第86話 2日目

 大会2日目の朝。昨夜はどうやらあのまま会場で騒ぎ疲れて寝てしまった人たちも多数いたようだ。吐瀉物にまみれた人なども居るようだが、早く着替えて来て欲しい所だ。後2時間ほどで第一戦が始まってしまうぞ?それでも会場自体はとてもきれいに復元されている。なんと素晴らしいことなのだろう。


 今日の第一戦からは各国の軍隊や傭兵部隊の精鋭が5組続き、午後からは一般探索者達のバトルとなる。今日はソロ忍者も登場する。そして夕方辺りから残りの各国の代表が戦いラス前が処刑人パーティで最後に魔導王となっている。


 処刑人は昨日会場で試合を観戦していたみたいでかなりの気合の入りようだ。そして処刑人が今回対戦する敵のランクは準男爵級となる。


 処刑人パーティは東京大森林ダンジョンの4層で既にS級との戦闘は行っており、その時の経験から2ランク上までなら行けると判断したようだ。そして対戦相手はランダムポップとなっているのでまだ何が出るのかは分からない。


 はっきり言ってS級と騎士級ですら戦闘能力に大きな差があるのだが、更にその上のランクを指定してくるあたり命知らずと言う他無い。まあパーティ全員のエクストラスキル全開で戦うことが前提のマッチメイクとなるだろう。ただこのパーティの強さの秘密は処刑人以外のメンバーに秘密がある。まあその内分かるか。


 それでも俺や雫とは異なり魔物に手加減という言葉は存在しない。大暴れして人間を喰うことしか頭にないのだから注意してほしいところだ。


 出店の方を確認してみると、既にかなりの人で賑わっている。なんせホテルでのサービスは一切無いのでここで好きなのを買って食べるしか無いのだから。勿論地球に戻れば普通に店で食べることは出来るのだが皆、雰囲気も楽しんでくれているようだ。


 そんなこんなでソロソロ時間となるので俺も闘技場の方へ移動をする。俺が現れると今日も満席となっている観客席から歓声があがる。そんな観客に挨拶をしてから第一戦がスタートする。


 各国の精鋭部隊との戦闘にS級では少し物足りなく感じてきてしまう。あっという間に倒して俺から希望品を貰って帰っていく。被害も怪我くらいで命に 別状なしが続く。まぁ今回は観客からの生命力の回収がメインとなるから大成功ではあるのかな。


 これで今回のDPを使いダンジョンを更に拡大し、更に新規開発することが出来るからね。リ・アースに鍾乳洞のような地下ダンジョンを作っても面白いかもしれないし。


 午前の部はあっという間に終わってしまったので観客は早めの昼食に出て行く。ビールももの凄い勢いで樽が空いていく。ボランティアの人達も大忙しだがなんだか楽しそうで何よりです。


 そして午後から一般探索者とのバトルが続く。昨日と一緒でこの時間は余興扱いとなっていて観客も居たり居なかったり、野次を飛ばしたりしながらくつろいでいる。探索者は命懸けで戦っているのだけどね。


 ソロ忍者もCランクの大百足オオムカデと死闘を繰り広げ一般探索者の中では一際大きな歓声を浴びていた。戦利品で最初は進化の薬を希望したので却下する。流石に今回のバトル大会でCランクの魔物を倒したくらいでは進化の薬はあげられないなぁ。


 するとなんとBランクのバトルエリアのトリガーを希望してきた。そりゃあクリアーさえ出来れば進化の薬以外にも色々と手に入ることは間違いないのだが…本当にアドレナリンジャンキーだな。


 その後はまたエース達がSランクとの戦闘を行い観客を盛り上げていく。そして処刑人パーティの出番となった。このパーティはSの2つ上の準男爵級の魔物との戦闘となる。ランダムポップなので何が出てくることか。


 処刑人達が中央に立つと魔法陣が現れ魔物がせり上がってくる。それはかなり禍々しい角が生えていて、人型のヤギの姿をしていて牛太郎によく似た魔物だ。だがコッチが本家の「デーモン」の下位、レッサーデーモンだ。


 デーモンの中では最下位種族になるのだが、それでも準男爵の中では上位に位置する。見た目、迫力共に申し分のない魔物が出てきたものだな。


 先程までお祭り騒ぎだった観客は、その禍々しい姿に言葉を失って静まり返ってしまった。そんな中俺の開始の合図で戦闘が始まる。


 処刑人パーティはタンクとアタッカーと後方支援職の3人で挑んでいる。このパーティには全人類で初めて後方支援の「風水士」というジョブを得ているメンバーが参加している。この風水士が地の利を得て仲間を強化することで戦闘を有利にする事が出来る。ある一定のジョブ取得率以降、ジョブが多彩化されてきている印象がある。


 なぜこの風水士の職を得たのかは本人の趣味から来ているのだろう。ダンジョン探索中でも風水盤を持ち歩いていた位だ。ただこの職業がかなりの支援能力があり、処刑人に準男爵とのバトルを希望させたキッカケになったのだろう。


 風水士はバトル開始早々にエクストラスキルを使うと自身を中心に魔法陣のように風水羅盤が浮かび上がる。そして風水士専用魔法4種で範囲支援を使い、タンクと処刑人の能力をガンガン上げているようだ。あ〜能力値が見えてしまうと面白さ半減しちゃうなぁ…。なので俺はダンマス専用タブレットを見ないようにする。


 レッサーデーモンもボケっと待っているわけでは無い。そもそも魔法使い寄りの魔物な為、その場で魔法を発動している。火力も流石に高威力となっている。


 それを支援を受けたタンクが防ぐ。そして風水士が魔法で浮かび上がる風水羅盤を見ながら指示を出す。


「ベータはその場で耐える。その隙にアルファは11時に移動。背後からの攻撃を」


「「ラジャー」」


 何か吉方位でもあるのかな?普通に背後は有利な位置だけどね。ただこの敵に対しては12時や1時じゃなくて11時が最適なのだろうな。面白い戦い方だ。


 タンクに高威力魔法が炸裂しまくっているが、自分と風水士でヒールを使っているようだ。その間に処刑人は11時にたどり着きエクストラスキルを発動する。


 処刑人の職業は「魔法剣士」。エクストラスキルで武器に魔法を纏わせて攻撃の威力、スピード、そして追加魔法ダメージを与えることができる。結構ヤバイジョブである。それに更に風水魔法が上乗せされている事により、僅か3名でも高位ランクの魔物と対等以上の戦闘を可能にしている。


 レッサーデーモンは魔法使い寄りな魔物なため、物理攻撃に対しては耐久が有るわけではないので、徐々に押され始める。そしてやはり処刑人の位置取りが絶妙だ。範囲魔法を唱えられてもタンク以外に被害が行かない絶妙な位置取りとなっている。さぁどうなる?

 

 



 

 

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