第61話 新ダンジョン
それからの世間の反応は凄かった。ダンマスはやはり人間の味方だという意見が圧倒的に増え、ダンジョン省にデモ隊が集まり、「ダンジョンに入らせろ」というスローガンのもと、若者を中心に大声を上げていた。
ダンマスは本当に人間の味方なのか?俺はそうは思わない。バトルエリアなどの敵を見れば誰でもわかる。あれは人間を殺してどうにかしているに違いない。
今回も眼の前に餌をぶら下げて、ダンジョンに押し掛けるように誘導されている節があるのだが…。俺の考え過ぎかもしれないか。
Cランクに入ったのはこちらのミスからだし、現に五ツ星のチームは無事に討伐出来ていたわけだしな。ホントに地球の将来を悲観してくれているのかもしれない。それで魔石というクリーンエネルギーを取らせてくれているのだろう。そう思っておく方が幸せだ。
そして俺にとって最悪な自体となってしまった事がある。それは動画の姿から俺の正体が割れてしまったことだ。
トウキンの探索者ということは前からバレていたのだけど、今回は人類最初のジョブ持ちということで、取材やインタビューなどの問い合わせがすごい量来ているそうだ。
会社からギルドまでの50m位の道中にも報道陣が待機している始末だ。外ではスキルや魔法は発動しないのだが、ダンジョンで上がった能力は外でも変わらない。なので報道陣を無下に扱うと大怪我をさせてしまう恐れがある。
なのでトウキンの職員と一緒に通うことになった。俺は別に囲まれても構わないのだが、答えようが無い質問が多くて呆れてしまっただけなのだ。
そして今回の動画でダンマスが乗っていたスライムの正体が分かった。「あの日」乗っていたスライムはメガスライムというらしい。そして今回のスライムはギガスライムでランクとしては上から三番目。その上にテラがいてキングとなるらしい。
そしてキングスライムは魔王級という位置づけで、それを制作できるダンマスは神級となるようだ。でも自分で動画アカウントを魔王としているのは通り名のようなものなのか?世間がダンマスのことを最初から魔王と呼んでいたからな。わざわざ自分から神級と言うくらいだから嫌だったのかもな。
そしてあの時ダンマスが言っていたモンスターダンジョンが沢山出現するという話しだったが、まだ現れてはいない。そして俺がこれから調査に入るダンジョンはまだ誰も立ち入っていないまっさらな状態のようだ。
世間ではもっと簡単に入れる制度を作れと騒いでいるが、その騒いでいる奴らは本当に死ぬ覚悟が出来ているのか?遊び半分で入りたいやつと、遊び半分で騒ぎたい奴なだけな気がする。
動画ではグロシーンはカットされているので実際がどんだけ修羅場なのかは分からないのだろう。
俺らが簡単に倒しているように見えてしまうのも問題なのかも知れないな。でも俺らだって初めて入るまでに1年以上はプロと一緒に訓練していたのだが、騒いでいる奴らにはそんなのは関係ないのだろう。
そんなで一週間が経ち、俺らは昨日から福岡は博多にやってきている。そして今日から3日間新ダンジョンの調査に入る事になっているのだ。
ダンジョンの門は博多駅近くの何かの跡地の端っこに現れた。その周りにはテントが張られダンジョン省の職員が出張してきていて、簡易的にギルドの業務が出来るようになっている。
そして門から半径100mは規制線が引かれていて一般の人の立ち入りが制限されている。
朝の8:00。その規制の中に俺らは案内され、門の前で五ツ星の二人と合流する。
探索中はコードネームで呼び合うため、こっちはイソとタケ。向こうはキョウとマサと呼び合うことになっている。
「あら、イソ。人類初のジョブ持ち、おめでとう御座います。どんなジョブに就いたのだか。そのコートがダンジョンマスターからのプレゼントですか?どんな性能だか楽しみにしていますわね」
「これはこれは。てっきりキョウの方が先にジョブ持ちになっていると思っていたよ。まさか俺が最初だとは。俺らトウキンより先に進んでいた各社は何をやっていたんだか」
俺の返しに歯ぎしりをしながら睨んでくる五ツ星京香。多分だけど負けるということに慣れていない人間なのだろう。
その後、緊張したタケと、いつも元気なマサに挨拶をしてからダンジョン省の職員とミーティングをしてから準備運動をし、朝8:30。我々は新ダンジョンに入っていく。
こうやってキョウとマサとパーティーを組んでみるとなんと心強い仲間なんだろう。ウチの班長のサトも強者のオーラが出ているが、マサがそれに匹敵すると思う。そしてキョウはそれ以上。別格かもしれないな。
新ダンジョンの中は、俺は行ったことはないけどピラミッドの回廊と同じような石造りになっている。道幅は3m程で天井までも3m。そして薄っすらと壁が光を発している。
この狭さだと魔法をぶっ放す訳には行かないな。爆風で自分たちが巻き込まれてしまう。なので基本は近接で、必要なら低級の魔法で片付けて行こう。
最初の敵は定番のスライム。それから角ウサギ、イモムシ、まるでゲームのようだ。そして人型のモンスターのゴブリン。俺らはもう何の抵抗もないが、人型を殺すときは緊張する人も居るだろうな。
出る魔石も東京ダンジョンと変わらず2cm大。これはどんどん進んで行けそうだ。
その後も出てくるモンスターが俺たちを止められる筈もなく、一閃でただただ魔石に変わっていくだけだ。
1時間後。俺達は行き止まりに来てしまった。そういうことか。これは迷路になっていたのか。全く何も考えずにここまで進んでしまったが…。
あぁ平気だ。ここまで何気なく適当に曲がっていただけだったのだが、何回曲がってここまで来たのかはっきりと覚えていた。これが賢さ合計95の凄さか。
その後も進んでは戻ってを繰り返しながらもなんか変な石像のある部屋に辿り着いた。
気配感知を使いながら近づいていくが、よく見るとスライムに乗っているダンマスの石像だった。これになんの意味が?
ただこの部屋は敵が出て来ない安全なスペースなのかもしれない。とはいえまだ入って2時間も経っていないので先に進む。どうせ倒した敵は今日1日湧かないのだ。どこも安全地帯のようなものだ。
その後、また進むと魔物の気配が10体位ある一画を発見する。皆も気づいた様でそちらに向かってみることにする。
そこは小部屋になっていて、ゴブリンが10体ほどいる。これ俺らの強さと気配感知があるから良いけど、ダンジョン素人がいきなりここに来てしまったら…。
やはりダンマスは人類を殺しに来ている?俺にはそうとしか思えないのだけどな。
まあこれからはっきりしてくると思うのだが、ダンマスが敵となったとしても俺たちに抗う術は有るのだろうか…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます