第76話 超獣対決
俺と雫の作ったS級モンスターをこれから戦わせるのだが、性能実験をするのは何時も同じバトルエリアでやっている。今までもカタログモンスターの強さを調べるのに何度も使用しているのだが、今回はお互いに自作した魔物同士のバトルとなるので少し思い入れがある分負けてほしくはない。
カイと牛太郎は向かい合って立っている。S級同士の戦闘はかなり激しくなると思われるので俺たちはタブレットでの観戦だ。色々と間違いだらけな牛太郎はどうやら魔導士のようだ。魔導士用のコートに杖、グローブにブーツまで魔導士用だ。スキルは何があるのか俺には見えないようにしているようだ。
先に動いたのはカイ。身体強化を発動して縮地で一気に距離を縮めてから、六角棍で牛太郎を殴りつける。そして至近距離から火炎ブレスだ。終わったか?と思ったら牛太郎は魔法障壁を発動している。牛太郎の身体から30cm離れた周囲に魔法で膜を張っている。しかもこの魔法は魔王級用だ。カイでは破れない。
「ずるいぞ雫!S級で魔法障壁だなんて!」
雫はニヤニヤしているが何も言わない。すると牛太郎が魔法を発動した。「サンダーストーム」だ。これ災害級の魔法だぞ?魔導王と同じ魔法じゃないか!
しかも牛太郎の魔法攻撃力増々の装備品と、多分魔攻大アップのスキルと更に何かのスキルが何個か発動したのだろう。牛太郎のサンダーストームは桁が違った。俺のカイが跡形もなく吹き飛んでしまっていた。
「やってくれたな〜!インチキじゃないか!牛太郎はS級じゃないんだろ?スキルも何個持っているんだ?3つ以上持ってるだろ?」
「いや、S級だよ?ただ、賢さ以外の能力を全て捨てて賢さに全振り特化させたから魔王級の魔法が使えるだけ。それにスキルも合計で4つだけだよ?別に3つまでとか決まりはないでしょ?」
そういうことか…。やられた。これは魔導士タイプだから出来る芸当だ。魔導士は賢ささえあれば防御力など必要なく、カチカチの防御魔法や一発の火力を数段階上げることができる。そして各能力が一定の値を越えると使えるようになるスキルや魔法が色々とあるのだ。その内の1つが賢さ判定の魔法、魔王級の魔法障壁だ。
魔王級魔法のボーダーラインは賢さ1000以上なのでS級の牛太郎は他の能力を全て捨てて更に雫のサービス込みで賢さを魔王級まで上げたということだ。これは完敗だ。
それに確かにスキルは3個までとか決まってはいない。俺が勝手に3個までと決め付けていただけなのだが…。なんかシックリ来ないなぁ。スキルは3つ迄のほうがジョブ別の差が出やすい気がするのだけど。前衛なのに魔攻アップとか何か嫌だし後衛なのに前衛スキルも何だかなぁ。
「リア。ダンジョン内ではスキルは3つ迄と指定することは出来る?それに新たなスキルブックを拾ったときに取捨選択出来る様にもしたいのだけど」
『それは可能です。タブレット上から全探索者に緊急メッセージを送り、3日間だけ自由に選ぶ権利を与えましょう。その期間を過ぎた時点でまだ3種以上所有している場合は強制的にランダムで選択してしまうように設定しておく事も可能です』
そんな事も出来るのね。これは一旦保留だな。今は牛太郎問題の方が先だ。俺は雫に尋ねる。
「まさか牛太郎を迷宮ダンジョンのボスとして配置する気じゃないだろうな?」
「そのつもりだけど…ダメっぽい?」
「ぽい?じゃないよ!ぽいじゃ!駄目に決まってるだろ!賢さだけ魔王級の魔物は、それはもう魔王だよ!」
能力値をもうチョット平均化しろと言うと、嫌だと言う。かなり渋る雫に、いつか試練ダンジョンの深い層で配置してあげるからと説得して、やっと牛太郎を迷宮ダンジョンに配置するのは諦めてくれたようだ。だが、後々この牛太郎が色々とやらかすのだけどそれはもうチョット先の話。
俺はポイントを使ってカイを復活させて、ちょっと性能をイジる。牛太郎には負けてしまったが、魔導王には負けてほしくないので魔法対策の魔法を与えておく。それは「反射障壁」という魔法で、受けるダメージを一定の数値分反射してくれる。あまりにも高威力の攻撃だと反射障壁ごと消し飛ばされてしまうのだけども。
反射障壁の耐久は賢さに依存するので、やはり賢さを他よりも上げる。それでも総合値が一定を超えてしまうと騎士級になってしまう。そうなるとイカサマしているのと同じなので俺は絶対にヤラない。
いくら魂の回収がしたいからと言って、討伐不可能な高ランクの魔物を配置したのではダンマス失格であると俺は思っている。
なので雫考案の狩りダンジョン(仮)も廃止させた。ただレアモンスターは別で、あれはシステムとして存在していて、ワンランク上がるだけなので頑張れば倒せるはずだ。それに探索者講習の時にもレアモンスターが湧いたときの対処法を皆学んでいるはずだ。
俺オリジナルのカイはさっきの戦闘時は上半身裸だったので、今度はちゃんとバフ付きの鎧を着させて迷宮ダンジョンのボスとして配置しなおした。これでS級としての能力値はかなり騎士級よりの魔物になったと思う。装備分と合わせると騎士級ともやり会えそうだけども。これはイカサマではないよね?ちゃんとS級なのだから。装備バフはオマケだ。
その後はダンマスの大事な仕事であるエデンの里の発展ミッションだ。その為にエデンへの魔物襲撃イベントを考えないとな。これは近々必ず行う。ただどの程度の強さの敵を設定するかが1番のカギだと思っている。弱すぎず、強すぎず。そして魔物の数も大事だ。
エデンの大人型は100体。その内戦闘職と呼べるのは騎士のリーダーと斥候、盾のガーディアン、ウォリアー、各属性の魔法使い。そして狩人。そんなところかな?後は生産職になる。全体の3割が戦闘職だった。だが生産職でも武器を手に取れば立派な戦士になる。そして強さ未知数の雫か。本当に参加するのかな?それ次第なところもあるのだけども。
「え?参加するよ?もう鎧も準備したからね!」
だそうだ。
真紅のフルプレートアーマーに白のロングスカート。そして頭部には真っ黒なポニーテール。かなり格好良い!よし、雫は創造神の使者として戦闘に参加してもらおう。そして魔物のボスを引き止める仕事をしてもらう。最後にボスを倒すのはエデンの里の誰かだからね。雫だけだと何だか心配だなぁ…。俺も参加するか…。
その後も色々とシュミレーションを行い何とか乗り切れそうなラインで設定できたと思う。決行は夜明け。皆が起き出した頃に魔物の集団がエデンを襲う。後数時間後だ。それまでは各ダンジョンの様子を見て時間を潰そう。
まずは魔導王。よし、ちゃんと寝ているな。もうすでに6層の安全地帯に居るや。多分6層に中ボスが居ることを知らないのであそこで休んでいるのだろう。まあ中ボスはBランクだから相手にならないだろうけど。
浅い層で戦っていたパーティは皆帰って行ったようだ。アメリカ大陸の方は時差的にまだ夕方あたりだ。そしてソロのソロマンがまだ居た。やはりただの変態ではなかったようだ。3層で戦っている。ソロで1層、2層のフロアボスを倒したということだ。そしてソロならチェストから出るスキルや魔法は当然自分のものだ。
なので1日で既に3つのスキルと1つの魔法を覚えている。まあ隠密は俺からのプレゼントだけどその他は自力で集めたのだから大したものだ。しかも隠密と相性の良い「不意打ち」を覚えてやがる。引きの強い変態だと?
コイツのは当たりスキルだから良いのだけど、他の人達は今ならスキルブックは売りに出して、後々自分に合ったスキルを買ったほうが良さそうだけどな。今ならかなりの高値で売れるからね。でも自分で取ったスキルだから使いたくなるんだろうな。
そんなのを色々見ていたらいよいよ時間となりそうだ。何だか俺が緊張してきたよ。
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