第74話 アメフト部
案の定ゴブリンにアメフト部8名は荷が重すぎたようでタコ殴りにされて3cmの魔石になった。ゴブリンも最初は「コロスコロス」と息巻いていたが途中からは「イタイイタイヤメテ」って…気合が足りなかったな。アメフト部も止めてくれるハズもなく…あぁ人間にゴブリン語は解るはずがないよな。
そしてもちろんバトルエリアなのでご褒美のチェストも出ている。彼らは凄く嬉しそうにチェストを開けてスキルブックと青いポーションを取り出している。そしてスキルブックを手に取り歓喜の雄叫びを上げている。そりゃあ嬉しいよなぁ。
彼らはアメフト部の集まりなんだろうな。ダンジョンに一度でも入ってしまうと今後は公式戦などには出られなくなってしまうのだがOBか何かかな?ダンジョン省の講習でも1番最初に説明と誓約書を書かされるので知らないはずはない。
今日は彼らに付きまとおう。なんか凄く楽しそうだから。そしてここのダンジョンでは一番先頭を進んでいる団体でもある。それに彼らは無茶をしそうな雰囲気があるんだよな。
このパーティは一週間後には何人になっていることやら…。死んだら喜ぶのはダンマスとサブマスターだけだぞ?まぁ俺と雫なんだけども。そんな事を考えながら俺達はバトルエリアを素通りし2層へと降りていく。そこは1層と変らず草原だ。
敵はEランクの下位の魔物が出てくる。Fランクとは大差ないのだが3cmの魔石を出す。これは今なら1個1000円だ。ただ同じEランクでも4cmなら1個1万円する。これは魔石武器に使えるからだ。狙い目だね。
試練ダンジョン2層。
アメフト部は雄叫びを上げながら狼と戦っている。この狼はEランク下位になるのだが俊敏な敵なので苦戦しているようだ。そしてやはり見た目も犬の様できっと戦い難いのかもしれないな。すると一人が突然凄い速さで狼に対してナイフで突き攻撃を2回連続で御見舞した。
きっとスキルを使ったのだろう。狼はそのまま魔石に変わって行った。基本的にこのダンジョンではスキルブックや魔法のスクロールはチェストからしか出ない。東京ダンジョンとはそこが違う。
そのチェストはフロアボスやレアモンスターを討伐した時や、フィールドの何処かにランダムで出現するようになっている。なので本来は何度もボスを周回してから先に進むのが理想なのだが。
ただアメフト部は8人パーティだ。皆にスキルが行き渡るまでに時間が掛かってしまうし、希望のスキルが出るとも限らない。なので1人がスキルを獲得した事によりきっとどんどん進みたくなってしまったのだろう。背中がお留守ですよ?
背後から別の狼が近づいて来ているのを俺からは見えているのだが、アメフト部は誰も気づいていない。狼自体は60cm位の中型犬位の大きさなのだが牙と爪はかなり鋭い。
その狼が1番後方に居た1人のアキレス腱辺りにガブッと噛み付いた。ぎゃ〜〜!と叫び声を上げて屈んでしまう。不味いな。と思ったときには狼は丁度よい高さの首元に噛み付いた。仲間たちはパニックになっている。
ちゃんと戦えばなんてことない敵なのにこうなってしまうと脆いものだ。戦闘経験の不足が招いた悲劇だろう。そうこうしているうちに更に不格好なナイフを持ったゴブリンも来てしまっている。これは修羅場になりそうだぞ。
そう思っていたのだが、そこは流石はアメフト部。低空からのタックルでゴブリンを押し倒し、馬乗りになって殴りまくる。それを見た他のメンバーも狼を蹴り上げて殴りつけて踏みつけている。武器を使わないほうが強いじゃないか…。そしてきっと能力も上がっただろうな。
噛まれた人は1層のフロアボスのチェストから出たポーションを与えられて完全復活している。最初の試練を乗り越えて、このパーティはこれからどんどん強くなっていくのだろうな。
そんな教訓を得たアメフト部は、無理に進まず能力値上げをすることにしたようだ。こうなると俺達は暇になってしまう。なので魔導王のパーティの映像を確認してみる。
「進むのハヤ!」
つい声が出てしまった。それを聞いていた雫がビックリして怪訝そうな顔で俺を見てくる。
「ごめんごめん。魔導王のパーティの進行速度があまりにも早くてさ」
雫も確認してビックリしている。
まだ正午になる少し前なのに既に3層の半ば辺りまで進んでいる。これでは2日でクリアーされてしまうのではないか?S級の魔石がそんなペースで世の中に出回ってしまっても良いのだろうか?1個で数億円になってしまいそうな予感がするんだけど…。俺は知らないよ!後はギルドに判断を任せよう。
この人達もこれが正規の仕事なのだからしょうがないと思うのだけどね。まぁ放っておこう。素人探索者を見ている方が楽しいからね。
色々と俺専用のタブレットでダンジョン内の状況を確認していると、中国の試練ダンジョンの1つで先頭を進んでいるパーティがちょっと気になった。
「雫、ちょっと中国の試練ダンジョンに気になるパーティがいるから見に行こうと思うんだけど一緒に行ってみない?」
「行く〜!どんななんだろう〜楽しみ!」
俺は「リア」に頼んで誰にも見られない場所に転送門を出して貰い、中国の試練ダンジョンに繋いでもらう。どうやら目的のパーティは2層の半ばに居るというので近くに出れるように転送してもらう。
うっほ〜中国はメッチャ混み合っているな〜!そしてそこには4人パーティの一団がオークと戦っている。しかも4人は素手で戦っている。周りは棍棒やナイフ、中華包丁などを振り回しているのに。これは凄いなぁ。カンフーかな?格好もオレンジ色の道着のように見える物を着ている。
俺が気になったのは素手で戦っていることにではない。この素手で戦う事によって能力値の力と体力、器用、素早さが良いペースで上がって行っている事にだ。そして1体の魔物で効率よく長い時間訓練が出来ているようだ。拳の皮が剥けてしまっているのできっと体力が上がっていってるのだろう。
この戦い方でシービショップと戦闘をしたら凄い修行になりそうだ。これを狙ってやっているのかそれとも武器を買うお金が無くて仕方なくやっているのかは分からないが、それが結果、良い方向へと向かっているようだ。
個人で銃の所持が認められている国では中々思いつかない訓練方法だろうな。もちろん銃が悪いと言っている訳ではない。ただ銃で戦闘しても器用が上がるだけなのだ。しかも簡単に敵を倒せてしまうから勘違いしてどんどん先へ行ってしまうことが多々ある。
でも目の前の彼らは全体的に確実に強くなって行っている。下地が出来上がればきっとどんな武器を装備しても深い階層でやっていけることだろう。今後の彼らに期待だな。俺はこっそり金のチェストに格闘術のスキルブックを4冊入れて彼らの前に出現させる。内緒だよ?
それにしても中国はもっとダンジョンを増やしてあげないとダメっぽいな。折角優秀な人材がいてもこのスシ詰め状態では勿体ない。きっとインドも大変なんだろうな。国の人口によって門の数を変えないと大変なことにになりそうだ。
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