第四章
第72話 その後
リ・アース、エデンの里。
その里の一番立派な建物。地球で言うところの大聖堂の建物の中に最重要エリア「信託の間」がある。普段は誰も入ってこないその部屋の更に奥にあるダンジョンコアルームにて。
「しずく〜!ここをこうしたら雫だったらどうなると思う?」
「それやっちゃうともう誰も入って来なくなっちゃうんじゃない?それよりもここをこうしてさゴニョゴニョ」
俺と雫は大学の冬休みを利用してガッツリダンジョン三昧生活を送りながら、色々と新要素を追加したりしている。
その甲斐もあり重大発表から1ヶ月、ダンジョンは今や20の国に門が存在している。
今リ・アースにはかなり広大な森林が存在している。と言ってもリ・アースを直径1mの球体で見てみると地表にほんの20cm程にしかならない。それでもかなり広大にはなってきている。
全体で見たらまだまだが、この大森林は地球の東京大森林ダンジョンで言うところの1層目だ。そしてその大森林の周りを2層目の草藪が囲んでいる。その草藪を囲うように3層目の山脈があり、その先が海になっている。この場所はエデンの里の真反対に位置し、大陸も繋がっていない。そしてたとえ海を渡ってきたとしてもリ・アースの住人には山を越えることは不可能となっていてある意味立入禁止エリアとなっている。
海の手前まで入れると30cm程にはなる。そしてその先も作ったのだが今の所出番は来ていない。それは現在、日本では既に3層の各所に散らばらせた設計図を4社とも集め終わってしまい、奥に進む事は止めて魔石集めに勤しんでいしまっているからだ。
それはそれでしょうがないことだと思っている。なので迷宮ダンジョンの方で魂の回収をしなければならないのだ。
迷宮ダンジョンは雫が担当で結局60面で制作は止まったのだが、深さが当初は6層だったのが現在は9層に達している。元々は6層にボスが居たのだが、そこには中ボスを配置し、9層にSランクのボスが居る。そして狩りダンジョン(仮)は廃止し、通常のダンジョンに変えた。ただ全迷宮でのレアモンスターの湧く確率を変更することが出来たのでそれで対応した。
迷路1面の大きさは縦横9km、それを3km四方に分割して東京の地下に階層分けして重ねて9層になっている。これは東京地下の掌握したエリアの余った場所で始めてしまったダンジョンだからだこうなっている。
そしてリ・アース上にはそれが60面も重なっているのだ。その迷路1面の高さが3m。それだけで高さは200m弱になる。これが全20ヵ国分。全部を重ねたら高さ3.6kmにもなってしまう。リ・アース上では立入禁止エリアには入らなかったのでエデンの里のある大陸に国ごとに纏めて並べて蓋をし、土を被せて小高い丘のようなものを作ってある状態だ。
迷宮ダンジョンの方は一般人が入れるようにダンジョンマスターとしてギガスライムに乗り各国政府に出向いて掛け合った。そしてダンジョン省の新法の原案制作にも立ち会っている状態だ。なのでまだ法の整備が整っておらず侵入者は居ない。
それならとついでに新たなダンジョンを作って新たなダンジョン法に組み込んでもらおうと考えている。そして俺が今作っているフィールド型のようなダンジョンをこれからは増やしていこうと思っている。
まあ結局、一般人と言っても本当に誰でも入れるようにするわけには行かないらしくライセンス制にするようだ。それは当然か。
そしてダンジョン省出張所(通称ダンジョンギルド)でダンジョンで取れる魔石や素材の買い取り、そして装備品や薬品、スキルや魔法をギルドで買い取った物を販売していくことになる。ウェブサイトでの個人販売は禁止になるようだ。だが今後はギルド主催のオークション形式の取引も行えるようにするようだ。
とりあえず新ダンジョンは1層だけ作ってどんどん門を出現させていっている。どうせすぐには入ってこないのだから1層だけあれば十分かと思ったのだが…。
これがなかなか捗っていない。俺的にはリ・アースの事もあるのでやはりフィールド型のダンジョンにしてそこで戦闘をしてもらいたいと思っている。だがずっと進化した探索者を見てきていたので基準を彼らに合わせてしまう。なので俺の感覚で作ると難易度が高くなってしまう。
このフィールドダンジョンは最初の東京ダンジョンに比べて広さは1/5程になっているが入ってこれる門は1箇所になっている。そして階層ごとにフロアボスを配置してある。このボスはしっかり各階層を進んだ者なら何とか倒せる強さになっているのだが、レアボスモンスターがポップする設定にしようとして雫に怒られているところだ。
そして世界では現在、日本以外の各国用にコピーした東京大森林ダンジョン用の転送門を4つずつ作り、東西南北から1つのダンジョンに入れるようになっている。そして迷宮ダンジョン用も4つ作ってある。そこら辺は日本と同じだ。まだまだ地下には余裕が有るからどんどんと深くなっていっている。
その20カ国の中でもかなりの速さで進んでいる赤い2カ国がある。その国は24時間体制で少なくない犠牲を出しながらも猛進して来ている。
片方は高火力の火器類の充実と技術力で。もう片方はそこそこの火器類ながら物量に物を言わせてどんどん奥へ進んでくる。そして最初の試練となりそうな巣や集落で残念ながらかなりの犠牲を出してしまっている。
やはり森林エリアでの視界の悪さと、ランクの上の魔物に対応出来ず、そしてまだまだ能力値が足りていないのに進んで来てしまった弊害もあるのだろう。全然手が出ずに、かなりの人数が殺され食われてしまっていた。
魔物は人間を食うと魔石に血肉を蓄えて進化してしまう。魔石が大きくなればランクが高くなり、当然能力値も上がってしまう。なので巣や集落を回避して先に進んだようだったが結局中層域の敵にも歯が立たずに犠牲を出し、逃げ帰って行った。
それでもダンジョン内で火器類やサバイバル道具の入ったバックパックを持って動いているだけでも能力は上がっていくので、生き残った部隊で日数を掛けて作戦を立て、各巣を討伐しスキルと魔法を覚えてから中層域に入っていった。赤い国は無茶をする…。
それ以外の国は比較的慎重ではあるがやはり出遅れまいという焦りはあるように見える。そしてわざわざダンジョンの中で訓練をしている国は無い。火器に物を言わせて進むという国ばかりだ。これも俺の予想通りといったところだね。
それでも現代火器で進めるのは中層域のシーモンクまでだった。ここは軽機関銃により討伐はできたのだが、流石にボスのシービショップは無理だった。サメ型のボスのことだ。元々の硬い皮膚に、更に身体強化を使い回復魔法まで使う。そして特大のハイドロボールを撒き散らすボスに撤退を余儀なくされて引き換えしていった。ここでもかなりの魂の回収が出来た。
迷宮ダンジョンの方にも各国の軍隊が侵入してきている。日本の探索動画が出回っているので海外の部隊は行動が早い。初日に入った迷宮内で寝食をしながら進んで行っている。
日本からの情報提供が有ったのか1分起きにランダムで転送されるダンジョンが変わることを知っているようで、10人一組あたりで入っている国が多い。
この迷宮ダンジョンは1、2層はF〜Eの敵しか出ないので慌てずに進めば問題ないのだが、敵が弱いとどうしても進みたくなってしまうようで2日目辺りに3層〜4層でレアモンスターのリポップに出くわし全滅した部隊も多数居た。流石にDランクの敵はシービショップクラスなので軽機関銃は通用しないようだった。
それでも1ヶ月が経った今はかなり安定して攻略を進めているようだ。レアモンスターに対しては流石に犠牲は出ているがそれでも死亡者は減っている。
そしてチェストの罠には掛かったり掛からなかったり。最初は毒で死亡する人は居たのだが、その中に入っているキュアの魔法スクロールのお陰で今では死亡率はほぼ0だ。このトラップは元々オマケみたいなものだったので良いのさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます