第14話 俺が先生を不憫に思うまで
キーンコーンカーンコーン
チャイムの音がなり、一限の終わりを告げる。
礼を済ますと、俺はそのまま先生の方へと向かう。
「先生、部活の事で相談があるんですけど」
「安倍だよな。どうした?」
当然なのかもしれないが、まだ一日なのに既に先生が生徒の名前を覚えていることに感心してしまう。
「昨日クラブを作ることができるって言ってたじゃないですか。それで俺もクラブを作りたいと思いまして」
「何の部活を作りたいんだ?」
「占いをする部活です!!」
相手に不信感を持たれる前にパッションで押し切ろう。
そうすればきっと先生もこの子は素晴らしい社会貢献をするような活動をするのだと錯覚するはず。
「は?」
無理でした。
いやまあ、確かに占いをする部活とか聞いたことないですもんね。
「まあ、特に内容がなんであれ、昨日言ったように部員が5人いて、顧問がいれば作ることは出来るが。部員は5人いるのか?」
「それはいます」
「じゃあ、顧問は」
「それは一条先生にやって頂こうかと」
「はぁ? 私はやらないぞ」
「いいんですか。先生」
「なに?」
ここまで近づいて話して予想が確信に変わった。
この人は間違いなく
髪型は奏仁さんと違い、ショートカットで性格も気の強い感じだが、俺にはわかる。
そして、俺はあの日この先生に関する情報を聞いたじゃないか。
「俺なら先生の恋愛模様を占うことが出来るんですけどねー。俺には分かりますよ。先生最近彼氏さんと上手くいかなかったんじゃないですか?」
「な、なんでそれを……」
若干頬がピクつき、目はゴミを見るような目でドン引きしている。
「と、とにかくここで話すのはまずい。ちょっとついてきてくれ」
そう言って一条先生は教室から出ようとする。
俺はただそれについて行く。
その時、
多分伝わっただろう。
少し歩き、来たことの無い空き教室に来た。
「ここは昔使われていた教室で今は使われてない。だからここを使用することは出来る」
「って事は顧問をしてくれるんですか?」
「いや、私はやるとは一言も言ってない。その前にどうして知っているんだ。私がその……彼氏と別れたことを」
「知っているも何も占いでわかったんですよ」
「嘘をつくな。占いなんてものは私はもう信じないぞ」
何か占いに良くない経験でもあるのだろうか。
まあ、奏仁さんの時の占いで分かったという意味なので別に俺は嘘を吐いていない(屁理屈)。なので強気で行く。
「嘘じゃないですよ! なんかさっきから気になっているんですけど占いに対して恨みでもあるんですか?」
「そ、それは」
「教えてくださいよ。俺ならその不安を解消出来るかもしれない」
「笑わないで聞いてくれよ」
「もちろんですよ」
「そう、あれは先月の初めくらい……」
すっごく嫌な予感がします。
◆
『ねえ、
『へぇ、
あ、ちなみに敦紀っていうのは私の名前で彼氏が彰ね。
そして、そのまま占い師の人に占いをしてもらう流れになったの。
『カップルさんですか?』
『はい、そうなんです』
『付き合って何年が経つんですか?』
『今月で2年になります』
『今が1番楽しい時期でいいですねえ』
この時点でちょっと不気味でやっぱり辞めた方が良かったのかなあって思ってたんだけどお金払っちゃったし、早く切り上げようと思ったの。
『私と彼の相性ってどうですか?』
『その前に1つ。あなたの頬にうっすらとやけどの跡がありますよね。今はもうほぼ見えないですけど』
『ど、どうしてわかったんですか?』
その占い師はフードを深く被ってたから顔はしっかりと見えなかったんだけどただニヤニヤしてて気持ち悪いと思って。
しかも、その質問に答えてくれずにいきなりとんでもないことを言い出したの。
『あなた達はお互いに運命の相手がいます。このまま付き合っても上手くいくことは無いでしょう。だから、別れた方がいい』
『はあ!? ふざけないでください。行こう彰』
『えぇ、あぁ』
私は無理やり彰を連れ出して、近くの公園のベンチに座ったの。
『なんか色々言われたけど、私は気にしてないから。つーか有り得なくない。普通あんなこと言う?』
『俺はあの占い師の言うことにも一理あると思うんだ』
『へ?』
『俺実は好きな人がいるんだ。多分このままこんな気持ちで敦紀と付き合ってても上手くいかないと思うんだ。だから、ごめん。俺たち別れよう』
『は? ちょっと待ってよ。あんなやつの言うこと信じるの。私は彰のこと好きなんだけど』
『ほんとごめん』
『Huh? 』
そういって彰はどっか行きやがったの。
それ以降一度も連絡とってないし、話してもない。
◆
「マジで彰もあのクソアマもふざけるなーーー」
クソアマとか今日日聞かない悪口言わないでください。
まあ、先生もマジで可哀想だな。
この姉妹はどちらも男運がないのだろうか。
「それはドンマイですね。でも、占いは誰かを傷つけるためにあるもんじゃないですから」
「ほんと?」
「ほんと」
「じゃ、じゃあさ。今日の放課後まだ聞きたいことがあるから付き合ってくれない。その時一緒に私の事占って」
「もちろんいいですよ」
「そろそろ次の時間だから行かなきゃ。早く出て。ここ閉めるから」
思ってるよりチョロい人だった。これも姉妹共通なのかもしれない。
普段強気な女性が弱気なところってグッとくる所がありますよね。
急いで教室に戻ると、教室が真っ暗。
移動教室……じゃねえか。
もちろん俺は次の授業に遅刻し、学校2日目にして既に悪目立ちが確定した。
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