第85話 スペシャルマッチ

 結局見せ場もなく剣姫に滅多斬りにされて消えていくカイ改。く〜悲しい…。会場は内外から割れんばかりの歓声があがる。これが40万人の歓声か。半端ないな。


 後は剣姫の希望の品を聞いて本日は終了だ。すると剣姫は口を開く。


「今すぐに真紅の女騎士との対戦を希望する」


 …ほほう。そうきましたか。女騎士の模擬戦の映像はずっとモニターや巨大スクリーンに映し出されているのだが、対戦相手が丁度今回の剣姫と同じカイ改なのだ。


 でもこの模擬戦では雫はかなり手を抜いている。それは俺が作った魔物を傷つけない様に戦ってくれているからだ。


 同じ敵と戦った物差しで女騎士の強さでも測ったのかな?きっとギリギリ勝てると思ったのかもしれない。それにまだ狂戦士化は解けていないのだろう。俺は雫の方を見る。すると雫は頷き立ち上がる。


 すると雫の目の前に転送門が現れて剣姫の目の前に転送される。リアよ、ナイスだ。歓声も先程から鳴り止まない。俺はバトルの前に剣姫に1つだけ確認を取る。


「死んでも知らないよ?」


「私が負けるとでも?貴方とそちらの女騎士の関係は知りませんが、私は初めて本気を出させて頂きます。逆に後悔なさらぬように」


 ここにも伸び切った鼻の持ち主が居たよ…。雫よ、ポッキリと折って差し上げなさい。


 急遽剣姫VS女騎士のスペシャルマッチが組まれた。当然遊びではない本気の殺し合いをすることになる。会場はさっき迄とは打って変わって静まり返っている。


 向かい合う二人に俺は開始の合図を出す。だが女騎士の雫は剣を地面に突き刺してオイデオイデをしている。どうやら素手で戦うようだ。それを意に返さず剣姫は本気で女騎士に斬り掛かる。


 観客には何が起きたのかきっと分からないだろうが目にも止まらぬ速さで女騎士に連撃を食らわせている。おそらく狂戦士化した状態でスキル「バトルダンス」だろう。半端ないな。


 でも雫には効かない。というか届かない。魔法障壁が掛かっているから。だが剣姫も嬉しそうに斬り続けている。


 きっと今まででここまで本気で斬り続けた事など無いのだろう。どんどん加速していき、どんどん威力が上がっているように見える。きっと現在進行形で能力が上がっているのだろう。それに追加で他の強化スキルや戦闘スキルも使ったのだと思われる。


 剣姫はいつもの戦闘スタイルである魔石武器のロングソード二刀流だ。其処に突然半端ないな重そうな一撃を撃ち込む剣姫。多分ヘビィショットを乗せたのだろう。それを何度も何度も撃ち込み続ける。


 すると雫の魔法障壁に亀裂が入った。俺は自分の目を疑ったが間違いなく亀裂が入っている。魔王級の魔法なのだぞ?しかも使っているのは神級の雫だ。剣姫とはこれ程だったのか。これだと魔王級の魔物とも良い勝負しそうだな。


 実際今の剣姫の能力値なら、スキルや魔法を組み合わせれば一部の能力値だけなら魔王級に一瞬だけ乗せることは可能ではある。乗らなかったとしても連撃で撃ち破ろうとしているのだろう。まさにバーサーカーでベルセルクだな。本気で狂っている。まさか魔導王もここまで狂ってはいないだろうな…?


 それでも亀裂が入ったからといって魔法障壁を破れる分けではなく、しばらくは攻撃を続けていた剣姫だが、突然ガクンッと動きが鈍った。きっと狂戦士化が解けたのだろう。エクストラスキルなので1日1回、5分間だけしか効果は続かない。その瞬間に雫が雄叫びをあげた。


 これには観客は当然、剣姫ですら不意を突かれたのか完全に萎縮してしまった。勝負ありだな。そのまま雫にぶん殴られて気を失った。雫は優しいなあ。命までは取らないであげたようだ。ただ早く回復してあげないと死ぬぞ?俺はリアに言って剣姫のパーティメンバーの前に転送門を出してもらう。するとヒーラーが真っ先に剣姫に駆け寄りヒールを行っている。どうやら一命は取り留めたようだ。仲間に担がれて退場していった。


 静まり返っていた会場は、女騎士の強さを目の当たりにし、爆発したかのようにまた盛り上がる。これなら女騎士のフィギュア爆売れ間違い無しだな。女騎士も観客を煽りまくっている。雫はこういうの得意なんだよなあ。お調子者だからなあ。


 こうしてバトル大会初日は幕を降ろした。それでも会場から出て行こうとしない観客のために会場の水晶やモニター、スクリーンに剣姫と女騎士との戦闘をスローモーションで流してあげて酒のツマミにしてあげた。きっと夜中まで騒ぎ続けるのだろうな。それほどの衝撃がスペシャルマッチには有ったと俺も思う。


 俺はそんな盛り上がっている会場を後にし、出店を回り、状況を聞いていく。殆どの店が本日完売ということで、残りの店もほぼ完売だという。良かった良かった。出店の売上からは1銭も取らない。あくまでも観戦者への配慮の為に来てもらっているのだ。明日もよろしく頼むよ!と言ってコアルームへと戻る。


 ん〜ちょっと金のチェストでサービスし過ぎちゃったかな…折角入ってきたDPをかなり使用してしまった。まぁ今回は第一回大会だから大盤振る舞いでも良いよね。会場を見てみるとまだ雫と一緒に皆で盛り上がっている。そして剣姫はどうやら立ち上がれるところまで回復したようだな。


 当然報酬で戦闘の権利を取ったのだから剣姫には何も残ってはいない。ただ、リミッターを外して戦闘した経験が今後どのように剣姫を変えていくのか非常に楽しみではある。パーティで挑めばもう少しは違ったかも知れないのだけどね。


 それにしてもエデンの住人に作ってもらった女騎士のフィギュアは既に完売してしまった。あの一戦の後に立ち所に売り切れてしまった。恐るべしお調子者スキル。これだけで今の日本円レートでで600万円ちょっとくらいかな。鶏とヤギってどこで買うんだ?今まで調べたこともなかったわ。


 それに鶏の上位種「烏骨鶏」という鳥が居るらしいのでそちらにしても良いかもね。卵とミルクが取れるようになればきっと美味しいスイーツやチーズにバターなどが食べられるようになるかもしれない。でも烏骨鶏って天然記念物となっているけど買えるのか?でも普通にネットで売られているな。


 まぁ今すぐにどうこうということてはないし明日は魔導王との対戦もある。あの人も明日を乗り越えれば大いに成長をすることだろう、魔導王が倒れたあの日のように。でもあの人は明日俺に殺されるつもりなのだろうな。そんな目をしていた。


 だからあえて殺さない。ただやはり明日の魔導王との対戦に雫を召喚するのは止めておこう。万が一俺に何か有った時は雫に全てを引き継いで貰わなければならないのだから。若干牛太郎に引っ掛かる所はあるのだが力でねじ伏せてやろうじゃないか。


 


 


 

 


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