第73話 最強パーティ

 それから更に1ヶ月が経った頃、ダンジョン法の中の、一般人もダンジョンに入れるようになるという新法がギガスライムに乗った俺立ち合いの元で衆参両議会で満場一致で可決された。この様子は全世界に配信されていて、きっと世に30億人は居ると言われているダンジョンフリーク(独自調べ)が歓喜の雄叫びを上げたことだろう。


 この間に色々とパフォーマンスをしておいたのが良かったのだろう。キングスライムを連れて某国にある世界最大の核兵器「ツァーリ・ナンチャラ」だか「ナンチャラ・ボンバ」だかをパックンチョさせたりしたから世界にも俺の恐ろしさが伝わっていると思う。その後も色々な国の核爆弾を処分しまくった。


 核兵器などでは俺は殺せんよ?


 ただ、お腹の中で核爆弾が爆発した拍子にキングスライムが膨張し、上に乗っていた俺を凄い勢いで上に押し出した。お陰で倉庫の天井を突き抜けた俺はムチ打ちになってしまったのだが…これは内緒だ。


 ちなみにこの時の事は「魔王バズーカ砲」と呼ばれている。核爆弾を食わせると魔王が飛んでくると噂されている。


 それからやっと日本の政府から迷宮ダンジョン4箇所と更に俺が新しく制作した試練ダンジョンと雫に命名された3箇所を一般人に開放する事になった。ただしダンジョン省の講習を受け、侵入許可ライセンスを貰えた者が入る事を許される。遂にフリーの「探索者」という職種が誕生した。ちなみに俺も「高藤悟」としてこっそりライセンスを取ってきている。


 海外の方でも迷宮ダンジョンと試練ダンジョンは一般人に開放する方向になっている。これは当然俺の圧力に屈したという事に他ならない。そして日本のダンジョン省が指揮をとり、魔石やダンジョン内で取れる素材や薬品の値段を統一してギルドでの買取販売価格を決めていった。


 そして各企業が東京大森林ダンジョン用で開発した武器や装備品も一般探索者用にギルドで販売が開始された。それに伴いギルド内に武器類の預かり用ロッカーが併設された。刃物以外でも武器類は全てギルドより外への持ち出しは禁止となっている。


 そして遂に迷宮ダンジョンの方に最初の一般侵入者が来たのだが…。


「兄ちゃん!この人ってあの人じゃん!」


「あぁ、参ったな…まさかの魔導王が来ちゃうとは…。それに戦乙女と守り人まで…。こりゃあクリア第一号はこのパーティになっちゃうかもなぁ」


「魔導王の魔法はちょっと凄すぎだよね。東京ダンジョンの3層で色々とまた編み出していたしね。それでもS級のボスは倒せるのかな?」


「はっきり言ってこの人一人で倒せちゃうと思うよ?騎士級か準男爵級までは今のままで行けちゃうだろうな。それにこのパーティは全員がジョブ持ちだし総合力ならもっと上の男爵か子爵級まで行けるかな」


 最初のお客さんは一般人とは呼べない一般人が入ってきてしまった。今までの隊服は着ていなく、装備は俺があげた魔導コート以外は変わっているので上野を担当していたトウキン工業を辞めてプロの職業「探索者」になって入ってきたのだろう。メンバーも当時の内の5人だ。1人年上だった人は居ないようだ。


 魔石の値段表を見ると俺が「あの日」と呼ばれている日に人類にプレゼントしたBランクの魔石で1個5000万円の値段がついている。これは税金を引いた値段のようだ。なので5人で組んでいるなら1人1000万となる。Sランクは当然値段未設定。まだ人類は誰も見たことが無い物で、存在すら知らないので当然だ。


「これは面白くなってきたなぁ。こんな展開は想像もしていなかったのだがなぁ。まあ徹底的に遊んで行って貰うとしますかね」


 まあ当然迷宮なのでどんなに有能なパーティでも一気に進む事は出来ないと予想している。だがこの人たちはガンガン進んでいく。


 そして他の迷宮ダンジョンや試練ダンジョンにも続々と探索者が入ってくる。装備はジャージに肘当てや脛当てを嵌め、バイクの半ヘルメットを被った若者たちがグループで入ってくる。Fランクの2cmの魔石は今のところ1個500円だ。能力値を上げながら手軽に狩れる魔物なので今後下がる可能性は高いが今がチャンスではある。


 海外の方では既に無謀にも包丁を握りしめてヤカンの蓋のような盾を持って1層のフロアボスの手前まで進んでいる探索者の姿も見える。これは…いいの?この人の能力でこの装備だと…待っているぞ?


 それにしても探索者の装備に既に格差が見受けられるな。これはしょうがないのだろうが探索者用の装備は値段が張ってしまうからなのだろう。


「よし、雫!俺等も新ダンジョンの方に行ってみようか!」


「わぁいいね!行こう行こう!装備はどうするの?手ぶらじゃ怪しまれちゃうよ?」


「確かにそうだね。それじゃあ俺はロングソードを持っていくよ。雫はこれにする?」


 俺はそう言って短剣を雫に渡す。そして信託の間から試練ダンジョンへとダンジョンコアの化身「リア」に門を繋いでもらい飛んでみる。そこはピクニックをするには持って来いの草原となっていて、遠くには山脈が見えている。


 あの山脈はフェイクであそこには行けないのだ。行けないけどリ・アース上にはちゃんとあの山脈は存在している。それに雰囲気は大事でしょ?すると最初の敵、スライムがムニムニしている。


 基本的に魔物は俺に襲いかかって来ることはない。なんせ彼らを統べるもの「ダンマス」だからね。なのであのスライムは俺に挨拶をしているのだと思う。カワイイ奴め!仲間になりたいのか?


 ちょっと先には探索者のパーティが芋虫を囲んで木刀や模造刀、サバイバルナイフなどで殴ったり突いたりしている。装備はチグハグだが皆楽しそうだな。いいじゃないの!


 俺と雫はユックリと奥に進んでいく。そして15km程進んだ先にある2層へ降りる階段の前に居る。そこにはそこそこ大きな小屋があり、この中にフロアボスが待機している。コイツを倒さないと2層へは降りられないようになっている。


 そしてパーティが入って1分経つと扉が閉まり、中の人がボスを倒すか倒されるかすると扉が開く仕組みになっている。これは簡易バトルエリアというシステムらしい。今は誰も入っていないので扉が開いている。折角だから誰か入るまでこっそり見ていよう。


 ちなみにこのダンジョンの名前の由来でもある試練とはここのダンジョンのリポップが1時間ごとになっているので倒しても倒しても湧き続ける事から来ているらしい。


 今日はここまでは来ないかもしれないな…。と思っていたらアメフトのプロテクターのようなの物を装着した団体が近づいてきた。数は8人。警棒や木刀、ナタやナイフを握っている。そしてどうやらフロアボスに挑むようだ。


 俺と雫はダンマス用の黒い珠で中の様子を見ている。ボスはEランクのゴブリンが一体。片手で持てる斧と木の盾を装備している。


 きっとこのフロアで最初の人型モンスターとなるであろう。ここを乗り越えられるかどうかも試練の1つだ。まあ彼らなら平気そうだけどね。だってノリノリだったから。


 


 



 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る