第14話 初めてのミッション
「それではこの四人でシューマン湖の外来魚駆除に行くわよ」
ラプラスが張り切って言った。
ダザイたちはギルドの中に入って受付嬢のところに行った。
受付嬢は昨日と同じ人だった。
「シューマン湖の外来魚駆除の仕事に行きたいです」
ラプラスが受付嬢に言った。
「はい。分かりました。四人全員が戦闘力もしくは魔法力1000以上ですね。それではいってらっしゃいませ」
受付嬢がダザイたちにシューマン湖までの地図を渡した。
ダザイたちはギルドを出て、町の出入り口まで向かった。
そして門をくぐって草原に出た。
「ここから先はいつどんな魔物が出てもおかしくない。僕がいるから安心だね。ハッハッハ」
フェルマーはひとりで高笑いをしていた。
ダザイたちは先頭に立って突き進むフェルマーの後ろから少し距離をとって、歩いていた。
しばらくして突然フェルマーが地面に伏せた。
「どうしたの?」とダザイは聞いた。
「静かに!魔物の気配がする」とフェルマーは答えた。
「私はさっぱり感じないけどな…」
ラプラスが首を傾げながら言った。
「私も感じない。最低限の魔法力はあるから、強い魔物が近くにいると分かるはずなんだけどな」
ピコも不思議そうな表情で言った。
すると草原からスライムが飛び出してきた。
「出たなスライム。お嬢さんたち。僕がいるから安心したまえ」
フェルマーは自信満々に言って、魔剣シューベルトに手をかけた。
そしてフェルマーはスライムを一刀両断した。
「これで僕の実力が分かっただろう」
フェルマーが胸を張って言った。
「スライムって最弱のモンスターだよね?」とダザイは聞いた。
「最弱とはいえモンスターだ。あなどってはいけない。それに倒すと戦闘力のポイントが1上がるぞ。だから僕は今は戦闘力1001の勇者ということになるな」
フェルマーは満足げだ。
「もしかして、戦闘力は全てスライムを倒したもの?」
ラプラスが愕然として言った。
「そうだ。1000匹ものスライムを倒した僕は、町ではスライムバスターとして有名だ」
フェルマーは声を張り上げた。
「スライムバスター?それってバカにされているよね?」とピコが言った。
「そんなはずはない。しかし不思議なことに、誰も僕とパーティーを組みたがらない。やはり僕が美し過ぎるから遠慮するのか…」
フェルマーは鏡で前髪を整えながら言った。
「こいつダメだ」とラプラスが言った。
「どうやって勇者になったの?」
ピコが不思議そうな顔で聞いた。
「それはいわゆるコネというやつだな。名門貴族の家柄なので、とりあえず生まれた時から職業は勇者を選べる」
「こいつダメだ」とまたラプラスが言った。
「魔剣シューベルトは、どこで手に入れたの?」とダザイは聞いた。
「お兄ちゃんのお下がりだ」
「こいつダメだ」とまたまたラプラスが言った。
「ここに置き去りにする?」とピコが言った。
「それは止めてくれ。こんな魔物だらけの草原に、ひとりにされたら死んでしまう」
フェルマーが急に震えながら泣きついて言った。
「ただの足手まといじゃん」
ラプラスが冷たく言った。
「でも死なれると後味が悪いよ」とピコが言った。
「がっかり」とダザイは言った。
結局のところフェルマーも連れて四人でシューマン湖に向かった。
モンスターはスライムしか出なかった。
そしてここぞとばかりフェルマーがスライムを倒した。
三十分ほど歩いて四人は無事にシューマン湖に辿り着いた。
湖の後ろには山があって、とてものどかな雰囲気だった。
湖の周囲には色とりどりの綺麗な花が咲いていた。
他には人は誰もいなかった。
なぜか近くに釣り竿が何本か落ちていた。
「ラッキー。釣り竿があるじゃん」
ラプラスが言った。
「釣り竿を買うお金もないから手ぶらで来たものね」とピコが言った。
「使わせてもらおうよ」とダザイは言った。
「まずはフェルマーから釣ってみてよ」とラプラスがフェルマーに言った。
「僕は紳士だから、どんな時でもレディーファーストさ。君たちからどうぞ」
フェルマーが気取った声を出した。
「要するに恐いんだろ」
ラプラスが冷ややかに言った。
「私が釣ってみるよ」とダザイは言った。
「エサは?」とピコが聞いた。
「フェルマーでいいんじゃない?」とラプラスが言った。
それを聞いたフェルマーが震え上がった。
「とりあえず湖の様子を潜って見て来てよ」
ラプラスがフェルマーを湖に突き落とした。
「助けてくれ。僕は泳げないんだ」
フェルマーはもがきながら泣き叫んだ。
「やれやれ」
ラプラスはあきれて言った。
「世話の焼ける人だな」
ピコもうんざりした表情で言った。
「フェルマーを釣り竿で助けるよ」とダザイは言った。
その時にフェルマーの背後で大きな魚がジャンプした。
「魚というか…」
ラプラスが目を丸くして言った。
「サメだよね」
ピコが茫然として言った。
「サメも魚類だから、魚だよ」
ダザイは冷静に言った。
湖の周囲に落ちていた釣り竿は、サメに食べられた釣り人のものだったのだ。
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