第44話 圧倒的強者

 やっとの思いで倒したヘルハウンドから出た魔石は、今までで一番デカかった。


 これがCランクの魔石なのか。という事はサメボスはDランク?となるとツナや中層の敵や手前の巣のボスはEで、Fは2cmかな?


 皆に言うと、そうなのかと納得してくれている。


 ひと息ついてから、ヤマにまた偵察に行ってもらう。また少しずつ連れて来てくれると助かるのだが。


 待っている間にスキルの残量を確認する。するとなんとフレイムバーストが2/2になっているじゃないですか!賢さが35になったからか?


 でもDランクの敵に通じなかったのに、Cランクになんて通じるハズもない。


 でも先程のフリーズはヘルハウンドを凍らせることが出来た。相性でもあるのか?魔法耐性か?そういえばサメボスは回復魔法を使っていたな…。あの強さで後衛だったのか?嘘だろ?シーモンク討伐作戦だったか?あの敵が本当にシーモンクなら確かに修道士だ。だからヒールを使えたのか。


 しばらく色々と考えていると、ヤマが帰ってきた。今度は焦ってはいない。というか何処か悟ったというか諦めた感がある。


「いっぱい居ると思ったが、奥にはでっかい反応が後一匹だ」


 あと一匹!マジか!なんとかなったな!


「ただ問題がある。多分だがあれは無理だ…奴はヤバイ…」


 それを聞いて皆に緊張が走る。無理?ヤバイってなんだ?デカいのか?


「デカくて、凶悪そうだった」


「感知能力はどうだった?」


「匂いで多分気付かれてるが動かなかった」


 と言うことは近づいても平気そうだな。皆に言って移動を始める。


 通路の先が広場になっていて、そこに居るらしい。俺らは広場の手前まで移動して様子を見る。


 くっ、なるほどな…。確かに奴はヤバイな…マジのやつだ。圧倒的な強者の雰囲気がビシバシ伝わってくる。犬のくせに生意気だぞ!


 まず、同じヘルハウンドではあると思うのだが、更にデカい。そして禍々しいオーラが見える気がする程の風格がある。


 皆を見ても、完全に呑まれてしまっている。だがやつを倒さないとここからは出られないのだろうな。


 一旦引いて作戦会議だな。


「確かにあれはヤバイな…皆も完全に呑まれてしまっているよな」


「イソのフィジカルアップはあと何回使える?俺とキムの強化が切れたら死ぬかもしれないからな…」


 ヒサに聞かれたので素直に答える。


「もう打ち止めだ…でも赤ポーションはまだ残っている。赤ポーション使って強化掛けてから、開幕で俺が魔法を打ち尽くすから守ってくれ。その後何処まで削れてるか分からないが、アタッカーで仕留めてくれ」


 ヒサとキムは、わかった、と言って頷く。

 皆も頷いている。


 もう、やるっきゃない。


 さあ行こうか!


 俺達はボスの部屋ギリギリまで来ている。ここからなら魔法は届く距離だ。まずはヒサとキムの強化をしてから開幕だ!


 フレイムバーストをまずは1発。ヤマを見ると首をふる。なのでもう1発!でもまだのようだ。


 ここからはフリーズだ。今の魔法を使ったことで賢さが上がり、6回使えるようになっている。


 土埃でよく見えないが誰かが風の魔法で埃を飛ばしてくれる。すると、ヒサの目の前に奴が立って噛みつこうとしていやがる!いつの間に!


 ヒサもしっかりと準備していたようで、フルスキルでヘイトを取って盾で防いでくれている。だいぶダメージを与えれているとは思うのだが、欠損などはさせれていない。残念ながら五体満足だ…。


 その敵の横側にキムが構えているので皆でそちらに移動して俺はフリーズを使う。


 ボスの周りが凍り始めるのだが、素早く躱してヒサに噛みつきを行っている。ヒサはそれを盾でカードするのだが、ボスは盾に噛み付いて離さない。


 この隙にもう一度フリーズをボスの上を狙って使うと、頭上に氷塊が現れてボスを襲う。こういう使い方もあるのか!一瞬怯んだ隙にまたフリーズを今度はボス目掛けて使うと空気ごと凍りつく。


 しかし、凍ったのは表面だけだったようで大したダメージは出ていない。身体を揺すって毛についた凍りを振り払う。その隙に今度は足元を狙って撃つ。するとボスの足を地面に凍りつかせることに成功した。


「今だ!アタッカー!」


 言うが早いか、皆既に飛び出していた。先頭は縮地のコズと、新ブーツのヤスだ。


 コズはそのままフルスキルで右ストレートをボスの凍りついた右前足に撃ち込む。ヤスもブーツで加速しながらフルスキルでナイフで斬りつける。その後にアキがフルスイングでハルバードを振る。凄まじい轟音と共にボスの右前足が吹き飛んだ!よし!欠損した!


 怒り狂ったボスが、アキを狙って噛みつくがキムが割り込む。その間にヒサがヘイトを取り返す。ボスはなりふり構わず顔を振り回して、牙で攻撃をしている。その勢いでヒサとキムが耐えきれずにふらつく。


 後衛はヒサとキムにヒールを飛ばしたり、遠隔からの攻撃を始めている。アタッカー達はボスの真後ろに回り込んで後ろ足に攻撃を集中させている。


 結構押せていると思って俺はもう1本赤ポーションを飲もうとしたときに、ボスが凄い声で雄叫びをあげる。


「ワァオォォォォォォォ〜〜ン!!!」


 俺ら全員が金縛りにでもあったかのように萎縮して動けなくなってしまった。


 これはマズイ!何かのスキルだ!


 ヒサは、多分フルスキル中で俺の強化も入っているから、かなりのダメージを軽減出来るはずだ。問題はそれ以外のメンバーだ。


 こっちにヘイトが来たら終わりだ。ヤツの攻撃など防げるはずもない。もちろん盾役以外は皆、紙のような装甲だ。


 と俺が考えていたときに最悪なことが起こった。


 それは尻尾だった。


 奴は尻尾を振り払ったんだ。


 それだけで何かが飛んだ。


 仲間の首だ。


 1つじゃない3つだ。


 ヤツの後ろにはアタッカーが集まっていたはずだ。その中にはウチの班のメンバーも居たはずだ。


 誰の首が飛んだ?スローモーションで首が3つ飛んでいる。


 そのうちの1つはよく見た顔だ。毎日見ている顔だった。訓練中からずっと仲良くしてきた。笑った顔も、怒った顔も、酔っ払った顔も毎日見てきた。ベットの上でこないだ初めて寝顔も見たばかりだった。



 梢の首が宙を舞っている…。




「うわああぁぁぁぁぁ〜!こずえぇぇ!!」 


 


 


 




 


 






 

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