第8話 友達がふたりもできました

「さて出発するか」


 荷物をまとめたラプラスが言った。


 ラプラスは魔法の杖も持っていた。


「ハイリゲンシュタットの町だね」


「まずはそこに行かないと始まらないからね」


「その町には何があるの?」


「ギルドよ。ハローワークみたいなものよ」


「またハローワークか…」


 ダザイは肩を落とした。


「ダザイちゃんはもう職業は決まっているから行く必要はないわ。私が次の仕事を探すだけよ」


「働いて、お金を貯めて、ふたりで魔法学校に行こう」とラプラスが楽しそうに言った。


「魔法学校?」


「この星にひとつだけあるのよ。魔法力1000以上が受験資格だよ。私は2000あるから受験してみたい」


「そこで魔法を学ぶと魔法使いになれるの?」


「そうだね。魔法使いとか、上級職の魔法戦士にもなれるよ。もちろん厳しい訓練があるらしいけどね。そもそも入学試験がかなりの難関らしいよ」


「私は受かるかな…」


 ダザイは不安になって言った。


「一緒に受験勉強しようよ」


 ラプラスがダザイの肩を叩いた。


 ダザイたちは丸太小屋を出た。


「もうすぐバスが来るよ」


「バス?」


 バスとはゾウのことだった。


 しばらくすると十頭のゾウが一列に並んで行進してきた。


 先頭のゾウは「ハイリゲンシュタット行き」という看板を首にぶら下げていた。


 ゾウは私たちの目の前で立ち止まった。


「さぁ乗って」


「うん」


 もちろんダザイはゾウに乗るのは初めてだった。


 ゾウに乗っていると、トラも近寄って来なかった。


 町に向かう途中で、思いつめた表情で崖に立っている少女を見つけた。


「どうしたの? こんなところにひとりでいると危ないよ」


 ラプラスが声をかけた。


「自殺しようかと思って」と少女が答えた。


「自殺しても輪廻転生ハローワークに行って生まれ変わるだけだよ。自殺ならマイナスポイント間違いなし。次は今よりもずっと悲惨な人生になるわ」


「そうだよ。自殺なんて止めなよ」とダザイも言った。


 ダザイはなぜか少女を放っておくことができなかった。


 少女はラプラスに強引に引っ張り上げられてゾウに乗り込んだ。


「名前なんていうの?」とラプラスが聞いた。


「ピコ・デラ・ミランドラ」と美少女が答えた。


「長い名前だね。ピコちゃんだね」とダザイが言った。


 ピコは静かに頷いた。


 ピコは小柄な美少女で栗色の髪をしていたが、ボロボロの服を着ていた。


 茶色い透明感のある瞳がとても美しかった。


 そして私たちの乗ったゾウは、しばらくしてジャングルを抜けて草原に出た。


 遠くの方に町が見える。


 私たちはゾウを降りて、ラプラスがゾウに果物を渡した。


 どうやらゾウのバスの運賃は果物らしい。

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