第16話 魔法学校に入りたい
ダザイたちは昨日と同じ安宿の、少し広い部屋に泊まった。
今日はちゃんと三人分のベッドがある。
ラプラスは図書館に行くと言って出て行ったが、しばらくして本を何冊か抱えて帰って来た。
「今日は大収穫だったね」
ラプラスが上機嫌だった。
「8000バッハは大金だね」
ピコも嬉しそうに言った。
「フェルマーは大丈夫かな?」
ダザイは少し心配になって言った。
「私は身分が奴隷だから野宿もしたことあるけど、やっぱり大変だよ。一文無しで放り出したのは、ちょっとかわいそうだったかも」とピコも言った。
「大丈夫だよ。ギルドは二十四時間営業だから、いざとなれば、ギルドの中の酒場の椅子で眠れるよ」とラプラスが言った。
「ギルドはずっと開いているの?」
「そうだよ。夜にしかできない仕事もあるからね。夜行性の魔物の討伐とか」
「なるほど」
「フェルマーを連れて行って結果オーライだったね」とピコが言った。
「フェルマーというか、魔剣シューベルトがとても役に立ったね」
ラプラスが笑った。
「あまり勇者らしくなかったけどね」と言ってピコも笑った。
「職業には他にはどんなのがあるの?」
ダザイは興味津々な様子で聞いた。
「いろいろあるよ。戦闘向きのスキルがない人は大工みたいな職人系の仕事に就くことが多いね。私がやっていた面接官のように公務員みたいな職業もある。戦闘系だと戦士とか騎士とか忍者もあるよ。でも私たちが目指すのは魔法使いよ。そしてその上級の魔法戦士よ」
ラプラスが興奮気味に言った。
「冒険者の上級職が勇者だったよね」
「そうだね。魔法職以外では、勇者はもっとも尊敬されている職業だよ。冒険者が厳しい鍛錬を積んで、ようやくなれる職業だから。もっとも今日のフェルマーのような例外もいるみたいだけど」
ラプラスが笑った。
「あんな勇者はイヤだよ」とピコも笑った。
「三人で魔法学校に行って、魔法使いになろうね」とダザイは言った。
「そうだね。それまでに出来るだけ、お金と魔法力を貯めないといけないね」
ラプラスが言った。
「魔法学校の学費ってどれくらいなの?」
「学費も寮費も無料だよ。でもやっぱり上等な魔法の杖とか魔法の箒を買うには、まとまったお金がいるからね」
「学費も寮費も無料ってすごいね」
ダザイは感激して言った。
「ハイリゲンシュタットは小さな町だから魔法使いの育成に力を注いでいるの。卒業生の魔法使いに、町を魔物から守ってもらっているのよ」
「学校の名前は?」とダザイは矢継ぎ早に質問した。
「ベルリオーズ魔法学校だよ。この星で一番の魔法学校だよ。他の町からも受験生が殺到するくらいだから」
ラプラスが瞳を輝かせた。
「どうしてこの町にそんなすごい学校があるの?」
ダザイはワクワクして聞いた。
「伝説の三賢者であるソクラテス・プラトン・アリストテレスがこの地に学校を開いたからだよ。なぜこんな辺鄙な土地に学校を作ったのか謎に包まれているけど、静かな環境で思索に耽りたかったからとも言われているわ」
「ベルリオーズ魔法学校は、もう2000年以上の歴史があるのよ」
ピコも興奮気味に言った。
そしてピコは突然に泣き出した。
「どうしたの?」
ダザイとラプラスは慌ててピコに駆け寄った。
「私みたいな奴隷階級の人間が魔法学校を目指せるなんて夢みたいな話だから嬉しくて…」
ピコは泣きながら言った。
「ダザイちゃん。ラプラスちゃん。ありがとう」
「だって私たち友達でしょう」
ダザイはピコを抱きしめた。
「そうだよ。こちらこそありがとう」
ラプラスもピコを優しく抱きしめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます