第70話 邪魔者退治
翌日金曜日。俺達は2層の亀の里手前のレアモンスターの様子を見に来ている。一目見れば分かるほど身体のサイズが大きい。そしてツルリとしたタイプでゾウガメを人型にしたようで手足がとても太く、膂力のありそうな見た目の亀だ。
そして当然とても硬そうな甲羅を身に纏い、頭には金属製の兜を被っている。武器は超大型のノコギリの様なトゲだらけの大剣を担いでいる。確かエマヌエルの剣と言ったか。
マジあんな武器の攻撃など盾で防いだらどうなってしまうのだ?最強の矛と盾の力比べみたいなイメージだが。トゲトゲが潰れるか盾に穴が開くか。
「ヒサとキム、あの攻撃受けてみたいとか思っていないだろうな?」
案外1班のメイン盾であるヒサは脳みそが筋肉な俗に言う脳筋なので敵の攻撃を受けてみて敵の強さを測る変な癖があるのだが今回は流石に危険極まりない。
「いや、流石にあれは1ミリも受けたいとは思わないぜ。何なら全部避けてやりたいくらいだよ」
何とここでヒサが回避盾宣言。まああの武器ではなぁ。盾が壊れなかったとしても引っ掛けられて防ぎ辛そうだしな。それにあの太い腕だよな。攻撃を盾で防いでも俺なら腕ごと持っていかれそうだけれども…。
動きはゾウガメだからと油断はしない方が良いだろうな。どうせ速いのだろうし。もう少しで後続も集まるのでそうなったら戦闘開始だ。いつまでもアイツを放置しておく訳にはいかない。なんせ邪魔な奴なのだ。アイツのせいで里に近づけないのだから。
それに前回新ダンジョンで湧いたチビオークは倒したらチェストを出してその中にバトルエリアの珠が入っていたのだ。
奴はDランク相当の敵だったからDランクトリガーだったとしたら、このゾウガメの奴はCランクの亀のレアポップなのでBランク相当の強さだと想定している。そしてそうなるとBランクのトリガーを出すかもな。楽しみでしょうがない。
アキのハルバードもどうやら100%能力を引き出せる様になったと言っていた事だし、我々はあのレアモンスターと渡り合えるはずだ。最悪は俺の奥の手「暗黒」を使う。でも出来れば皆で討伐したいと俺は思っているのだが。
そしてあれ以来出ていない「進化の薬」。次に使用するのはメイン盾のヒサと決まっている。この亀を倒してチェストから出たら良いのだけどな。とフラグを立てておく。
前衛がジョブ持ちになれば先に進むにも楽になるだろう。俺とヒサに魔石武器持ちのアキでも居れば先に進めると思うのだがまあ俺が言った所でどうにもならない。それにまずはあのゾウガメが倒せないようでは先など在りはしない。
暫く待っていると魚人組が合流したのでいよいよ始める。まずは各班の強化持ちがパーティメンバーを強化していく。その後盾役のヒサとキムが前に出て敵の注意を引く。その間にスキル「狙い撃ち」持ち5名が弓で遠隔攻撃を始める。
すると亀は頭を甲羅に収納して放たれた矢は甲羅に弾かれて地面に落ちる。あの甲羅は今までで一番堅いな。
すると亀が動き出す。のっそりとずっしりと…。遅い。すると亀が口をクワっと開いた。そして口からレーザーのように高水圧の水を吐き出してきた。
回避盾宣言をしていたヒサも流石に躱せない。すると盾に当たる直前に角度を変えて上にそらす。おぉー、これは高等技術だよな。
更に亀が大剣を大きく振りかぶった。まだ盾役とは5mほど離れているのに何をする気だ?そしてその場で凄い速さで大剣を振り抜く。するとヒサとキムが盾ごと弾き飛ばされ、後退りさせられる。
風圧か?それともまさか斬撃を飛ばした?何かのスキルか?ハンパねーな!そこへ今度はアタッカー達が近接戦を始める。
亀は頭を甲羅の中に隠す。その甲羅の上から斬りつけたのだが剣では傷一つ付かないようだ。アキのハルバードやタケのトゲトゲ棍棒のような衝撃を内側に伝えられる武器は効果が有りそうだ。なので皆武器をトゲトゲ棍棒に持ち替えている。
すると亀が手に持っている大剣を振りかぶる。それを見たアタッカーは一斉に距離を取り、盾役の影に隠れる。そこへまた斬撃だか風圧だか分からないが何かが盾役をまた弾き飛ばす。
そろそろ後衛も参加しないと危険かもな。俺はアキに合図を送る。
「魔法行くよ!タンク下がって!」
タンクが下がったタイミングで俺達はF-バーストを一斉に撃ち出す。この魔法は火炎と爆発でダメージを与えるため、甲羅に隠れてもダメージを与えられるはずである。
だが気配感知と超音波のスキル持ちの俺には、爆発の煙幕の中に立っている亀が見えている。感知スキル持ちの何人かはまだ生きていることに気付いているが、持っていない人間は終わったと思って気が緩んでしまう。
「まだ終わってないぞ!奴はまだ生きている!」
俺は皆に喝を入れ、フリーズと蜘蛛の糸を亀に向かって放つ。その間にタンクがヘイトを一身に引き受けてくれる。煙が晴れて姿を現す亀は流石に無傷ではいない。だが甲羅には傷一つついていない。どんな強度なのだ…。
こうなるとアタッカーの出番はなさそうだ。甲羅に隠れられたらダメージを与えられない為下がっていてもらう。
俺はライトニングランスを使う。この魔法なら貫通もするし触れれば敵は痺れるし火傷するしでダメージを与えるなら非常に使い勝手が良い。
雷槍が亀の頭が収まっている甲羅の穴を直撃する。すると亀は苦しそうに悲鳴を上げてのたうち回る。そこへ皆でもう一回F-バーストを一斉に撃つ。
俺のスキルで煙幕の中で魔石に変わったのが分かった。そして俺の「賢さ」が今の一戦で100を超えた。これでもしやあの複合魔法が使えるようになったのではないか?まあまだ使わないでおこう。
まだ4属性のランスは十分に通用している。ここで新たな魔法を編み出して使用回数1回とかになってしまい、今の魔法が消えてしまったら目も当てられない。
それよりも今大事なことはレアモンスターの戦利品の方だ。もう既に皆が盛り上がっている。今出た魔石を俺も見せてもらうと大きさは20cm弱だった。やはりBランクの魔物だったようだ。そしてやはり銀色のチェストが出ている。
ひょっとしたらトラップがあるかもしれないのでしっかりと準備をした盾役のヒサが盾を構えて開ける。特に何事も無く蓋が開いて中身が見える。明らかに輝いている何かが入っている。
まあ慌てない。まず先程亀が持っていた大剣、これは魔石武器だ。そしてスキルブック、これがなんと先程斬撃を飛ばしていたスキル「エアリアルスラッシュ」だと思われる。
そして先程から輝きまくっているのは「進化の薬」だ。これで盾役のヒサがジョブ持ちに成れる。
最後にチェストの中から黒い珠が。文字はBだ。
よっしゃ!
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