第3話 転生先が決まりました

「どれに応募されますか? 私のおすすめですと、スキルのバランスが取れた冒険者になるのがいいと思いますが」


 ウィトゲンシュタインが営業スマイルで言った。


「安定志向もいいけれど、私は何か大技を持ちたいです。私にしか出来ない何事かを成し遂げたい。だから1200ポイントを全て魔法力に配分したいです」


 津島はすっかり調子に乗っていた。


 後から考えると、津島はまだこのハローワークの仕組みを理解できていなかった。


「さすが言うことが違いますね。最近の若者ときたら安定志向ばかりで、つまらないのですよ。久しぶりにお客様のようなカッコイイ男にお会いしました」


 ウィトゲンシュタインが津島を尊敬の眼差しで見た。


 津島はカッコイイと褒められて悪い気はしなかった。


「ではせっかくですから過酷な星に行かれてはどうですか? もちろん過酷な星は大変なこともありますが、その分ポイントも貯まりやすいです。危険な仕事ほど給料が高いのと同じですね。また来世もたっぷりポイントを稼いでハローワークに来てくださいよ」


 ウィトゲンシュタインが興奮気味に言った。


 津島はおだてられて、すっかり上機嫌になっていた。


「惑星ベートーヴェンなんてどうですか? ここはものすごい星です。厳しい試練が待っていますよ。しかしその魔法力があればどうってことないですよ」


 ウィトゲンシュタインが一枚の求人票を取り出した。


 その求人票には「世界に平和を取り戻せ! 強くて勇敢な魔法戦士を求む! 魔法力1000以上」と書かれてあった。


「そこに決めます」と津島は即答した。


「迷いのないところが男らしくてカッコイイですね。もちろん男に二言はありませんよね」


 ウィトゲンシュタインがさらに津島をおだてた。


「もちろんですよ。せっかくなら冒険してみたいですから」


 津島は高笑いをしながら言った。


「それでは1200ポイントを全て魔法力に割り当てました」


 ウィトゲンシュタインが満足げに言った。


「次にオーダーメイドで新しい身体を作りますので、試着室にどうぞ」


 ウィトゲンシュタインが立ち上がって津島を案内した。


「希望通りの身体になれるんですか?」


 津島は驚いて聞いた。


 それなら美少女の魔法戦士とかありだな、と津島は思った。


「お客様は既にポイントを使い切ってしまったので、身体は中古品か余り物になります」


 ウィトゲンシュタインが素っ気なく答えた。


「聞いていないですよ。身体にもポイントが必要なら事前に言ってくださいよ」


 津島は文句を言ったが、時すでに遅しだった。


 ウィトゲンシュタインは「それでは頑張ってください」と言って3番ブースに戻って行った。

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