第75話 リ・アースの生活

 俺と雫はコアルームに戻ってきた。新ダンジョンの視察はとても有意義であったと思う。問題点も見つかったしどんどん改善していこう。そして俺オリジナルのボスの制作も頑張らないといけない。


 本来はわざわざオリジナルを作る必要は無く、タブレット内のカタログには大量の魔物が乗っているのだが、なんというか…。ありきたり?とは言ってもほぼほぼ出尽くした感はあるのだが。でも似ていたとしても俺のオリジナルではあるのでスキルやランクが違ったりしている。


 まずはある程度の形を決める。これはタブレットに書き込んでいく。スケッチ程度のクオリティーでも良い。俺がどうしても作りたかったのは竜人族の魔物だ。日本の龍ではなく西洋のドラゴンに近いのかな?でも顔は入れた人間の魂に引っ張られるので今は空白だ。


 エデンにも何人か生活しているが、竜人族は普通に格好良いのだ。そんな竜人族を敵として作ったら格好良いのではと考えているのだ。


 スケッチはすぐに終わり、タブレット上で立体化させるとコアの化身のリアのお陰で理想通りの姿かたちに変換される。そして色合いと質感、着衣や装備を決めていく。一応魔物なので悪そうに成るように体表面はダークっぽい鱗の皮膚に仕上げる。


 そして一番大事なスキルとランクを決める。スキルは元々決めていたのだがランクをどうするか。魔石の大きさを決めると自ずとランク付けされる。


 竜人族はS級にした。すると身体のサイズが2.5m程に自動で決まる。そしてスキルは身体強化と縮地、そして口からは炎を吐く火炎ブレスのスキル。元々皮膚は鱗に覆われているので硬い。


 武器は両手持ちの六角棍にしようかな。そして最後に能力値を振り分ける。ダンジョンポイントを使ってちょっと能力値を足しておく。これが思い入れというやつだ。名前は…カイ!コイツを迷宮ダンジョンのボスとして配置しておこう。魔導王には当たらないでね?奴はちょっと桁が違うから…。3層で編み出した魔法は特にヤバい。災害級の魔法だ。


 まぁカイが倒されても時間でリポップするのだが、殺される所を見るのは少し心が痛む。それにDP分はリセットされてしまう。長生きしてくれよ?


 丁度カイの制作が終了した所で信託の間にお供物が届いた。最近エデンの住人が正午にお供物をしてくれるようになっているのだ。俺と雫は食事を取らなくても死なないのだが、食べれない訳では無い。


 エデンの住人は俺と雫の存在に気付いているということになる。何度かここで神託を下したし、教会が一夜明けたら大聖堂になっていたりなど、おかしな所が多々あったからだと思う。信託の間にはもう誰も居ないのでダークナイトに取って来てもらう。


 今日はシカ肉を何かの果物で煮た物だ。パンはボソボソだがちゃんと食べれる。そしてサラダ。これにも果物で作ったソースが掛かっている。


 俺も雫もこのソースが大好きだ。流石職業「調理師」の居る里だ。今この里には大人100体、子供100体が住んでいる。そしてこの食事を大聖堂の食堂で皆で食べている。各家に調理場はあるのだが料理は調理師が纏めて作って皆で食べるという生活を自主的にしている。団体行動が大好きなんだよな。


 そして最初から子供の身体の子達は巫女ちゃんズを中心になぜだかこの大聖堂で生活をしている。ちゃんと家も多めに用意してあるのだが…。まあ過ごしやすい気候だし、風邪をひくと言うことは無いと思うのだけどどうなんだろう。


 そしてカップルとなっている多数の雌型のお腹には新たな命が宿っている。母乳が出始める頃を狙って新たな魂で赤児タイプの住人を増やしても良いかもな。新たに命を吹き込まれた身体は信託の間で目覚める。その時に大聖堂の鐘がなり、巫女ちゃんズが引き取りに来る。


 大人型には最初からジョブとスキルを与えているのだが、子供型には与えていない。この子達には将来、進化の薬を与える予定だ。この薬はこの世界でどうやって生きてきたかによってジョブが与えられる。なのである意味努力すれば自分の希望のジョブを得られるということになる。


 戦闘職を得られるように魔物の襲撃とかあったほうが良いのかな?平和だと戦闘職には就きづらそうなイメージだし、子供達にも守るという事を覚えて貰う意味でも魔物襲来イベントはアリかもな。その時に命を落とす者も出るかもしれない。そこで命の尊さを覚えてもらおう。


 それを経験した子供達は剣や魔法の修練に励み、魔物に負けない武器や防具を作るようになるかもな。これは完全に俺の妄想なのだけどね。可能性としては何も感じない冷めた人類かもしれないのだし。こればかりはやってみないと分からない。


 やる前に雫に話しておかないとな。いきなり魔物が里を襲ったら悲しんでしまうだろうからな。きっと嫌がるだろうな。


「魔物襲来イベント?何それ楽しそう!私も参加していい?」


 キャッキャと騒ぐ雫。いつも俺の斜め上を行く我が妹。逞しく育ったものだ。お兄ちゃんは嬉しいよ!雫用にアーマーも用意しておいて上げないとな。


 その後も色々と細々とした変更点を修正しながら夜になっていく。と言っても俺も雫も寝なくても平気な体なので海外の様子を見ている。ヨーロッパからアメリカの探索者は元兵隊上がりの探索者が多いのだろう。動きが素人とは違う。


 アメリカ大陸のとある国。おそらく朝一番で入ってきたのだろう。戦闘のプロと言うより殺しのプロという感じの単独ソロの人間もいるのか。この人はちょっと面白いな。ダンジョン内で誰かを殺す気じゃ無いだろうな?お天道様おれは見ているのだぞ?この人にこっそりスキル「隠密」を与えてみよう。どんな行動を起こすのか楽しみだ。


 そいつが敵を倒したときに金のチェストが出てビックリしている。そして中からスキルブックを取り出して早速使っている。もうチョット喜びませんか?


 そして俺からは丸見えなのだがきっと隠密スキルを使用したのだろう。自分の手や足を見回している。きっと使った本人には効果が分からないのだろう。恐る恐る近くの探索者の元へと近づいて行っている。


 やはりコイツは面白いな。普通は魔物に近づいて行くと思うのだけどね。何を狙っていることやら。そいつは周りに気付かれない事を確認すると、別の女性探索者の方に歩いていく。俺は緊張しながら眺めていると、そいつは女性探索者の匂いを嗅ぎ始める。女性には指一本触れる事なく、ただただ匂いを嗅いでそして股間を膨らましている。


 単なる変態じゃねーか!ムッツリ野郎め!隠密スキルを返してもらいたい処だ。俺は自分の見る目の無さに少し落ち込んでしまう。そんな俺の横で楽しそうに雫が何かをタブレット上に書いている。


「この子を迷宮ダンジョンのボスとして配置しようと思ってさ。強そうでしょ?兄ちゃんのカイと戦わせて見ようよ」


 ん〜…強そうかどうかで聞かれると困る。どう見ても弱そうだ。ただ、それが立体化してS級の魔石を入れたら途端に強そうになった。どちらかというとバフォメットに近いのだがコイツはヒツジ?リ・アースの住人の羊人族を凶悪にした感じだ。そして何故か俺に対して少しだけ反抗的に見える。雫が親だからか?


 なんか悪魔の絵か、魔人の絵みたいなので見たことがあるバフォメットはヤギなのだが、こいつはヒツジの巻き角が生えている。だが凄い雰囲気がある。かなり格好良いな。そして名前は牛太郎だと。ヤギでもヒツジでもなく牛のミノタウロスのイメージだったみたい。スケッチって大事ね。まあ良い、どっちが強いか勝負してやろう。


 


 


 

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