第45話 俺が芦屋 翔満に救われるまで
「どうしたんだい? ちょっと今急いでいてね。今から福岡までラーメンを食べに行くんだよ。それで新幹線に間に合うかどうか不安でね。あーそうだ。もちろんお土産は買ってくるから安心したまえ」
今から福岡に行くってまじかよ。
なら、俺が頼んでも無理じゃねえか……。
誰がいきなり未来が視えて、友達がピンチだから助けて欲しいなんて言葉を信じるんだよ。
しかも、こいつのラーメン愛は俺が一番よくわかってる。
「それで結局用ってなんだい?」
「そ、それは……」
「何グズグズしてるの貸して、キヨアキくん」
梨花が俺のスマホをサッと奪う。
「ねえ、芦屋っち聞こえる!?」
「ええ、聞こえますけど。っというか2人一緒にいたんですね」
「今華泉がピンチなの。お願いだから手伝って」
「手伝ってって言われても僕今から福岡に行くんですけど」
「福岡!? そんなことより華泉の方が大切でしょ」
「花山さんはそりゃ大切ですけど、僕だって今日をずっと楽しみにしてたんですからね。昨日からいっぱい情報集めたりして。後、花山さんのピンチってなにかあったんですか?」
なんで未来の視えないはずの梨花がこんなに必死になってるのに自分で視たはずの俺がこんなことで言葉が詰まってるんだよ。
それに、思い出した。あの時一条先生に言われた言葉を。
俺はすぐに梨花から自分のスマホを取り返し、言わなければいけないことを話す。
「芦屋。今から俺の言うことを信じて欲しい。俺は未来を視えるんだ。それで、花山さんが事故に遭う未来が視えた。もしかしたら、今からならまだ花山さんを助けられるかもしれない」
「そんなことを信じろって言われても……。あまりにも現実的じゃ無さすぎるんだけど」
「それでも頼む。もうこれ以上自分のせいで誰かを失うのは嫌なんだよ! 俺ひとりじゃどうにもならないけど、みんなで協力すれば花山さんを救えるかもしれないんだ。お前がすげえラーメン楽しみにしてたっていうのはよくわかる。でも、お願いだ。その新幹線の分の金なら払う。だから……頼む」
本当にむちゃくちゃなお願いだ。
何一つとして理にかなっていない。
「本当に呆れるよ。何一つとして意味がわからないのに、君を信じようと思う僕が」
「え?」
「わかったよ。君の言うことが本当かどうか分からないし、花山さんがどうとかも正直言ってあまり分からないけど。友達が必死に頼んでるのに、それを無下に出来るわけがないだろう」
「芦屋……お前」
こいつはいつも俺を助けてくれる。
大事な時に手を差し伸べてくれているんだ。
「ただし、1つ約束がある。お金なんて正直僕からしたらどうでもいい。だから、今度一緒に福岡までラーメン食べに行こう。もちろん花山さんたちも一緒にね」
「ありがとう。約束だ」
「それで僕は何をすればいいんだい?」
「なあ芦屋。お前結構渋谷には詳しいって言ってたよな」
「まあ、ラーメン屋はほぼ回ってるからね」
今はその芦屋のラーメン愛に頼るしかない。
その前に、時間が無い今もう少しスムーズに話を進めるためにすべきことがあった。
「頼みを受けてもらう前に俺たちのグループのグループ通話を開いてくれないか」
「え? わかった」
「後で俺と文殊が入る。じゃあ、一旦切るぞ」
俺はあくまで事故の場所しか知らない。
文殊ならもしかしたら、花山さんからもう少しオーディション会場の詳細を聞いているかもしれない。
闇雲に俺の記憶から探すより、もう少し確実な方法を選ぼう。
「芦屋っち手伝ってくれそうなんだね」
「ああ、梨花もありがとう」
「お礼は早いよ。これからでしょ? ってかどうして電話切ったの?」
「文殊に電話する。あいつならもう少し詳細な場所が分かるかもしれない」
文殊に電話をかける。
ずっと待ってくれていたのだろうか。
1コールもしないうちにすぐ出てくれた。
「キヨもう来れる?」
「たまたま梨花に会ったんだが、梨花が俺を乗せてくれることになった」
「そうなんだ」
「それで、今翔満くんがグループ開いてるけどどうして?」
「文殊も芦屋の所に入ってくれ。芦屋も手伝ってくれるんだ」
「わかった」
文殊との通話を終え、芦屋が開いてくれているグループに入り直す。
「桜井さんおはよう」
「おはよう」
「それでもう一度聞くけど僕はどうすればいいんだい」
「花山さんが事故に遭う場所を割り当てて欲しい」
「そんなことできるか分からないけど……」
「なあ、文殊。花山さんのオーディション会場のある程度の場所ってわかるか?」
「多分、ちょっとだけならわかるよ。正確な場所までは分からないけど、前に華泉ちゃんが言ってたこととかさっき思い出してみたんだけど、多分この辺りだと思う」
「ああ、ありがとう」
文殊が送ってくれた場所からだいたい10分頃で行ける場所。
そして、未来で事故が起こる交差点。
俺が視た記憶を1つ1つ芦屋に伝えた。
「地図から場所を割り当てられそうか?」
「分からないけど、それが今僕が動かない理由にはならないね」
「やってくれるってことだな。ありがとう」
「よし、梨花行くぞ。とりあえず渋谷にまで向かってくれ。ある程度の場所になったら俺がまた指示を出す」
「了解! 飛ばすからちゃんとつかまっといてよー」
俺たちが必ず花山さんを救うんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます