第55話 あの日のアイツ
スキルブックは3チームで分け合うので当然今回は貰えない班が出る。こういうときは次の優先権利が貰える。まあ次に何が出るかは分からないのだけど。
とりあえずウチの班はリーダーのサトの引きの強さから一番権利を獲得した。そして俺の強い希望から「隠密」のスキルを獲得し俺が貰うことができた。偵察の重要性は皆周知なので反対は無かった。
ただ、狙い撃ちのスキルも喉から手が出るほど欲しいよね。まあ、そのうちまた機会があるかな。毎日通う訳だしね。
ここで一旦ギルドに帰り、甲羅とムカデの背板と顎を置いてから、会社でドローンを取ってまた2層の出口に飛ぶ。なんだかんだで、まだ門から100mも進んでいない。
それなのに既に8体の敵を倒しているのだからこの先が思いやられる。でも1度倒してしまえば今日はもう湧かないので安心だ。
皆がドローンを飛ばしている間に俺は早速偵察に行くと言って隠密を使ってみる。これは器用と素早さが上がるようだ。
そして使っても自分ではどうなっているのか分からないのだが、皆の前からは消えたようだ。へぇこれは面白いな。もしやヤマはこのスキルで変な事してたんじゃないだろうか?イタズラとか。
いやアイツはそんな事をする奴ではないか。当然俺もだけどな。でもこれ、効果が切れても自分では気付かないな。効果時間を知っておかないと危ないスキルでもあるわけだ。
でも大抵、攻撃しようとすると突然現れていたよな。ヤマでさえそうだった気がする。
ということは敵対行動か、攻撃のモーションに入ると効果が切れる?そんな事を考えながら俺は2層の草藪の中を駆け回っている。と言ってもかなり移動しづらく、まともには進めない。するとさっきの所から200m進んだ所で、俺の感知に敵影が映る。
敵はゆっくりと移動している。俺は一旦戻って報告する。皆もドローンで周囲を確認している。ただこの層は何処から狙われるか分からないので、高く遠くまでは確認出来てはいない。そして草藪が邪魔して敵の姿も見えない。
そして俺の報告した方角に皆で移動を開始する。まじで敵の姿が見えないと言うのは恐怖でしか無いな。感知スキルがなかったら既に全滅しているだろう。
敵との距離が50mを切ると感知スキルに反応が出る。その数5体。敵も移動しているようだ。
そして敵との距離30mの所で魔法を撃ち込み始める。敵もこちらに向かって凄い速さで近づいてくる。
俺も蜘蛛の糸を放つのだが藪が邪魔で敵に届かない。下をクグってこちらに近づいてくる。だが藪が敵が何処にいるかを教えてくれている。ゴソゴソと動いている所に目掛けて俺はダストランス、フラッドランス、マグマランスをぶっ放つ。
ダストランスは高速で回転している砂塵の騎槍が空から落ちて敵を細切れにすり潰す。
フラッドランスは高速で回転する水流の騎槍が地面から突き出して敵を引き千切る。
マグマランスは高温のドロドロのマグマの騎槍が地面から突き出して敵を燃やし溶かす。これで俺の賢さが60になった。
地面から突き出したランスに突き刺されて敵の姿が露わになった。犬?いやリカオンだ。
多分大きさは足の先から頭までで1.5mはある。頭を下げて走っていたのだろう。草藪から頭は見えなかった。賢い敵だ。胴体は黒と茶色のブチの毛色が迷彩になっている。
そして大きな耳と白い尻尾。群れで狩りを行う肉食獣で犬歯が刃物の様に発達していやがる。
下位のヘルハウンドと同等レベルのこのリカオンを俺の魔法一撃で致命傷を与えることが出来た。自分の成長が嬉しくなる。
これで残りは2匹。俺等の5mの手前の位置まで近づいている。ここからは肉弾戦だ。盾役が前に出て、アタッカーが武器を持って待ち構える。俺もそこに混じる。
敵がタンクに向かって突っ込んで来るが、タイミングを合わせてアタッカーが剣を振るう。だが草が邪魔して威力が削られてしまう。それにリカオンの毛皮の弾力も厄介だ。
敵はタンクの足を狙って噛み付いてくる。そこを盾で防ぎ、持っている剣で斬りつける。それでも致命傷にはならずまた噛み付きに来る。そこをアタッカーのフルスキルで倒していく。
ウチの班のタケは、コズガントレットでフルスキルで殴りつける。拳には棘が付いているのでそれが刺さり、そのまま殴って吹き飛ばす。
吹き飛んだ先で他のアタッカーに切り刻まれて魔石に変わる。
ヒサの方を見ると、丁度アキのハルバードで首が飛んだ所だった。あの武器の迫力は相変わらずだ。
リカオンは特にスキルや魔法は落とさずに、魔石と毛皮に変わっただけだった。
これは亀野郎じゃないとそこら辺は落とさないのか?そうすると明日の朝一番でまた狙撃亀を倒した時に期待しよう。
それにしても進みにくいエリアだ。まだ500m進んだかどうか位だ。でもまだ時間もスキルの回数もあるので探索は続ける。
折角燃やしても明日には元に戻っているのだからな…。ただ今日より明日、明日より明後日と確実に強くなっていくのだから、進むのは楽になっていくのだが。
その後、更に奥へと進むとなんと俺達は遂に奴と遭遇した!多分この世界で一番有名な魔物だと思う。
そう、「あの日」ダンマスが乗っていたのと同じサイズのスライムだ!間違いない、人間とそこまで変わらない大きさで、大体150cm位で色は水色。完全にあのときの奴だ。
それが3匹?3体いる。コイツらの危険性は日本人なら知らない人が居ないほど有名だ。なんせ国会の壁に穴を開けまくったのだから。
なので俺達は近づかずに遠巻きに魔法で攻撃することになった。まずは低級魔法で様子を見る。なんせ低級魔法でも賢さが上がるのでアタッカーもタンクも皆で撃ちまくる。
するとスライムも酸を吐いてきた。かなりの広範囲に撒き散らす感じだ。それをウォール系の魔法で防ぐ。ウィンドウォールは更に酸を弾き飛ばして敵に打ち返す。
だがスライムに酸は効かないようだ。これはもう大きい魔法で片付けよう。
俺はF-バーストを単発で撃ち込む。それでも復帰一発目の時より賢さは8も上がっている。
爆煙が晴れたとき、その魔法の威力でスライム達は魔石とゼリーに変わっていた。
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