第16話 伯爵領都

 ◇◇◇◇◇


 リンドウが峰打ちで倒した総数6名の暗殺集団が近衛兵団に捕縛されて、顔全体を覆うマスクを取って顔を確認したのだが、あの凄まじい戦闘を展開していた全員が10代と思われるくらい若い少年たちだったのに衝撃を受けていた。


 まだ、気絶している状態なので、馬車に乗せて連れて行くらしい。



 シャビル王子を乗せた馬車と近衛兵団は、メノール伯爵領都に向けて出発した。


 リオとリンドウはゼータに乗って、シャビル王子一行の後をゆっくり進んでいる。

 ゼータにしたら歩きの速度。


 このペースでもうすぐ着くなら、無理すれば1日で着いてたよなぁ。

 ゼータのスピードってハンパないね。



 ◇◇◇◇◇



 数時間経って、街が見えてきた。

 あれが領都か。

 領都ともなると結構大きな街に見える。

 元いた辺境伯領都と遜色ない規模だ。


 王子たちの来訪とあって、リオたちもほとんど無審査で街への入場を許可された。


 街に入る前にゼータはエサをあげて、カードに収納した。


 ゼルダンたち近衛兵団は、ゼータが消えたことに疑問を持っていたが、正直にゼータが召喚獣で収納できることを伝えるとさらに驚いていた。

 王子も含めて、今まで召喚獣など見たことないという感じで、たぶん、この大陸中で唯一の召喚獣ではないかというくらいレアな存在だという。これも固有スキル〈マイ・ガチャ〉がいかに希少かがわかる。



 街に入ると、まず王子一行は伯爵家の者の案内でこの街一番の高級宿泊施設〈金の鳳凰亭〉に入った。

 どうも貸切状態らしい。


 その中でも一番良い部屋は王子に割り当てられ、その同じ部屋に世話役の老人とお付きの侍女二人が陣取っている。


 本来であれば、次に近衛兵団団長が陣取るはずだが、王子の要望によって同じ階にリオとリンドウの部屋が用意された。

 見ず知らずのリオとリンドウを王子の近くの部屋に置くこと自体不思議であったが、それには誰も異論を挟まなかった。

 リオとリンドウもその申し出を受けた。

 宿泊費が浮くという理由のみで。


「リンドウ!すごい部屋だね。部屋にお風呂もついてるみたいだよ!」


「たしかに良い部屋ね。

 それにしても、あの王子は警戒心がないのかしらね。周りも誰も反対しないし。」


「そうだよね。僕たち今日会ったばかりだもんね。」


「まあ、私たちにとっては良いんだけどね。」


 リオとリンドウは部屋でくつろいでいた。

 食事も部屋に運ばれて来て、今までで一番豪華な食事を二人でいただいた。

 至れり尽くせりの大満足。


 それから、世話役のセバルスがリオたちを呼びに来た。王子の部屋に来て欲しいと。



 ◇◇◇◇◇



 部屋には、王子の他、世話役のセバルスと二人の侍女以外にはいない。


「リオ、リンドウ。

 まずは助けてくれてありがとう。」


「あなた、大丈夫?

 この部屋に護衛が誰もいないわよ。」


「リンドウとリオだけだから大丈夫かな。

 それには理由があってね。

 君たちが信用できるからだよ。」


「それは嬉しいわね。でもね……。」


「誰でも信用するわけじゃないんだ。

 これは私の固有スキルによる判断なんだ。」


「なるほどね。」


「話を戻そう。お礼をしたいんだが、何か欲しいものはあるかな?」


「リオに聞いてみて。」


「そうだったね。主はリオだったね。

 そっか。リオはお金がいいのかな?」


「え?」


「不思議に思ったかい?

 さっき話した固有スキルなんだけど、私の固有スキルは『直感』って言うものなんだ。

 相手の考えていることが、なんとなくわかるんだ。特に喋ったことが善意か悪意かは100%でわかってしまうって言うスキルだよ。

 ここに護衛がいないのもそういうことなんだ。君たちに悪意がないことがわかっているからね。」


「あ!そうなんですね。」


「じゃあ、お礼はお金でね!」


「はい。すいません。」


「それとここからはお願いになるんだけどね。

 私たちはこの街に1週間滞在して王都に帰る予定だ。そこで、リオたちに護衛の依頼をしたいと思うんだがどうだろうか?

 それに対する報酬もきちんと準備するよ。」


 それにはリンドウが間に入った。


「今日は通りかかった手前、こういう形になったけど、暗殺されるなんて穏やかじゃないよね。何が起こっているのか教えてもらえるかしら?」


「そうだね。じゃあ、簡単に話すよ。

 外で言っちゃダメだからね。


 サザンオール王国には王子が二人いるんだ。

 第一王子であり兄のアルビルと第二王子の私シャビルだね。

 兄は私と違って、武人のような人でね。

 次期国王として期待されてるんだよ。


 ところが、数年前から様子がおかしくなってね。詳しくは言えないけど、ある闇組織との関連が関係している疑いがあってね。


 それが国王に知られるとまずいと思ったんだろうね。王子としてではなく、私の固有スキルが邪魔になったってわけ。暗殺集団は足のつかない闇組織の者だろうね。


 簡単に話すとそういう感じなんだけど。

 まあ、ここまで重い話だと引き受けにくいよね?」


「そうですね……。」


 リオはリンドウの方を見た。


「リオ。私は良いわよ。」


 え?いいんだ。じゃあ、断れないよね。


「はい、お受けします。」


 それを聞いたシャビル王子の顔がパッと明るくなった。


「そうか!ありがとう!

 謝礼は期待しておいて。


 それじゃ、1週間は自由だから、好きにしてもらっていいからね。1週間後に出発するからそのつもりでよろしく。」


「はい、了解しました。」


 そのあと、今日の謝礼としてセバルスから大金貨3枚をもらって自分達の部屋に戻った。

 謝礼は前金として、王都に帰ってから残りがもらえるらしい。


 暗殺集団から護った謝礼(前金)をもらう!

 チャリン(効果音)

 所持金:3363000ペロ。


 うふふ、これで今日もガチャれる!


 ◇◇◇◇◇

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