第78話 衝撃の魔石
金曜日の夜。大阪のダンジョンギルドに激震が走る。元トウキン工業の魔導王、磯山幹久率いるチームシーカーズがとんでもない物を迷宮ダンジョンから持ち帰ってきた。それは大きさは30cmで通常は紫色なのだが、真っ赤な魔石だった。
それ以外にも25cmの紫色の魔石も多数納品された。暫定Aランクモンスターの魔石で、まだ値段すら決まっていない。
ダンジョンギルドの聴き取り調査で、チームシーカーズが迷宮ダンジョンの1つを攻略したという情報が全世界に伝わることになる。
ボス ハイオーガ
ボスの暫定ランク S級
この情報だけでチームシーカーズに多額の情報料が支払われた。それでも魔石の買取価格はAランクでさえ未設定なのだ。S級の魔石など存在することさえ想定されていなかったので当然未定だ。
「それじゃあ終わりだろ?帰ろうぜイソ。俺は早く風呂に入りたいぜ!」
「あぁそうだなヒサ。俺も同じだよ。それじゃあ値段が決まったら連絡下さい。それまでこの魔石は俺らのロッカーで預かって置きますから。支払い前に研究されたらお互いに…ね」
そうギルド職員に挨拶をして二人は部屋から出ていった。ロビーにはその二人の仲間が待っていたようだ。
「終わったのか?魔石に値段は付かなかったようだな。私の言った通りだっただろ?キム」
「アキ、俺は何も言ってないぞ?タケが幾らかしつこく聞いてきていただけだろ?」
「まあ良いじゃんか。早く飲みに行こうよ!今日は動画が投稿される日だしさ!きっと俺たちのボス戦だよ」
「タケ、飲みに行くより先に風呂だろ!それにしてもS級の攻撃力は半端なかったよなキム?一瞬腕が吹き飛んだかと思ったからな!」
「楽しそうに攻撃受けていながらよく言うよな。あれヒサの悪い癖だぜ。」
そう楽しそうに話しながら5人はギルドを後にして街に消えていった。
★★★★★
「ん〜早かったな…。もう迷宮ダンジョンを攻略しちゃったよ。この人の為だけに新たなダンジョンを作るわけには行かないし、既存のダンジョンで楽しんで貰うしかないよな」
俺はワインを飲み干し、酔っぱらいと言うものを味わいながら魔導王の迷宮ダンジョン攻略を動画で見ているところだ。9層には通常のオーガでランクはA。オーガとは日本の妖怪「鬼」と同じような見た目の魔物だ。筋骨隆々で、金棒を担いで歩いている。
ボスはその上位のハイオーガ。ランクはSだ。Sでも中位なのだが予想通り魔導王パーティには歯が立たずに近接戦での激戦の末討伐されてしまった。この戦闘ではなぜだか魔導王は魔法を使わなかった。使っていたら瞬殺だっただろうに。
開幕に金棒で守り人を殴り付けたまでは格好良かったのだけどな〜。やはり近接だけだと限界があるのかな…。そう考えるとカイにも何か攻撃魔法を覚えさせておくかな。
それよりも魔導王パーティは今後どうするつもりなのだろう。今回だけで一人頭サラリーマンの一生分以上の金を稼いだのだ。もう来ないでくれても良いのだよ?なんせBランクの魔石が5,000万でそれを何個持って帰っただろうか。それプラス薬品が色々にまたアレが出ていたな。恒例の珠が。
値段の付いていないAとSの魔石まである。このパーティのせいで値崩れしそうだよね。ダンジョン省としてはその方が良いのか?安く買い取れる事になるのだから。それとも魔石の価値が上がって値上がる可能性も?今後が楽しみだ。
今回の動画はこれに決定だな。もう敵などの情報処理の為に加工はしなくても良いな。どうせ迷宮ダンジョンは入口がランダム設定だし、このハイオーガに当たる可能性も低いのだから隠すことも無いと思う。これをアップすれば今日の仕事は全て終わりだ。と思ったときにはモゾモゾと動く気配がしたので振り返る。
「お兄ひゃん!またエッチな動画を見てるんれふか?全く…!どんなかワラシにも、見せてごらんなしゃい」
完全にワインでベロベロに酔っ払った雫が絡んでくる。昼食の時に飲んだワインをいたく気に入り、わざわざ地球に買いに行って、そこからず〜っと呑み続けている。これはエッチな動画ではなく魔導王のS級討伐記録だ。そしてその下にはエデンの魔物襲来イベントの時の動画だ。こっちは危険だからファイルごと隠しておく。こんなのを間違えてアップした日には大変なことになってしまうから。
「ほら、なにもないだろ?今日はその辺にして寝ちゃいなよ」
「嘘だネ!今こっそり隠しられひよ!ワラシ見てたんだかりゃね」
酔っぱらいの癖に目ざといとか…。厄介だから抱きかかえてメガスライムの方に投げ飛ばす。すると雫は一旦めり込んでから、包まれるように横に寝かされる。多分もう起き上がれないだろう。なんせ最高の寝心地だからね。
ふぅ〜。さあ動画をアップして俺も久しぶりに寝ようかな。俺も少し酔っているのだから。アップした動画は人類初のS級討伐動画だ。明日のワイドショーが楽しみだな。
翌日。珍しくぐっすりと眠ってしまった。雫など凄い寝相でまだ寝ている。本当にスライムベットはやばいのだ。俺はウェブニュースをチェックしてみるとやはり動画はバズっているようだ。流石にS級との戦闘など見てるだけでもアドレナリンが出まくってしまうだろう。あ〜俺、スゲー良い事思いついちゃったかも。
ダンジョンの中に闘技場を作ってバトル大会を開こう。そしてそこで魔物対探索者のバトルを観戦出来るようにしよう。観客席は10万人位入れる大きさが良いな。そして魔導王や剣姫を特別枠で招待してあげよう。ただ問題があるか…。それは観客として来てもらう一般人の事だ。ダンジョンに入ってしまうとスポーツ関係では公式大会などには出れなくなってしまうデメリットがあるのでそこをどうにかしないと観客が来れなくなっちゃうよな。俺はコアの分身のリアに聞いてみる。
『お答えいたします。観客席と戦闘用舞台を別の次元に分けることでその問題は解決出来るかと思います。そうすれば客席の
おぉなるほどね。それは確かに全てがパーフェクトのように聞こえる。ただそうすると客席からはダンジョンポイントは回収出来ないのかな?10万人からダンジョン侵入時のポイント回収が出来ればかなり黒字になるのだけど。
『それも可能です。客席は地球の理にはなっていますが、ダンジョンの転送門は潜らないとならないのでその時に回収されます。これはダンジョンの特性上変えることは出来ません』
なるほど。地球から地球の理のダンジョンに侵入するのだからDPは回収されて当然なのか。これなら例え魔導王が魔王級の魔物と対戦したいと要望が出ても叶えられる程のポイントは入るな。様子を見て会場をもっと拡張しても良いしな。どうせ望遠で見られるのだから遠くても関係なくなるのだ。
いつかはエデンの里にも…。里じゃなくて街くらいになったらかな。楽しみだ。
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