第24話 俺たちの占い部活の名前が決まるまで
「まず告白の前に、その水族館デートのアドバイスの占いをしましょうか。俺はタロットを使ってやっていきます。一応先程の会話も踏まえて何かアドバイス出来ることがあったらしていきますね」
「占いってこれ使うのか?」
渡辺さんはタロットカードを指さしながら尋ねてきた。
梨花の占いの後なので、カードが散らばったままなのはあまり見かけが良くないが。
「そうですよ。先に1度整理し直しますね」
俺はとりあえず机に散らばっているカードをもう一度束にする。
「偉く本格的なんだな」
「まあ、本格的じゃなかったらクラブなんてできないでしょうしね」
「そういや、このクラブの名前ってなんなの? 占いするってしか書いてなかったし」
名前か。確かにまだ考えていなかった。
勝手に占い部活などと呼んでいたが、少し格好悪いし言いづらい気がする。
「うーんまだ決めてないですね」
「みんなは何かいい案あるか?」
「はーい。アベノm……」
「はい他」
「ひどい!」
文殊の言うことが何となく分かったので遮って却下する。
「うーん。なんか占いって分かってそれで可愛い名前がいいなー」
「例えば?」
「ウラウラウラない部とか?」
……
青天の霹靂の後のごとき静けさ。
俺はあんま良くないと思う、それは。
「反応悪ー。じゃあ剛くんは?」
「俺か!? じゃあ、占いって英語でfortune tellingって言うだろ。それを文字ってフォーチューンテリン部なんてどうだ」
「次、華泉は?」
「え、そんなダメだったか?」
ダメなのかよ。
ダサいけどまだマシだろ。
この流れだと全員に聞いていくことになってんじゃないか。
「私は、無理に部活の名前にするんじゃなくて占い舘って名前が1番良いと思うんだけど」
「たしかにな。俺は花山さんのその意見に賛成だけど」
「えぇー。なんか地味じゃない? 一応芦屋っちはなんかある?」
一応で聞いてあげるなよ。
「えぇ、そうだね。ひとつあげるとするならば、シンプルに
「なに? ぼくせん。何それ?」
「卜占は占いの1種みたいなもんだな。氏名とか生年月日を使った占いじゃなくて、こういう質問形式の占いのことを言うな。俺はそれでもいいと思うけど」
「へえー。なんか良さげだね」
「本当にこれで良いのか?」
みんな首を縦に振る。
決まっちゃったよあっさり。
つうか、意外に卜占などという言葉を芦屋が知っていたことに驚いた。
変な知識の造詣が深いのはなんなんだろうか。
「一応今、卜占部に決まりました」
「偉く遠回りしたな。あと顧問は誰なんだ?」
「一条先生ですよ」
「そうだったのか! もしかして君たちはあの人が担任のクラス?」
「そうですよ」
「なるほどな。だからポスターを見ていた時あの人はここを勧めてきたのか」
話している途中に俺はタロットカードを先程同様散らばす。
「じゃあ、今から質問するのでその質問を強く思ってカードを引いてください」
「分かった」
とりあえず質問はより正確な占い結果を出すために一応2通り考えた。
1つは水族館デートを成功させるためにどのような行動をとるべきか。
もう1つは相手とより仲良くなるためにすべき行動だ。
これらは似てるようで異なるものだ。
例えば、前者の良い結果としてサプライズを用意すべきなどという占い結果が出たとしても、そのサプライズの中身までは占いは干渉できない。
それで失敗したら、後者がダメになる可能性だってある。
占いは諸刃の剣でもあるのだ。
だから、慎重に質問しなければどこかで地雷を踏んでしまう可能性がある。
一応1つ目の質問をしてから、2つ目の質問をするかどうか考えよう。
「あなたがデートで成功するためにどのような行動をとるべきですか?」
渡辺さんはカードを悩むことなく、すぐに目の前にあるカードを取った。
それは王冠を被った女性のカード。
女帝の正位置だ。
「これは?」
「これは女帝の正位置でかなりいいカードですね。このカードは恋愛の実りを表していて、しかも自分が自信を持って進めばより良い未来が訪れるといったやつでして。デートでは自分から積極的に動くとなおよしですね。例えばエスコートしたりとか」
「俺から誘ってるんだし、それはいいかもしれないな。でも、俺なんかにどうやってエスコートすればいいかとかわかんないけど」
「それは任せて。私たち恋愛マスターに」
「えぇ? 不安なんだけど」
奇遇ですね、渡辺さん。
俺もむちゃくちゃ不安です。
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