第8話 俺に新しい友達が出来るまで
クラスはかなりの盛り上がりを見せていた。
なお、左端前2人。
流石に誰とも喋らないのはキツイが、寝てるやつを起こすのはもっとキツイ。
いつの間にか俺の周りの女子は女子同士で仲が良くなっていた。
やばい、取り残されてる。
俺は恐る恐る前のやつの肩をたたく。
「なんだい?」
あまりにも早すぎる起床。
こいつ絶対起きてただろ。
「いやあ、喋るヤツがいねえから。席近いしこれからヨロシクと思ってさ」
「そうかい。こちらこそよろしく」
ちょっと鼻につく話し方だけど、まあ悪いやつではない……か?
「名前……
それに芦屋はこくっと頷く。
「芦屋はなんかクラブに入ったりとかするのか?」
「僕は忙しいからあまりそういう事をする暇はないだろうね」
「へぇー。バイトとかか?」
「いや、したことないけど」
「じゃあ、勉強ガチ勢的な?」
「勉強が出来たらこんな高校来てないけど」
「それはそうだな。じゃあ、何で忙しいんだ?」
「よくぞ聞いてくれた。この僕が最も愛するもの。そう、それこそラーメン。そのラーメンのために僕は毎日忙しい」
「へぇ、まじか。ラーメンが好きなのか?」
「そうさ。中学生の時から東京中を練り歩き毎日必ずラーメン屋にラーメンを食べに行くほど愛しているのさ」
「俺もラーメン好きなんだよ」
「ふーん。まあ、僕には敵わないだろうけど。君もラーメンが好きなのか」
なんかこいつ腹立つな。
妙に張り合ってくるのもなんなんだこいつ。
「まあ、俺の家がラーメン屋だから、この歳ながら既にラーメンを作ったことがあるんだけどな」
マウントを取られたから、取り返す。
俺だってラーメンが好きなんだ。
ラーメンの愛ならこんな奴には負けやしない。
「ほおー。なら君のラーメン屋の名前を教えてくれないか?」
「ラーメン
「ら、ラーメン五芒星?」
俺がラーメン屋の名前を言うだけで、芦屋はかなり動揺し、前に名簿が映されている黒板と俺の顔を素早く交互に見る。
「もしかして君が
「そうだけど」
ってかこいつまだ1回も俺の名前確認してなかったのかよ。
「本当にすまない。ラーメンの神様である安倍くんにそんな事を言っていたとは。僕はなんて不躾な」
なんかちょっと怖いよこの人。
ってか、俺がラーメンの神様ってことになってるんだがこれはいかに。
「ちょっと待ってくれ。俺がラーメンの神様ってなんだよ。ラーメン屋で働いていたつっても中1と中2の時だけだし。凄いのは俺の親父だと思うぜ」
「いーや違う。僕は君のラーメンが1番素晴らしいんだ。本当に微々たる違いだが、君の作るラーメンは何かが違う。何かが入ってるんだ」
「よくそんな前のこと覚えてるな」
「それより、どうして君はラーメンを作らなくなってしまったんだい? 僕はそれ以降月1でしか君のラーメン屋に行かなくなってしまったよ」
めちゃくちゃ来てんじゃねえか。
「作る理由が無くなったからだよ」
「作る理由?」
「ああ。それより、俺の名前を知ってるのはどういうことだ?」
「それは君がいなくなってから、味が変わった気がして五芒星で働いている女の子に何か変わったことがあるか聞いたのさ。そしたら、君の名前を教えてくれてね」
確かに一度
俺は厨房から全く出なかったから、こいつは本当に味だけで俺のラーメンだと気づいたということか。
「そうか」
「さっき言っていた作る理由について詳しく教えてくれないか?」
「ただ単純に俺のラーメンを1番好きだと言ってくれた人が来なくなったからだよ」
「その人は僕より君のラーメンを愛しているのかい?」
「それは知らねえけど、とにかく俺にとってラーメンを作る理由はただそれだけだった」
「そんなことがあったんだね。でも、これからは君もラーメンを作ることが出来るね」
「は?どうしてそうなる」
「だってこれからは僕が君の作る理由だからさ!!」
「いやいや、もう俺は作らねえって」
「頼む。もう一度僕に君のラーメンを食べさせてくれないか? 折角会えたのも運命だ。ね?」
ね?じゃねえんだよ。
さっきから臭いセリフばっか吐いてるのも気になるし。
でも……こんなに好きって言ってくれる奴のことを無下にする訳にもいかない。
「分かったよ。今日学校が終わったら俺ん所のラーメン屋に来い」
「行かせていただきます!!」
男同士のあつい握手を交わす。
そろそろ入学式のため、体育館に移動するらしい。
ふと、文殊の方に目をやると文殊と誰かと花山さんが横1列の席のようだが、その真ん中の子の元で集まって色々談笑しているようだ。
有名(らしい)女優がいるのに案外騒ぎが鎮まるのもあっという間で花山さんもいつの間にか溶け込んでいた。
一条先生という担任の若い先生のHRが終わり、俺たちは廊下に出席番号順に並べられる。
初めての出席番号2番の景色は新鮮で前のやつが新しい友達ということもあり、あまり悪い気はしなかった。
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