


 ダザイはフェルマーに魔法力で追い抜かれてしまうかもしれないと思って、少し焦った。


 一刻も早く容器屋から転職したい、とダザイは思った。


 エッフェルは町から離れた荒れ果てた大地に到着すると、いきなり地面に手を当てた。


 すると地響きがして、地面の裂け目から鉄鉱石などの金属の原材料が飛び出してきた。


「さすがは特殊能力者だな…」とラプラスは感心して、その様子を眺めていた。


「ありがとうございます」


 ダザイは感激して言った。


「とりあえずこれだけ持って帰ろう」


エッフェルは金属の塊をフワフワと空中に浮かべながら町への帰り道を歩いた。


 町に戻ると、公園に行ってエッフェルは金属の塊を地面に置いた。


「さて何を作る?鍋でいいのか?」


 エッフェルはダザイに聞いた。


「やかんは作れますか?音が鳴るやつ」


 普通の鍋だとなかなか売れない可能性がある、とダザイは考えていた。


「やかん?」と全員が聞き返した。


 誰もやかんの存在を知らないらしい。


 これはビジネスチャンスだ、とダザイは思った。


 ダザイは地面にやかんの絵を描いて見せた。


「中の水が沸騰すると、笛のような音が鳴るんです」


 ダザイは身振り手振りで説明した。


「ティーポットとはまた違うのか?」


 エッフェルが不思議そうな顔で聞いた。


「形状が違います」


「うーん。特殊能力者と言っても万能ではない。私は錬成する物の形状を具体的にハッキリとイメージする必要がある」


 エッフェルは難しそうな顔で腕を組んだ。


「そうですか…」


 この世界にやかんはない。


 やかんを売れば大儲けできるかも、と思っていたが、そこまで甘くはなさそうだった。

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