第64話 調査二日目

 翌日朝8:00。俺とタケはダンジョンの入口に居る。これから五ツ星の二人と合流し、ダンジョン省の職員とミーティングをしてから準備運動をして8:30分になり門を通る。


 1層に転送されて探索を開始する。今日は一直線に3層を目指してからが本当のスタートだ。


 昨日書き写した地図を見ながら3本有る通路の真ん中を進み最初の角を曲がる。するとそこには有るはずのない壁が建っていた。


「あら?おかしいわね。確かこちらの道であっていますよわよね?イソの地図にもこちらとなっていますし」


 あぁ、俺の脳内マップにもこの道で合っている事になっている。どうなっているんだ?全員の記憶がイカれてしまったわけでは無いのなら、可能性は一つしかない。俺は最悪の答えを言う。


「道が変わっている?」


 皆を見回すと、皆頷いている。どうやら間違い無いようだ。こんな事って…あっていいの?また最初からマッピングのやり直しだ。というかもうマップは役に立たないと言うことか。でも帰り用で覚えておかなければ。


 これは面倒くさいな…。こんなダンジョンどうすれば良いのだ?泊まり込みで進むのか?あ〜!それで安全地帯があるとか?そういう事か。


 探索可能な階層に籠もって魔石を集めるのか?それで数時間でまた湧いたのを倒す。その位しか俺には想像が出来ないのだが。


 俺らはあくまでも調査隊なのでそんな事を考えていてもしょうがない。とりあえずは進むしかないのだ。昨日と同じ様にキョウを先頭に進んでいく。


 敵は本当に雑魚なのに…迷路にハマって中々進めない…。マジでこの壁を吹き飛ばしてしまいたい…。やってみるか?


 とは言っても、ゴールの方向すらわからないこの迷路の、眼の前のこの壁を壊したところで近道になるのかさえ分からない。


 俺らは大人しく進む事にする。道に迷いながら…。ただ今日はキョウが最初からトバしている。イライラのピークを超えてキレちゃったか?まあ普通に付いては行けるがかなり速いペースだ。


 多分気配感知すら使っていない感がある。それでもなんの抵抗もなくどんどん進んでいく。俺は全然このペースで良いと思う。実は俺もキレそうだったから。


 それでも3層へ降る階段に到達したのは昼前まで掛かってしまった。地図さえ使えれば1時間で到達出来る予定だった。全く…とんでも無い迷宮だ。


 階段で昼食を取り、少し休み、隅っこでトイレを済ませてから3層の探索を始める。敵は5cm大の魔石を落とす80cm位のスライムやオーク、魚人のツナ、狼や猪が出てくる。こいつらはウチの推測ではEランクの敵という扱いになっている。


 そしてこいつらは魔石の他にスキルブック、魔法スクロールと素材も落とす。ある意味素材が1番厄介だ。何せ調査だから一応素材を持ち帰らなければならないからだ。


 まあそれでもまだ雑魚だ。雑魚なのだが少しだけ敵の密度が上がって、しかも2体纏まっている時もある。そしてまた魔物の溜まり場らしき一画がある。


 そこには小部屋になっていてEランクのスライムが10体居る。一般的にスライムは近接では無く遠隔か魔法が良いのだ。強酸を吐き出したり、触手を伸ばしたりするからだ。


 だがキョウには関係無いようだ。剣を抜いて一直線に飛び出していく。そして凄まじい速さで剣を振るい、スライムを魔石とゼリーに変えていく。酸を吐かれても半身になってかわしている。当然俺らの出番はない。


 そして倒し終わった部屋には鉄のチェストがある。流石にトラップはないよな?またマサが開けてくれるようだ。今回はヘルメットのシールドを下ろして盾も構えている。


 そして剣で蓋を開ける。するとカチっと音がして爆発する。直径3m位は爆発したと思う。しかしマサはしっかりと構えて居たので無傷だ。そもそも俺でさえ体力の能力値が40近くになっている。多分メインタンクの人は60を余裕で超えていると思う。


 体力は耐久にも通ずるので、高ければ高いほどダメージを受けづらくなるのだ。なので今ぐらいの爆発だと基本は無傷だ。爆発で破片が飛んでくると切り傷位は付くこともあるが。


 しかし一般人はそうもいかない。普通の人で能力値は10位だ。よっぽど格闘技などで鍛えている人でも凄くて15。そして案外体力は上がりづらい能力でもある。タンク以外だとある一定を超えると中々上がらない。


 そんな一般人が今の爆発に巻き込まれてしまったら…。まあ今は3層なので一般人は到達出来ないと思うが、これが1層だったとしたら…考えるだけでも恐ろしい。


 ヒールで怪我は治せるが、欠損は治らない。爆風で腕でも失ったら前衛は続けられないだろう。困った迷宮だ…。


 あんな程度の爆発では傷一つつかないチェスト。俺の2発F-バーストでさえ傷がつかない程だ。中身も無傷であろう。


 マサが中からスキル「超音波」を取り出した。これは…。今俺たちに絶対に必要なスキルだ。これは是非欲しい。


 前の班のメンバーだったヤマが持っていたスキルだ。このスキルは地形も分かる。俺の持っている気配感知はあくまでも敵の配置が分かるだけだ。


 そしてなんとキョウが前回のキュアの代わりにこれをウチにくれると言う。このスキルの有用性を知らないのか?まあくれると言うなら貰うけどね。


 そしてタケにお願いして俺が使えることに。やったぜ!1日に15回使えるようだ。早速使ってみると…なるほど。俺の脳内に迷路の形が3Dポリゴンのように浮かび上がる。縦横に等高線の様なものが引いてあり、凹凸もわかりやすい。そして感知範囲は半径100mだ。これは難しい…。かなり脳を使うかもな。そして今いる場所から繋がっている道だけが表示される。


 だが暫く超音波が出続けて居るようで、何秒かおきに脳内地図が更新されていく。なんて有用なスキルなのだ。


 とりあえずは100mまでに行き止まりにならない道が2本あるが、そのうちの1本を進むことにする。ここは単なる勘だ。それでもハズレの道何本かは潰せたので有り難い。


 道中は気配感知を任せて、俺は超音波を使って脳内マッピングに集中している。すると器用の能力が上がった。凄く有り難い。このスキルは器用と賢さが上がるようだ。


 そしてしばらくすると3層から4層に降りる階段を見つけた。帰る時間も考えると残りは30分位だ。なのでせめてどんな敵が出るのかだけでも見てから帰ろうという話になった。どうせ道順は明日には変わってしまうのだ。


 4層の敵は3層と変わらなかった。ただ3体が纏まって一緒にいる事がある。俺らにとっては好都合だ。3体纏めてキョウが切り捨てる。


 魔石と素材などを集めて帰路につく。俺はマッピングが出来てるから真っ直ぐに帰れるが帰れなくなってしまう人が出てくるかも知れないな。そこも報告しておかないとな。


 はぁ〜。また明日も1層から迷いながら来ることになるのか。はっきり言って憂鬱だ。


 こんな調査に3日もいらない気がする。どうせ1日で進める距離など変わらないのだ。今日4層まで行けたからと明日は5層とはならないだろう。


 今日4層なら明日も4層だ。下手したら迷いまくって3層かもしれない。何が言いたいかと言うと早く上野に帰りたいという事だ。


 


 

 


 


 




 


 


 


 

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