第49話 遂に…

 それから1週間は魚人の討伐、その後中層から深層手前を探索しながら、能力上げやスキル、スクロールの獲得、そして魔石の回収を行った。そのお陰で戦闘用のパッシブスキル「二刀流」とアクティブスキル「ヘヴィショット」と「気配感知」を貰った。ヘヴィショットはコズやヤスが持っていたスキルでもある。気配感知はサメが出すやつだ。


 別に狙ったわけではなく、普通にドロップしたのを貰えただけだ。どうやら即戦力として認めてもらえたようかな?


 そして復帰一発目のF-バーストの動画がまた世間を騒がせてしまった。これは俺のせいでは無いのだが…。そんな俺は復活の帝王と呼ばれている。帝王だけが独り歩きし始めてしまっている。


 魔法の方も遂に「エアーランス」という風の槍を作り出す魔法を覚えることが出来た。これにより現在確認されている四属性のランス魔法が揃った。


 これに俺の自然に覚えたスキル「並列思考」を合わせて新たな属性が産まれるのではないかと考えていたわけだ。


 そして実際に産まれた訳で。


 氷×風で ライトニングランス

 風×土で ダストランス

 土×火で マグマランス

 火×氷で フラッドランス

 


 雷ではなく稲妻、砂塵は分かるがマグマって…、そして水ではなく激流。激流は渦巻いているのか?胸熱だ!


 四属性の組み合わせで四属性増えた。そして新たな魔法として勝手に魔法欄に名前が載っていた。2つ分の魔法の威力だった為、ランクとしては、F-バーストと同じ3/3となっている。


 そして四属性増えた途端にランクの低い四属性のランス魔法の名前が消えてしまった。


 今回のは統合されたわけでは無く、編み出してしまった感が有る。なので並列思考のスキルを持っていないとこの魔法は編み出せない。並列思考の習得条件は謎なのだが…。


 ここからは俺の推測と予想なのだが、新たな四属性も並列思考のスキルにより新たな魔法が生まれるのでは無いか?と考えている。


 雷と砂塵は空から降ってくるのに対して水とマグマは地面から突き出してくる。きっとここに何かがあると思うのは、あながち間違ってはいないと思う。


 F-バーストの時から思っていたのだが、この魔法の統合というシステムは、理に適った事象の上に成り立っているからだ。


 だがそれは実現していない。新たな四属性同士を並列思考で使おうとすると、激しい頭痛とともに、何も発動しなくなってしまうのだ。


 きっととんでもない威力の魔法になりそうな予感がする。多分今の俺の賢さ57の能力でも1回も使うことが出来ない魔法なのだろう。


 ただ実は非常に残念な事がある。この魔法今の所3回しか使えないのだが、前の下位の魔法が消えなければ今の俺の能力なら並列思考で13/13使えたのだが…。統合されたら3/3になるなんて…ビドイ!


 どうせ更に上の魔法は使えないのだから統合される意味は無い気がするのだが。もう一度フレイムランスのスクロールが出たときに使おうとしたのだが、覚えることは出来なかった。



 そして今、俺達は全員で遂に辿り着いたのだ。そう、魔王の居城と思われている建物にだ。


 やっとここまで来れた。「あの日」から既に5年半が経っている。内定を貰ってから1年半。多くの仲間を失った。それでも俺達は遂にここまでやってきたぞ。建物の角から壁が延々と伸びていて、ウチの探索エリアと他の企業の探索エリアを隔てている。


 そして目の前には無骨で巨大な門がある。ドローンの映像で遠目では見ていたのだが、いざ目の前に来ると威圧感か凄くある。


 盾役2名が門の前に立ち、門を開ける役が両側から開けていく。その他は盾役と門を開ける役を援護できる位置に陣取っている。


 門が完全に開き、中が伺えると思ったのだが靄が掛かっていて中の様子は分からない。


 この門は転送門と同じシステムだ。ということはこの門も何処かに転送されるのか?この建物の中を探索出来るのではないのか?


 皆で顔を見回しながら、各班のリーダーが集まって相談している。


 俺も貰ったスキル「気配感知」を使って門の中を探ろうとするが門から中はまるで存在していないかのように反応が無い。


 ある意味ほとんどの探索者はこの建物を目指していたのは言うまでもない。何故ならこの建物の中にダンマスが居ると思っていたからだ。


 それが些か状況が変わってしまった。この門が何処に繋がっているのかが分からないのだから当然だ。


 本当過去に穀物ダンジョンに一番最初に入った調査隊の人は英雄だと思う。中がどうなっているのか分からない門を通るのがこれほど恐ろしいとは考えもしなかった。


 それでも俺はこの先に行きたい。それが俺がここに居る最大の理由だからだ。


 俺は相談中のリーダー達に、誰が最初に入るか決めかねているようなら自分が1番に入りたいと立候補する。


 リーダーは皆、危険だから一旦引き返そう、と言ってくれるが俺はこのまま進みたいと主張する。何か有っても自己責任で構わない。


 俺の決意に負けたようで、ウチの班のリーダーサトと一緒に入る事となった。だがいざ入ろうとするとやはり怖い…。俺は意を決っして目をつぶり門に飛び込んだ。


 すると目の前のタブレットに。


        1層入口

        1層出口

        2層入口

        2層出口  


 と表示されている。やはり転送門だったようだ。そしてこの建物の中が二層になっているようだ。入口と出口がどっちがどっちなのかは多分1層入口がギルド側、2層入口が皆が居る場所だろう。


 俺は一旦2層入口を選ぶと、やはり皆が待っている場所に戻ってこれた。こうなるとギルド側から2層に直接飛べるようになるのだろう。俺はとりあえず皆に説明をする。その頃丁度サトも戻ってきた。


 サトはどうやらギルド側にも転送されて来たようで、皆に説明をしている。こうなると深層の探索は非常にやりやすくなるのだが、魚人エリアにはギルド側から進んだ方が敵は弱くて進みやすい。


 とりあえず今日は全員で2層出口に行ってみようという事になった。1班から順次門を通っていく。そして俺達5班も2層出口へと飛ぶ。


 そこには草原が広がっていた。少し先には腰から胸くらいまでの草藪があり、所々には低木のがあり、何かが潜んでいても目視はし辛い。


 各班に感知系スキルを使えるメンバーが2人前後はいるので、それを駆使しながら進んで行くようになりそうだ。


 まずはドローンを飛ばして地上でモニターを確認する。真上に飛ばして周囲を確認。いや〜広い。1層の大森林と同じ位の広さが有りそうだ。


 するといきなり映像が切れてしまう。ドローンを見上げると、粉々になって上空で煌めいている。皆に緊張が走る。誰も感知出来ない何処からか攻撃されたのだからだ。


 



 


 

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