第12話 代官屋敷

 ◇◇◇◇◇


 冒険者ギルドにて。


「はい、そこのマジックトレイに魔心を乗せてくださいね。」


 リオはリュックから魔心を取り出してマジックトレイに置いた。


 スライム魔心 120個

 ゴブリン魔心 90個


「すごい数ですね!この支部のFランクで最高記録ですよ。」


「そうなんですか!?」


「そうですよ。これだけ狩れるならもう少しランクが上がってますからね。」


「私たちはランク上がらないの?」


「すいません。今日の討伐実績で昇級試験の条件はクリアしてるんですが、この支部で昇級試験はやってないので、もう少し大きい支部に行ってもらわないとランクは上がりません。」


「あ!そうなんですね。」


「どこで昇級試験は受けられるの?」


「はい。ここから北に行った領都支部なら受験可能ですね。」


「なるほどね。だから、この街にはあまり上位ランクがいないのね。」


「そうですね。領都はここからだいぶ距離がありますし、受験料もかかるので、代官のご子息とか裕福な方は昇級試験を受けに行きますが、地元の一般の方はあまり受けに行きませんね。それか、行ったきり戻ってこないか。」


「わかったわ。ありがとう。

 これは行くしかないのね。」


「では、スライム魔心の単価が1000ペロ、ゴブリン魔心の単価が2000ペロですので、300000ペロが買取金額になります。」


「へえ。結構な金額になるのね。」


「そうですね。どこの支部でも共通の単価になってます。Fランクでも魔物を討伐できる方は稼ぐことが可能ですね。まあ、一度にこれだけ狩れる方は珍しいですけど。」


「それはいいわね。生活に困ることはないわね。貯蓄はいらないかもね。」


 リンドウはリオにウインクをした。


「リンドウ!それって!」


「そうね。リオ。帰ってから話しましょう。

 ところで、昇級試験の受験料っていくらするの?」


「はい、ランク毎に上がって行きますね。

 Eランクは20000ペロ、Dランクは50000ペロ、Cランクは100000ペロですね。」


「なるほどね。ありがとう。」


「はい、それでは金貨3枚です。確認ください。」


「はい、ありがとうございます。」


 チャリン!(効果音)

 所持金5368000ペロ。


「それとリオさんとリンドウさんに代官からの伝言がありまして、戻られたら代官屋敷までお越しいただきたいとのことでした。」


「え?なんだろ?」


「わかったわ。」


 リオとリンドウはギルド支部を出ると、近くの代官屋敷に向かった。



 ◇◇◇◇◇



 代官屋敷にて。


 リオとリンドウは代官室に案内された。


「おー、呼び出してすまない。

 例の息子の件で話があってな。

 あれから、被害があった者たちから事情を聞いて来た。

 どーも、被害届が止まっていてな。その担当者たちも行方がわからなくなったようだ。


 その被害届を元に聞き取りして、賠償金を支払うことで示談となった。

 決して強制ではないぞ。お前たちみたいに反抗しなかったので、金銭の被害だけっていうので、納得してくれたんだよ。

 ちゃんとあいつらにも謝罪させた。被害金額以外にも賠償金を追加した。信じてくれよ。


 でだ。お前たちへの賠償だが、危険な目に遭わせたことは重々理解しているが、示談というわけにはいかないか?」


「そうね。話は信用するわ。ただ、息子に甘いんじゃないの?」


「そうだな。甘いのは理解している。

 なんとか、お願いできないだろうか?」


「そうね。リオはどうなの?」


「僕はリンドウが良ければいいです。」


「じゃあ、息子たちを呼んでもらえる?」


「わかった。入ってこい!」


 すでに準備していたらしく、控え室に待機していたらしい。


「すいませんでしたー!」

「すいませんでしたー!」


 入ってきたマッドとブランはいきなりリオとリンドウの前にスライディング土下座している。


「あら、変わるものね。」


「親が言うのもなんだが、こいつらは元々小心者だ。被害者にも聞いたところ、以前はせこくカツアゲしてたらしいが、謎の少年が荷物持ちになって以来、変わったらしいことを言ってたな。

 被害届の隠蔽もあって気が大きくなったんだろうよ。申し訳ない。」


「いいわよ。いくらもらえるの?」


「え?リンドウ?」


「リオ。貰えるものは貰っておくのよ。

 お金は必要でしょ。」


 また、リンドウはリオにウインクをした。

 たしかにガチャは何回でもしたい。


「そうですね。」


「お前たちには、相当な迷惑をかけた。

 で、賠償金は100万ペロを考えている。

 どうだろうか?」


 お!すごい!11連分!ありがたいです!

 金銭感覚がおかしくなりそうです。


「いいわよ。それで手を打ちましょう。」


 当然、そのお金はマッドとブランの借金になるらしいが、2人とも黙って土下座している。

 半分は親の責任として代官が持つらしいが、それはお好きにどーぞと言う話だ。


「ありがとう。恩に切る。では、ここにサインしてもらえるか?」


 手際のいいことで、この代官は優秀なのだろう。示談書の内容をリンドウが確認し、2人がサインをして示談が成立した。


「じゃあ、これを受け取ってくれ。」


 代官は大金貨1枚を机に置いた。

 リオは貨幣袋に大金貨を入れる。


 チャリン!(効果音)

 所持金6368000ペロ。



「あと、例の謎の少年のことだが、謎は謎のままなんだが、昨日から見たものはいない。

 ただ、これも被害届が隠蔽されていたんだが、孤児院の子供が行方不明になってたんだよ。結構な人数だ。なぜこれが隠蔽することが出来たのか不思議なくらいだ。」


「その行方不明の担当者たちはどうやって採用したの?」


「それは、全員が領都の伯爵からの紹介だよ。

 こっちは代官だからな。逆らうことは出来んよ。もうどうなってるのかわからん。」


「領都に行けばわかるんじゃない?」


「いや、よっぽどのことがない限り、そんなに街を空けるわけにはいかんよ。

 なんで、書簡にて今回の事件を伝える予定だが、領都までは馬車で片道半月、往復で1ヶ月かかる。」


「そうなのね。」


「まあ、話は以上だ。

 今回は本当にすまなかった。」


「あなたは、いい代官だと思うわ。」


「そうか。ありがとう。」


「じゃあ、私たちは行くわね。」


「ああ、気をつけてな。」


 この件は闇組織が絡んでいるのを知っていたが、それは言わなかった。


 リオとリンドウは、代官屋敷を出て、今日もヌルメ亭に向かった。


 ◇◇◇◇◇

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