第9話 謎の少年

 ◇◇◇◇◇


「リンドウ。

 うちに帰る前に教会に寄っていい?」


「いいわよ。」


 小さい街なので教会もすぐそこサンクスにある。教会に着くと神父が迎えてくれた。


「今日はいい日ですね。女神のおかげです。

 あなたに女神の祝福を。」


「ちょっとお祈りさせいただいていいですか?」


「ご自由にどーぞ!女神様はいつでも歓迎しております。」


「ありがとうございます。」


 リオとリンドウは女神像の前に跪いて祈り始めた。


 プチュン!


『リオ!元気?』


『あ!ナスヴィー様!元気です!』


 姿は見えないが、女神像が話しかけているように心の中に直接話しかけられた。

 この声はリンドウにも聞こえているようだ。


『うんうん。私の声は従者のリンドウには聞こえるけど、神父には聞こえないからね。

 第2の人生はどう?楽しい?』


『はい!こっちに来て良かったです!』


『うんうん、それは良かったねえ。』


『ナスヴィー様!カランマって少年がここの孤児院にいたらしいのですが。」


『うんうん。詳しいことは教えられないけど、ちょっとだけね。

 その少年は闇組織のメンバーだね。

 もうこの街にいないよ。』


『そうなんですか。ありがとうございます。』


『うんうん。リンドウがいるから大丈夫だと思うけど、闇組織には気をつけるんだよ。

 それより、お金貯まったねえ!

 ガチャの季節じゃなーい?』


『そうなんです!

 リンドウに相談してからですけど……。』


 リンドウの方を見るが、リンドウの心の声は聞こえないらしい。


『リンドウは大丈夫よ。

 従者は主にガチャを引かせることも重要なミッションなのよ。

 ただし、生活費も残しておくのよ。

 ご利用は計画的にって言ってたからね。』


『はい!』


『あ!言い忘れてたけど、なるべく11連を引くのよ。1枚お得だし、最後の1枚はR以上確定になってるからね。

 じゃあ、ガチャ楽しみにしてるわよ!』


 プチュン!


 リオとリンドウは立ち上がった。


「長いお祈りでしたね。」


「はい。いろいろ教えていただきました。

 これお納めください。」


 リオは銀貨1枚を神父に渡した。


「ありがとうございます。

 女神の加護があらんことを!」


 はい、加護持ちです!

 リオとリンドウは教会を後にした。



 そのあと、勿体無いが荷物が嵩張るので皮の胸当ては購入した店に買い取ってもらうことにした。1日しか使ってないので、通常半額の15000ペロのところを20000ペロで引き取ってもらった。


 リンドウはこういう交渉も上手である。



 ◇◇◇◇◇



 今日もヌルメ亭に泊まることにした。


「あ!リオ!いらっしゃい!」


 クーちゃんが迎えてくれた。


「今日もいいかな?」


「もちろん!お母さん!お客さんだよ!」


「あ!また来てくれたんだね!ありがとね!」


「はい、ここのご飯が美味しかったので。」


「そりゃ、嬉しいね。」


 銀貨5枚を払って鍵を貰う。


 所持金10068000ペロ。


 食事をいただきつつ、クーちゃんとおしゃべりしている。


「リオ!今日はいろいろあったみたいなんだよ。

 Aランクの魔物が出たらしいんだけど、冒険者が討伐したらしいの。

 でね。マッドとブランの兄弟が捕まったんだって!」


「え?そうだね。」


「ふふふ。そうなのね。」


「良かった〜!Aランクの魔物を討伐するなんてすごいよ。でね。討伐したのは、この街に来たばかりの女剣士さんだったらしいよ!

 ん?リンドウさんも女剣士さんだよね?

 んん?あれ?来たばかりの女剣士さん?」


「クーちゃん。それ、リンドウなんだけど。」


「えーー!そうなの!?

 わー!リンドウさんってすごく強いんだね!

 良かった〜!そうなんだ〜!

 綺麗でカッコよくて強いんだ!」


「ふふふ。ありがとね。」


「クーちゃん。カランマって孤児院の少年のことなんだけど、孤児院にはいなかったらしいんだ。知ってることある?」


「えーと。そういえばあんまり知らないね。

 昔からいるわけじゃないし、あれ?

 なんで孤児院にいると思ったんだろう?

 なんか、おかしいね。」


 謎の少年に闇組織。

 関わりたくないなぁ。


「クーちゃん。ありがとう。

 マリムさん。ご馳走様でした。」


「ご馳走様。今日も美味しかったわ。」


「あいよ。ありがとね。」


「リオ!リンドウさん!今お風呂入れるけどどうする?」


「それじゃ、入っちゃうよ。」


「今日も一緒でいいよね?」


「うん。」


 リオは返事するも顔を赤くしている。


「リオ!顔が赤いよ(笑)」


 クーちゃんに揶揄われて、さらに赤面するリオをリンドウは微笑ましく見ていた。


「じゃあ、入りましょ。リオ。」



 ◇◇◇◇◇



 脱衣所に行くと、一瞬で真っ裸になるリンドウ。そして、またもやガン見のリオ。


「ふふふ。早く脱ぎなさい。」


 カードで取ったリュックは優秀で中身ごと収納出来ることがわかった。中の貨幣袋も同時に収納できるので、盗難防止に最適である。


 この原理で行くと高級テントも中に入れたものは収納できるのではないかと思っている。

 ちょっとしたアイテム収納がわりに使えそうだ。ガチャアイテム優秀です。


 神剣もカード収納して、あとはリンドウに手伝ってもらい裸になった。


「ふふふ。」


 まずはリンドウに身体を洗ってもらって、今日はリオもリンドウの身体を洗ってあげることにした。


 リオはますます変な気持ちになっていくのだが、どういうことなのかわかっていない。


「リオ。大丈夫?」


「はい。大丈夫です。」


 何が大丈夫なのかわからないが、とにかく湯船に浸かった。お風呂は気持ちいい。今日は鬼特訓のせいか、固まっていた疲れが取れていく。今日は頑張ったぞ!



 ◇◇◇◇◇



 お風呂から上がって部屋に戻ると、リンドウに聞いてみた。


「リンドウ。」


「何?」


「ガチャしていい?」


「もちろん、いいわよ。」


「やったー♪」


「ふふふ。」


 リンドウの許可をもらって、ガチャ欲満々のリオであった。


 ◇◇◇◇◇


 

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