第52話 Dランクバトルエリア
金曜日の朝。今日は朝イチでDランクのバトルエリアに入る事になっている。
そして突入するメンバーは1班と5班のみとなった。これにはきっと上層部の思惑があるのだとは思うのだが、やはり前回の突入の被害が大きかったことが一番の理由だろう。
なので実績の多いこの2チームが選ばれたのだろう。それに今回はDランクだから2チームでも攻略可能だろうと思われているのもあると思う。
朝の朝礼では1班、5班以外の1期チームは魚人の討伐という指示を受ける。まあ5チームでも余裕はあると思うけどね。
その後準備運動をしてから各班ごとに門の中に入っていく。俺らは皆が入った後に門の前に集合する。
珠は俺が持っているのでまずは俺が門に入る。すると機械音のアナウンスが流れるのでYESと頭で念じる。そして一分後、俺はバトルフィールド内に強制的に転送されていた。
中は洞窟型のフィールドになっているのだが、なんかスゲー臭い……。魚が腐った様な酷い臭いだ。そこへ残りのメンバーも転送されてくるのだが、皆一言目が「臭い」だった。
まあやるしかない。ネックガードを鼻まで上げてヘルメットのシールドを下ろす。気休め程度だが無いよりはマシかな。まずは気配感知のスキルを使って周囲を確認する。
タブレット上の多分30m先が赤い点で真っ赤になっている。まるで魚人の池並だ。魚人は推定Eランクだから怖くはないが、ここはDランクのバトルエリア。この赤い点全てがサメクラスだと考えたら戦慄が走る。
他の気配感知スキル持ちも同じだ。そんな俺達を見て残りのメンバーも察す。
「そんなですか?」とサトに声を掛けられたので、
「この奥、おそらく30m先が敵の反応で真っ赤になっている。全てがDランクの魔物だと思うとゾッとする」
それを聞いて皆ゴクリっと唾を飲み込む。もうやるしかないので皆戦闘準備をする。
フィールドが洞窟型なので、F-バーストを使うのは宜しく無いと思われるので、ランス系とフリーズメインで戦う事になる。
敵の居る方へと歩いていくのだが、臭いがどんどんキツくなってくる。もう既に鼻は死んだ。今は目に来ている所だ。
その原因が敵を見て判った。敵はゾンビだ。身体が腐っているので凄まじい悪臭を撒き散らしていやがったのだ。
広場に居る50体ほどのゾンビ達がこちらに気付いたようで一斉にこちらを向いて歩いてくる。
歩いて来るのだが、スゲー足が遅い…。これは楽勝だと俺は魔法を撃ち始める。まずはフリーズで10体位を凍らせる。そこへアタッカー達が斬り込んでいく。
俺はその奥に移動しフリーズをどんどん打ち込んで凍らせてから両手に剣を持ち、斬り込んでいく。まじでこれなら余裕だ。刺激臭で涙目ながら、どんどん魔石に変えていく。
魔石は8cm大だ。これは未だ姿を見たことがない魚人のボスサメの取り巻きと同じサイズだ。これはウマウマだ。
でもこれがEランクの敵から出てスグの1か月半前に入っていたらどうだったのか。サメにあれだけやられた俺達だ。かなり危なかったのかも知れないな…。下手したら全滅だったかも知れない。
これを作ったのがダンマスなら、本気で探索者を殺しに来ている。一度で良いからダンマスに物申したいわ!
そのままそこにいた50体位を殲滅して魔石を回収していく。やはりここでも魔石以外の素材は1つも出ていない。
そのまま奥に進むとまた広場に大量の赤い点。多分同じ量が居ると思われる。フリーズは後2回。ランス系は各属性で3回ずつ。他にも低級魔法はまだまだある。
他のメンバーも魔法は覚えているのでそれをどんどん使っていこうという話になった。
最近は拳銃は使っていない。もう身体能力が拳銃の性能を超えてしまったからだ。そして低級の魔法でさえ拳銃の威力を超えている。
ただ、このゾンビという敵は、頭を破壊しないと死なない…まあ既に死んでいるのか。倒れない。なのでどうしても無駄撃ちが出てしまうのは仕方がない。
それでも頭に当たれば後衛でなら一発、前衛だと2発で倒す事は出来るのだが。ただ敵の数が多い。この一団で終わってくれれば良いのだが。
また約50体を倒し切り、魔石を集めていく。これで魔石は100個近くになる。凄い数だ。カバン3つがいっぱいになる。
これどうなると終わりなんだ?前回は明らかにボスが居たのだが。倒したあとの事を俺は全く知らない。意識が無かったからだ。それに道はまだ先がある。行くしかないな。
皆で先に進むと気配感知に赤い点が1つ出ている。あ〜間違いなくボスだな。こいつで終わりだろう。
皆に伝えてから進む。すると広場にはダンジョンには似つかわしく無い御老人がポツンと立っている。それが俺には異様に感じた。
穏やかそうな風貌で、頭は白髪だがオールバックに整えられていて目は眉毛で隠れている。口髭と顎髭も長くまるで仙人だ。
そんな仙人が俺等に気付いて顔を上げる。そしてこちらを見た。皆に戦慄が走る。こちらを見た目が真っ赤なのだ!そしてみるみる姿を変えていく。
今度は精悍な顔立ちの青年になっている。そして俺達に向かって凄い速さで走り出す。先程までのゾンビの鈍い動きに慣れてしまっていて、青年の動きに一瞬戸惑う。
それでもメイン盾のヒサはしっかりとヘイトを取ってくれる。俺はそんなヒサ、アキ、サト、タケの順番でフィジカルアップの魔法を掛けていく。
俺もスキル身体強化を使い斬り込む。斬ろうとすると無垢な子供の姿になったり、弱々しい老人になったりと変身していく。こいつやりづらい!
こいつは
動きが速く、力も強いのだが今の俺等の敵ではない。やりづらいだけで殺れない訳では無い。
ヒサがヘイトを取ってくれている間に切り刻んで終わった。
すると機械的アナウンスが流れる。
『Dランクバトルエリアの攻略を完遂致しました。これからボーナスチェストが出ます。チェストの中身を全て取り終わるとバトルエリアから排出されます』
へぇ、こうなるのか。宝箱じゃなくてチェストと言うのだな。アキが俺に開けろと顎で指示をしてくる。あ〜懐かしいな。あの顎で人を動かすアキが、なんだか前の班を思い出して笑ってしまう。
俺は頷いてチェストを開ける。中には柄の先端が外れている短剣と、金属製のガントレットが入っている。こちらのガントレットは魔石防具では無さそうだ。二つを取り出して転送待ち。だが中々転送されない。
おかしいなと思い、もう一度チェストの中を隅々まで探る。すると影になっていたチェストの底の角に丸い珠が入っていた。
またか。
そこにはDと書いてある。
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