第8話 初めての換金

 ◇◇◇◇◇


「リンドウ!このアイテムもらっていい?」


「もちろん!私は要らないからね。ちょうど良かったんじゃない?」


「ありがとう!じゃあ、早速こっちに変えちゃうよ!」


「ふふふ。いいものが落ちて良かったわね!」


 クロムジャイアントサイクロプスからドロップしたアイテムは黒い金属の鎧であった。

 厳密にはクロムライトアーマー。

 金属ではあるが、ものすごく軽く出来たクロム製のプレートアーマーである。


 早速、リオは胸当てを外して黒い鎧を身に付けた。


「皮の胸当てが勿体無かったけど、この鎧はすごく軽いです。身体にもフィットして動きにも支障ないですよ!

 しかも、すごくかっこいい!」


 リオは、外した胸当てと大きな魔心をリュックに詰め込んで担いだ。

 リンドウはリオがすごく嬉しそうなので、喜んでいる。


「それじゃ、帰りましょうか。」


「はい!」


 辺りは日が落ちかけていたが、リオの足取りは、るんるんるん♪である。



 ◇◇◇◇◇



 リオとリンドウも程なく、街の門に到着した。そこには、待ち構えていたように多くの人がいた。代官、代官補佐、マッド、グランもこの中に含まれている。


「おい!お前たち!Aランクの魔物が発生した辺りから来たが無事だったのか?」



「無事も何も張本人がそこにいるでしょ?」


「どう言う意味だ?」


 マッドとブランはまずいと思ったのか、その場を逃げ出そうとした。まさか、帰って来るとは思っていなかったので状況は最悪である。


「そこの逃げようとしているマッドとブランの2人よ。」


 そこでマッドとブランに注目が行ったため、逃げることが出来なかった。


「俺はこの街の代官をしているカフイン・ダンダルというものだ。マッドとブランの父親でもある。詳しく話を聞かせてくれないか?

 マッドとブランもこっちに来い!」


「そうね。話してあげるわ。

 そこの2人が私たちの帰りを待ち伏せして、召喚石で魔物を召喚したのよ。

 それで、そこの2人は逃げ出して、私が魔物を討伐したわ。」


「まさか!?Aランクの魔物を単身で討伐したのか?」


「驚くのがそっちなの?

 リオ!魔心を見せてあげて。」


 リオはリュックから魔心を取り出して、みんなに見せた。


「そうか。本当のようだな。疑ってすまない。

 マッド!召喚石の話は本当なのか?」


「ち、違う!俺は知らねえ!」



「そう……。ならいいわ。

 私はどちらでもいいのよ。


 でも、召喚石の出どころは気になるわね。

 Aランクの魔物を召喚出来る召喚石は相当高価なアイテムだわ。代官の屋敷から多額のお金が無くなってるんじゃない?」


「違う!あれは貰ったんだ!」


 アホなブランが反射的に答えてしまう。


「ブラン!お前!」


「あ!貰ってない!」


 マッドが頭を抱えて、座り込んだ。

 そして、観念して喋り出した。


「あの召喚石は、荷物持ちのカランマってやつに貰ったんだよ。

 教会の孤児院に住んでる小僧だ。

 どうやって入手したのかは気にしてなかったんで聞いてねえ。

 そいつは、召喚した魔物はCランクで召喚主の言うことは逆らわないって言ってたんだぜ。

 そしたら、あんなバカでけえ魔物が出てきたんで、俺たちも騙されたんだよ。」


「お前たち!

 誰かこいつらの手を縛ってくれ。

 お2人さん。息子がすまなかった!」


「あら、この街の代官さんは話の出来る人みたいね。いいわよ。あとはお任せするわ。

 じゃあ、私たちはギルドに用があるから行くわね。」


「あー、今回は本当に助かった。

 あとは任せてくれ。

 セダカ!教会に行って、そのカランマと言う少年を調べてきてくれるか?」


「はい。承知です。」


 代官補佐のセダカは、教会に向かった。



 ◇◇◇◇◇

 


 リオとリンドウは冒険者ギルドに到着して、魔心の換金をしていた。


「それじゃ、魔心をマジックトレイの上に置いてくださいね。」


 リオはリュックの中からスライムの魔心8個と巨大魔心1個をマジックトレイに置いた。


 スライム魔心 8個

 クロムジャイアントサイクロプス 1個


「これってAランクの魔物ですね!?」


「ほぅ。クロムジャイアントサイクロプスっていうのか。」


 なぜか、先ほど門にいた代官たちも一緒にギルドに来ていた。魔心の鑑定結果が気になったようだ。


「すごいですね。初めて見ました。

 換金額合計は10008000ペロですね。」


 マジックトレイは、自動で魔心の種類と換金額を表示する優れた魔道具で、各冒険者ギルド支部に配備されている。


「こちら、大金貨10枚と銀貨8枚です。

 ご確認ください。」


「はい、ありがとうございます。

 確認しました。」


 ギルドにいた人がその額に驚き、ざわついているが、代官が来ているので騒ぐことはなかった。マッドとブランも縛られたまま、同行しており、異様な光景である。


 そこへ代官補佐が確認を終えて慌ただしく代官に報告している。


「教会に確認に行ってきました。

 孤児院にカランマと言う少年はいないそうです。」


 その報告に一番驚いたのはマッドとブランである。


「はぁ?いねえだと!?」


「どう言うことだ!また、嘘をついたのか?」


「違う!荷物持ちの小僧だ!たしかに孤児院にいると言ってたんだ。」


「あんたたちも見てるだろ!?」


 マッドはリンドウに助け舟を出した。


「そうね。たしかに荷物持ちの少年はいたわね。私たちも宿で孤児院の子だと聞いたわ。」


 マッドはリンドウの言葉に安堵した。


 代官はリンドウが言うのならとそれは信じることにした。


「うむ、そうなるとその少年が謎だな。

 引き続き調査するとしよう。

 よし、我々は戻ってこいつらの処分を検討することにしよう。」


「そうね。リオ。帰りましょうか。」


「はい!」


 リオは少年のことは気になったが、思わぬ収入があったことの方が気になっている。

 帰ったらリンドウに相談してガチャらせてもらえるか聞くつもりだ。


 純粋なリオだが、すでにガチャの魅惑に魅せられているリオであった。


 ガチャ、恐るべし。


 所持金10054000ペロ。


 ◇◇◇◇◇

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