第17話 昇級試験

 ◇◇◇◇◇


 シャビル王子との話も終わって自由時間になったリオとリンドウは早速、冒険者ギルドの領都支部に足を運んだ。

 この街に来た目的である冒険者ランクの昇級試験を受けるためである。


「わー。人が多いね。」


「そうね。だいぶ違うわね。

 リオ。受付に行くわよ。」


「はい!」


 人は多いが受付はそんなに混んでないようである。


「こんにちは!今日はどのようなご用件ですか?」


「僕たち、昇級試験を受けたいんですがやってますか?」


「はい。では、確認しますので冒険者証を提示願えますか?」


 リオとリンドウは冒険者証を受付の女性に渡した。


「はい。お二人ともFランクですね。昇級の条件はクリアしてますのでEランクの昇級試験を受けていただけます。


 昇級試験は地下の闘技場での対人戦になり、当ギルド支部の試験官と戦っていただきます。

 今日の試験官はCランク冒険者になりますので、勝つ必要はありませんからね。

 戦闘能力を見て判断しますので、リラックスして普段通りでお願いします。


 では、受験料として2名分40000ペロをお支払いください。」


 リオは受験料を払った!

 所持金:3323000ペロ。


「はい、確かに受けとりました。

 では、地下の闘技場に案内しますね。」



 ◇◇◇◇◇



「こちらが闘技場です。

 ゼファーさん!昇級試験をお願いします。」


「おー!ランクは?」


「お二人ともEランクです。」


「オーケー!みんな!ちょっとやめて席に上がってくれ!」


 闘技場で訓練をしていたと思われる冒険者たちが観覧席のような場所に退避する。


「お!今日はFランのちびっこと嬢ちゃんかい。怪我しないようにな!」


「ちびっこはすごい装備だな。どこかの富豪様かよ。いいねえ。」


「ゼファー!やり過ぎんなよ!

 お前、手加減出来ねえからな!」


「おう!優しくだぜ!ははは!」


 みんなでゼファーさんにいろいろ言っている。


「うるせえ。俺はいつでも真剣なんだよ。

 冒険者は痛い目見ることも経験になるんだよ。口挟むんじゃねえ!」


「ははは、そりゃそうだ。こりゃ大変だな」


 わー。ちょっと緊張してきた。


「それじゃあ、始めるか!

 お前たち、武器は剣でいいのか?」


「はい!」

「いいわよ。」


「それじゃあ、この木刀を使え!

 魔法が使えるなら使っても構わん。

 ある程度はこっちからは攻撃しないから、思う存分攻めてこい。

 じゃあ、少年から始めようか?」


「はい!お願いします!」


 リンドウは一旦観客席に移動した。


 闘技場の真ん中にゼファーさんとリオが対峙している。


「はじめ!」


 ゼファーさんの合図で昇級試験が始まった!


 リオは、ゼファーさんの目の前に突っ込み、木刀を振り下ろす!


 まずは軽く躱される。


 そこをリオは横に木刀を振るった。


 それもバックステップで躱される。


 リオは、さらに素早く追って行き木刀を振り下ろす。


 これには余裕がなかったのか、ゼファーが木刀で受け、リオを弾き飛ばした。


 リオは後ろに吹っ飛び、壁に激突しダメージを負うも素早く立ち上がり、さらにゼファーに対して体制をとった。


「ほう。今のを耐えたか。

 じゃあ、そろそろこちらからも行くからな!」


 言った瞬間にゼファーがリオに近づき、正面から横に移って剣を振り下ろした。


 その攻撃がリオの肩にもろに入り、またもやリオが吹っ飛んだ。


 だが、すかさずリオは立ち上がり戦闘体制をとる。


 観客からも、今ので立ち上がるか?という声が。ものすごい盛り上がりになってきた。


「ふ。面白い少年だな。続けよう。」


 リオは装備のおかげで、ダメージは緩和されていたがさすがにもう余裕は無くなっていた。


 魔法も使わないと歯が立たない。

 とリオは思った。


 そして、ゼファーが再度攻撃してきた。

 今度も正面に入ったと思いきや、フェイントでリオの横に移動し、攻撃を加えようとしたその時!


 ファイアボール!


「が!」


 リオの放ったファイアボールがゼファーの右肩をかすめて吹っ飛ぶ。同時にゼファーの攻撃が一瞬早くリオに入っていて、リオも吹っ飛んだ。


 リオはまたすぐに起き上がり戦闘体制をとるが、ゼファーは意識はあるものの起き上がってこれなかった。右肩辺りが焦げて動けなくなっていた。


「おい!救護班!」


 同じく、観客席で見ていた支部長(ギルドマスター)が声をかけた。


「あ!すいません!」


 リオは救護班より先にゼファーの元に駆け寄り、光魔法をかけた。


 ヒール!


 ゼファーの右肩が光り、一瞬で治癒したので驚いていた。


「お前、なんて無茶苦茶なんだよ。

 とにかく、ありがとよ。」


 そして、リオの元に支部長が近寄ってきた。

 同じく、リンドウもリオの横に駆け寄った。


「ゼファーを医務室に連れて行け!

 リオと言ったか。

 火魔法と光魔法持ちか。」


「えーと、そうです。」


 本当は4属性持ちだが、黙っておいた。


「そうか。昇級試験は合格だ。

 後で話がある。」


「あ……はい。」



「次はお前だな。試験は俺が相手しよう。」


「え?バルカンさんが?」


 受付の方が驚いた表情で聞き返した。


「他におらんだろう。

 このお嬢さんは、ここにいる奴では相手できん。いいかな?」


「私は良いわよ。」


 周りがざわつき始めた。

 バルカンさんの戦闘が見られる機会はそうそうないらしい。

 支部長は元A級で、この街では有名な冒険者だったらしい。


「それじゃ、始めるか。」


 二人は木刀を持って構えた。


 リオは観客席に座って見ている。


「最初から本気で行くぞ。」


「どーぞ。」


 みんな固唾を呑んで、今から開始される試合を見ている。


「はじめ!」


 言うと同時に一瞬でバルカンさんの攻撃が始まった。凄まじい気合いで斬りつけていく。

 それをリンドウは全て紙一重で躱していく。


 だが……。

 勝負は一瞬で決まった。と思われる。

 というのも、どうなったのかわからない。

 

 闘技場の真ん中でバルカンさんの木刀が飛び、うずくまっていた。


「リオ!支部長をお願い。」


「はい!」


 リオはバルカンさんに近づいて光魔法をかけた。


 ヒール!


「あー。すまないな。助かる。

 しかし、ここまで差がある者にあったのは初めてだよ。

 リンドウと言ったか。

 お前も文句なしの合格だ。

 悪いが後で支部長室に来てくれ。」


 そう言って、支部長は闘技場から去っていった。


「うおー!すげえ。なんだ、あいつら。」


 観客席がざわざわといろんなところで話している。


 そこへ受付の方が近寄ってきた。


「お二人とも合格です。

 上で手続きをしますので、ついて来てください。しかし、なぜ今までFランクなんですか?」


「あ!最近、冒険者になったんです。」


「え?そうなんですか。」


 まだ、何か言いたそうだったがそのまま1階の受付に案内されて、Eランク昇格の手続きが取られた。


 これで晴れて、Eランク冒険者!

 冒険者になった限りは、やっぱりランクを上げていかないとね。

 目的?それは浪漫ですよね。


 ◇◇◇◇◇

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