第9話 ゴールドフィンガー
ダザイたちは草原を歩いて町に向かった。
「ラプラスちゃんも輪廻転生ハローワークを通じて、この星に来たの?」
「そうだよ。ハローワークの職員がやたらオススメするし、冒険するのも面白いかなって思ったんだけど」
「どうして面接官の仕事に就いたの?」
「ギルドで紹介してもらった。安全な仕事の割には給料が高かったから選んだ」
「魔法の杖も町で買ったの?」
「そうだよ」
「過酷な星だと聞いていたけど、思ったより楽しそう」
ダザイはのん気に言った。
「いや。この星で生き抜くのはなかなか大変だよ」
ラプラスが苦笑いした。
「どうして?」
「そのうち分かるさ」
「ピコちゃんもハローワークでこの星を紹介されたの?」とダザイはピコに聞いた。
「ハッキリとは覚えていないけど、たぶんそうだと思う」とピコが答えた。
「どうして自殺しようと思ったの?」とラプラスが聞いた。
「妾として売られそうになったから」とピコはうつむきながら小声で答えた。
「ひどいね」とダザイは言った。
「私は奴隷階級だから…」とピコが恥ずかしそうに言った。
「自立しようよ。ギルドで一緒に仕事を探そう」
ラプラスはピコを励ますように言った。
「私に出来る仕事なんてあるかしら…」
ピコが不安そうに言った。
「ギルドに行ったことはあるの?」
「ない」とピコはうつむいて答えた。
「仕事は選ばなければ何でもあるよ」
「ところでこの星には身分制度があるの?」とダザイは聞いた。
「うん。聖職者、貴族、平民、奴隷の順番だよ」とラプラスが答えた。
「聖職者がいるってことは宗教もあるの?」
「特定の神様を奉る宗教はないよ。でもこの星は魔法教みたいなものだね」
「魔法教?」
「魔法力で全てが決まる世界だから。魔法使いになれば自動的に聖職者に昇格だよ」
「ポイントを魔法力に配分して良かったよ」
ダザイはホッとして言った。
「ダザイちゃんは容姿もかわいいけど、ゼロポイントの割には、いい身体がもらえたわね」
ラプラスが不思議そうな表情で言った。
「セールス品だよ。一年以内に前世で犯した罪を悔い改めないといけないんだって」
「あー。そういう厄介な身体を選んじゃったのね。ロクなことにならないわよ」
ラプラスが残念そうに言った。
「でも他はブタとかスライムしか選べなかったから…」
「普通は身体にもポイントを残しておくものよ」
ラプラスがあきれたように言った。
「ラプラスちゃんは何度か輪廻転生ハローワークに行ったことがあるの?」
「二回あるよ。今は三度目の人生ってことだね」
「この星にはどれくらい住んでいるの?」
「まだ半年くらいだよ」
「魔法力2000ポイントの他には何を持っているの?」
するとラプラスが自分のパスポートを取り出した。
パスポートの最後のページにステータスを示す数値が書いてあった。
自動で更新されるらしい。
「戦闘力、防御力、逃走力に100ポイントずつ。頭脳と幸運に200ポイントずつ。それと回復力が300ポイントだね。今のところ合計で3000ポイントだね」
ラプラスがパスポートを見ながら言った。
「すごいね」
ダザイは感心して言った。
「まだ全然ダメだよ。出来るだけポイントを稼いでから死なないと、次の転生が大変だからね」
「ポイントはどうしたら貯まるの?」
「善いことをする、他にはスキルを磨くことによっても増えるよ」
「なるほど」
「ピコちゃんのステータスは?」
ラプラスがピコのパスポートを見た。
「魔法力2500もあるじゃん」
ラプラスが驚いて言った。
「魔法力があるのに奴隷階級なの?」
ダザイは首を傾げて聞いた。
「階級は世襲制だからね。両親が奴隷階級なら子供も奴隷階級だよ」
ラプラスが答えた。
「基本的に奴隷は魔法力を持たないけど、ごくまれに突然変異で魔法力を持つ子供が生まれる場合もあるのよ」
ラプラスが続けて言った。
「それで魔法力を見込まれて、貴族のおじさんの家に売られそうになったの」とピコが言った。
「養子にしてもらえれば、貴族階級になれたかもしれないよ」とラプラスが言った。
「でもイヤだよ。すごく変態って噂のおじさんだから…。金色の指をしているらしいよ」
ピコが残念そうに言った。
「魔法力の2500ポイントは持っているから、自殺しても来世はそこまで悲惨にならないと考えたわけね」
「輪廻転生ハローワークの仕組みはよく分からないけど、噂には聞いたことがあるから…」
「自殺しないで良かったね。自殺したらマイナス10000ポイントくらいだよ」
ラプラスが脅かすように言った。
「ラプラスちゃんは輪廻転生ハローワークの仕組みに詳しいね。どうして知ったの?私は何も知らなかったよ」とダザイは聞いた。
「面接官の仕事をしていると、いろいろな人のパスポートを見るからね。それと何度か生まれ変わると次第にコツを掴めるよ」
「三人でお金を稼いで、魔法学校を目指そうよ」
ダザイは楽しくなってきた。
「そうだね。それで強い魔法使いになって、三人でパーティーを組んで、ポイントを荒稼ぎしますか」
ラプラスも鼻息を荒くした。
「仲間に入れてくれてありがとう」とピコが言った。
「魔法力さえ高ければ、成り上がれる世界だから大丈夫だよ」
ラプラスが元気よく言った。
「ところで特殊能力って何?」とダザイは聞いた。
「前世で偉大な業績を残した人が持つ能力だね。でもとても珍しくて、私も実際には会ったことがないよ」
「ヘミングウェイさんは特殊能力者らしいよ」
「えー。そうなの。あの人は確かに少し変わっているわね。だから長い間ジャングルでひとりでも生きていけるのね」
ラプラスが驚いたように言った。
「特殊能力はパスポートには表示されないの?」
「特殊能力に目覚めたら表示されるという噂は聞いたことがある」
「どうやって目覚めるの?」
「それは私も知らないな」
「私には特殊能力はないだろうな…」
ダザイは肩を落として言った。
「持っている人なんてほとんどいないよ」
ラプラスが素っ気なく言った。
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