第66話 新ダンジョン5層

 我々はミーティングルームにて本日のCランクバトルエリアのキーアイテムを報告した。俺はまだDランクの珠も持っている。こっちはしばらくしたら2期に使って貰っても良いかもな。まあすぐに侵入許可は降りないだろうけど。



 翌日土曜日深夜0時。


 魔王の新たな動画が投稿された。それは2箇所の新ダンジョンの探索姿だった。俺は自分の方より、宮城の新ダンジョンが気になっていたのだ。


 あちらもどうやら迷宮になっている。そして敵も福岡と同じようだ。そして行き止まりに当たりまくっている。これも俺らと一緒だ。可哀想に…。


 そしてチェストが眼の前に映っているのだが開けるシーンはカットされていた。まあ見せられないよなぁ。でもチェストが有るのをしっかりと映す所がダンマスの性格を物語っている。


 これで探索者を目指す者は釣られてしまうのだろう。木のチェストでさえ俺は嬉しくなったのだから。そして初歩的な魔物。これで世間は一気に騒ぎ立てる事であろう。ダンジョンに入らせろと。


 まあ俺は知らん。どうせ朝のワイドショーはこの話で持ち切りになるのだろう…。



 翌朝。食堂には既にテレビがついていて皆が画面に釘付けになっている。食堂に入ってきた俺に気づいたタケが手招きをしているので飯を取って席につく。


 テレビには俺とキョウが一緒に調査している姿が映っている。あ〜そうか。世間ではコッチのほうが盛り上がるのか、魔導王と剣姫の居るパーティが…。


 キョウの素顔を知っている他社の人間は少ないだろう。ウチの探索部でも元1班のアキとヒサ、そしてタケと有馬部長位だ。探索中は黒いシールドのついたヘルメットを被っているので素顔は見えない。


 五ツ星で張り込んでいても探索部の最高責任者が剣姫だとは誰も思うまい。そして最高責任者としての五ツ星京香の美しさには誰も触れない。


 これは相手が五ツ星重工業だからというのもあるだろうが、探索姿では素顔が見えない剣姫だから想像が膨らんで話題になってしまうのだろう。


 そしてまた抗議デモが起きているようだ。プラカードには「ダンジョンに入らせろ」と書いてある。まあ入りたいよな。俺も入りたかったもんな。でも俺には危険な流れが出来上がって来ている予感がしている。


 人類を滅ぼすつもりなのか、それとも養分とする為なのかは分からないが、どうやらダンマスはダンジョン内で人類を殺したいようなのだ。


 今回の新ダンジョンでその気配を感じたのはチェスト位だったのだが、何か違和感を感じる。あの日替わりで道が変わるのにも何かあるのだろうし、道が変わるときに中に人がいたらどうなってしまうのか。


 次回の調査で入るダンジョンがどんなだかは分からないが、横芝と富見通の調査内容を見ると同じだった様に見えた。


 なら次回の新ダンジョン調査が同じ様な迷宮ダンジョンだったら調べてみるか?多分0時で変わるのだろうから、俺だけでもダンジョンに残って調べてみたい物だ。夕飯を食べてから入り直しても良いかもな。その時に何時間でリポップするのかも調べられるかもしれないな。


 何だかあんなに気が重かった新ダンジョンの調査が待ち遠しくなってきている。


 その日は昼食を取りに外に出ただけで、ほとんどの時間を寮で過ごした。2期のメンバーとも大分打ち解けていて、色々な相談を受けるようになっていた。


 そして2期で今1番興味が有ることはやはり剣姫の素顔だった。これは流石に教えられない。プライバシーだからなぁ。皆も残念そうにするが断られるのは分かっているだろうに。


 それからは新ダンジョンの細かい事を聞いてくるのでそれに答えながらその日は過ごした。明日の夕方には新幹線で大阪だ。



 月曜日の朝8:00。俺達は転送門の前で五ツ星と一緒に集合している。どうやら大阪は役所とその近くにあるフラワーパークのような場所の中間に転送門は現れたようだ。


 門の前でダンジョン省の職員と打ち合わせを行う。俺は今日の夜にもまたダンジョンに入らせてもらえるように理由を説明して頼んでおいた。それから各自準備運動をしてから転送門に入っていく。


 中はやはり福岡と同じ迷宮型だ。ということはまた道が変わる可能性がある。一応脳内ではマッピングをするが、今日以外は役に立たない。


 今日は最初から結構なペースで進んでいく。とはいえ上野ダンジョンの1層で進むほどの速さではない。なんせここのダンジョンは迷宮型なので先が見えない。なのでいまいちスピードが出せない。そして雑魚を倒したら出る魔石の回収。これも一瞬スピードが落ちる。


 別にこのダンジョンをクリアーするために入っている訳では無いのだが、進みたい気持ちもよく分かる。夜まで進めば5〜6層は行けそうだけど物資を持ってきていないのでそこまでやるつもりはない。でもいつかは誰かがダンジョン内に泊りがけで攻略するのだろう。


 まだスキル超音波を使っていないのに1時間と少しで2層への階段を発見した。俺らは迷わずに2層へと降りた。出る敵も福岡と全く変わらない。その後もどんどん進み、この日は5層に降りる階段を見つけたので降りてみる事にする。


 俺らが最初に決めた残り時間は1時間。5層の敵の強さを調べたら帰ろう。超音波を使うと敵の1団を発見する。4体纏まっている。


 俺達は慎重に進む。角を曲がると3mほど先に、敵の1団が居るのがみえる。先頭にサメが槍と盾を構えて戦闘態勢になっている。それをホブゴブリンのおそらくは戦士2体が守るように立っている。それに後衛が1体いる。


 中々珍しい組み合わせだ。普通ならナイトタイプのホブゴブリンが居るのだが。サメは気配感知スキルを持っているので既にこちらには気づいていた。そして盾と槍を構えて先頭に立っているが、このサメはヒーラーも兼ねている。というかこのサメは実はパラディンだったのでは?


 それでも俺達の敵ではない。俺はキョウとタケに強化を掛けてから戦闘が始まる。サメも自分ではなく戦士2体に強化を掛けた様で戦士が突撃してくる。そこにサメのハイドロボールと後衛の魔法が飛んでくる。


 中々強力な連携だ。マサが盾を構えて戦士1体にタックルをかまし、特大の水球をキョウが斬り捨てた。すげー!あんなことが出来ちゃうのか。


 そしてタケが特大棍棒で残りの戦士と撃ち合っている。こちらも余裕そうだ。


 俺は後衛のホブとサメを目掛けてライトニングランスを一発撃つ。凄まじい雷鳴が轟く。賢さ100手前の俺の魔法の威力は桁が違う。


 5メートル程の長さの雷槍が敵を2体同時に貫く。角度を合わせれば一発で2体同時に倒せる。流石にこれは躱せなかったようだ。実はこれ亀の里で練習したのだ。そして2体同時に魔石になった。


 他のメンバーも倒し終わったようだ。そして五ツ星二人の俺を見る視線が…。


 


 




 




 






 

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