第2章 メノール伯爵領都

第14話 いざ領都へ

 ◇◇◇◇◇


 短い滞在であったが、人生リスタートの地、大陸最南端サウルの街。いよいよ出発です。


 馬車で片道半月の行程。

 ゼータだとどれくらいかかるだろう?


 いくつかの森を抜けていく必要はあるが、道は一本道で迷うことはないとのこと。


「マリムさん、クーちゃん。短い間だったけど、お世話になりました。」


「こちらこそありがとね。

 これ、お弁当だよ。元気でね。」


「リオ!また会おうね!」


「うん。また会おうね。」


 ヌルメ亭を出発して、街の外に出る。


 ボン!


「ゼータ!今日もよろしくね!」


「ワオ!」


「ひと回り大きくなったね。」


「ワオ!」


 ゼータはシルバーウルフ+1になって進化していた。これなら4、5人乗っても大丈夫なくらい大きくなってる。でも、相変わらず可愛い。


 リオとリンドウはゼータに飛び乗った。


「うわー、前より景色が高いね。」


「そうね。」


「それじゃ、ゼータ!北の領都に行くよ。

 あの道をまっすぐ行ってね!」


「ワオ!」


 ゼータは軽々と加速していく。


「わー!すごい速い!」


「これはすごいわね。」


 ゼータはどんどんスピードを上げて進んでいく。途中、領都から移動中の馬車とすれ違うも一瞬ですれ違う。同じ方向に進んでいる馬車群も一瞬で追い抜いて行くので、驚いていた。


 道中、移動する人たちは歩きか馬車しかないので、シルバーウルフで移動するのを初めて見たのだろう。


 

 それから、いくつかの森を抜けて、だいぶ進んだところで、ゼータが何か知らせるように声を上げ出した。


「ワオワオ!ワオワオ!」


 その森を抜けて開けたところで、前方に魔物がいるのを発見!


「ゼータ!ストップ!」


「ワオ!」


「あれはオークだね。Dランクだよ。結構いるね。ゼータはこれを察知してたんだね。

 すごい察知能力だよ。」


「ゼータ!ありがと!」


「ワオ!」


 オークも集団で群れを作る習性がある。


「それじゃ、討伐しましょう。少し残しておくから、リオも頑張るのよ。」


「はい!」


 リオとリンドウはゼータから飛び降り臨戦体制に入った。


 リンドウは先に進み、オークたちを瞬殺して行く。そのうちの何匹かをスルーしている。


 リオの方に流れて来たオークは3匹。

 これがリオのノルマということだろう。


 ファイアボール!


 リオはファイアボールで攻撃するもオークに避けられた。


 狙いは合っているのだが、距離があって避けられてしまう。


 1匹目のオークがリオに攻撃を仕掛けたが、リオはその攻撃を避けて次のファイアボールを打った。


 ファイアボール!


 ボフ!


「ブモー!」


 やはり、ファイアボールは当たれば一撃でオークは消滅した。威力はすごい。


 2匹目のオークの攻撃も避けて、次は剣で斬りつけた。


 オークはそれを後ろに避けたはずだが、真っ二つに斬られた。


「ブブモー!」


「え?」


 リオの斬撃は避けられたのだが、神剣から斬撃が飛んでいったのであった。


 飛ぶ斬撃である。


 試しに近づいて来た3匹目のオークに向かって剣を振ってみると出なかった。

 その隙に攻撃されるも、それを避けて攻撃すると、またもや斬撃がオーク目がけて飛び、オークに攻撃される前に真っ二つに切ってしまった。オーク消滅。


 リンドウの方はすでに戦闘を終えてリオの戦いを見学していた。


「リオ。お疲れ様。

 飛ぶ斬撃なんて使えたの?」


「えーと。使えましたね……。」


「これって神剣+1の効果ってやつじゃない。これは使えるわ。」


「そうですね。へへへ。たぶん、さっきので出し方もわかりました。」


「戦闘もだいぶ進歩してるわよ。

 それじゃあ、魔心を拾って行きましょ。」


 リオもすでにランクDの魔物を討伐できるくらい成長している。成長速度が異常。


「ゼータ!また、お願いね。」


「ワオ!」


 ゼータに乗って、さらに北上を続ける。

 ものすごいスピードで領都を目指す。



 ◇◇◇◇◇


 

「リオ!もう少しで日が暮れそうね。

 このまま行ってもいいけど、どれくらいで着くのかわからないから、森を抜けたら、今日は野営で一晩過ごしましょう。」


「はい!冒険者ぽいですね。」


「そうだけど、しない方がいいんだけどね。」


 そう言われて、リオも納得するが、野営はしてみたかったので、楽しみが勝っている。


「この辺なら大丈夫かな。

 ここで野営しましょう。」


 そう言われて、リオとリンドウはゼータから飛び降りて、野営に良さそうな場所を選んで準備する。


 高級テント+2を召喚。


 ものすごく立派なテントだ。

 というか、馬鹿でかい!

 しかも自立式なので、すぐに使えそう。

 置くだけでびくともしない。


「ゼータは外で待っててね。これエサだよ。」


「ワオ!」


 ゼータは収納しようとしたが、リンドウから、ゼータは察知能力が高いので、見張り役で活躍してもらうことにした。


 ゼータにエサを3個置いておく。

 大きくなったので、1個じゃ足りない。

 お腹が空いていたのか、凄い勢いで食べている。なので、もう3個置いておいた。


「ゼータ!見張りをお願いね。

 魔物が来たら教えてよ。」


「ワオ!」


 ものすごく、良い子だな。

 ゼータは僕の弟ということにしている。

 ゼータも喜んで了解してくれたので、ゼータ公認だ。僕はお兄ちゃんです。へへへ。


 リンドウとテントの中に入った。


「わー!広い!」


 +2の強化なのか、バストイレ付き。

 元の状態も知らないが、2段階強化で何が起こったのかすらわからない。

 もう、普通に家やん!


 部屋の中で使えそうな、無限ランプ、高級ベッド、高級椅子を召喚!


「わー!ベッドも椅子もふかふか!」


「本当ね。これは野営って感じじゃないわね。

 お風呂とトイレがあるのはビックリね。

 とにかく、お風呂に入って仮眠しましょ。

 あとで、私はゼータと交代するから、リオはゆっくり寝るのよ。」


「僕も見張りするよ!させてよ!」


「ふふふ。それじゃ、お風呂でどうするか決めましょうね。」


 それから、2人で急いでお風呂に入って、食事を取る。初めてのカード食糧を食べた。

 これはすごい。この世のものとは思えないおいしさだった。これはなんという料理なんだろ?


 飲料はたまに飲んでたので、その時も薄々感じてたが、カードのアイテムは、とにかくすごいものばかりだった。


 見張りについては、リオもすることになったが、リンドウが先に仮眠を取るので、その間にゼータと一緒に見張りをするというものだった。

 それ以上は、リンドウが許さず、渋々そういうことになった。


 無限ランプを持って、ゼータの元に。


「ゼータ。一緒に見張りするよ。よろしくね。」


「ワオ!」


 ゼータと一緒だとそんなに怖くなかったけど、たしかに、一人で見張りは怖いかも。


 でも何もかも、初めての体験でそれはそれでリオには新鮮で心地良かった。



 ◇◇◇◇◇



 そんなに時間は経ってないと思ったが、リンドウがテントから出てきた。


「リオ!ゼータ!お疲れ様。交代よ。」


「ワオ!」


「リンドウは大丈夫なの?」


「大丈夫よ。リオは中で休みなさい。日が明けたら起こすからね。ちゃんと寝るのよ。」


「うん。わかった。ありがとう。」


「ゼータは悪いけど、大きすぎて中には入れないから、そこで寝てね。」


「ワオ!」


 というわけで、リオは起こすまでぐっすり眠ってました。まだ13歳。


 ゼータもぐっすり眠ってました。

 

 結局、魔物が現れることもなく、朝を迎えることができた。ちょっとちょっと幸運。


「ゼータ。朝よ。起きて。」


「ウー、ワオ!」


「リオ。朝よ。起きて。」


「うー、はい!」


 この辺の反応は、兄弟ぽいかも。


 初めての野営。


 ◇◇◇◇◇

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