第43話 重大なミス
薄っすらと周りが暗くなり始めた頃、足取り重くなんとか門まで辿り着いた。
佐藤顧問が点呼を取り、皆居るのを確認してから門をくぐる。
すると顧問は立ち止まり、キョロキョロしている。そして突然機械的なオペレーターの声が響き渡る。
『ただいまCランクバトルエリアへの侵入の意志を確認しました。1分後にゲートが開きます。侵入予定者は速やかにゲートをくぐって下さい。また、ゲートは開口後1分で閉じます。尚、一度くぐると魔物の殲滅が終了するまで出られませんので注意してください』
ん?なんのこと?よくわからないのだが…?
あ、さっきの黒い珠、顧問に預けていたんだった。操作ミスったのかな?侵入することになってるじゃん。
「どうするのこれ」
と周りが騒ぎ出す。ん〜ゲートをくぐらなければ良いだけっぽいよな?今日はもうスキルも使ってしまったし遺体も早く地上に出して上げたいしな…。
「くぐらなければ良いだけでしょ?このまま放っておこう。Cランクのバトルエリアの珠は無駄になっちゃうけどしょうがないよ」
俺は皆を落ち着かせる為に、無駄にしようと提案する。皆もそうだね、と納得してくれる。
「いや、大変申し訳ありません。こういう操作は苦手なもので…突然目の前にYES NOと表示されて慌ててしまいまして…」
顧問もホントに申し訳ないと頭を下げてくれるのだが、当然皆許している。
多分1分経ったときに、突然顧問が消えた。
『ゲートが開きました。リーダーは既に侵入しています。侵入予定者は速やかに侵入を開始してください』
「不味いな…顧問は強制か」
皆はどうする?と俺の顔を見てくる。俺にもどうすればよいか判らんぞ!
「1つ言えることは、ここで誰も行かなかったら、顧問は確実に死ぬ。俺は行くぞ。見殺しにしたら一生後悔する。皆は無理するな」
俺はそう言って、真っ先にゲートから侵入する。
そこには顧問が驚いた顔をして俺を見ている。
「磯山さん!来てくれたのですね!見殺しにしてくれても良かったのですよ…でも感謝します」
そう言って俺の手を取って握ってきた。その後ろから、続々と仲間が入ってくる。
「皆さん!来てくれたのですか!ありがとうございます!ありがとうございます!」
皆、当然だよ、と言っている。
見回すと1班全員の姿がある。なんと心強い!何せヤマのスキルで索敵出来るのはかなり有利だ。
「ヤマ、敵の配置はわかる?」
「ここからはまだ何も。少し探ってくる」
そう言って隠密を使うと、視界から消えて見えなくなった。なんと頼もしい。
「ヤマの偵察を待ちましょう。それによって作戦を練りましょう。赤ポーション持ってる人は?」
ウチの班には2本有る。で、さっき5本出ている。他の班でも11本有ったので合計18本。
先ずは回復魔法持ちから優先で配る。俺も1本頂く。次にメイン盾役の2名。ウチの班のヒサも含まれる。ヒサはスキルが揃っているので盾役1番手である。後はどうしても飲みたい人。は誰もいなかった。
「皆さん聞いてください。この度は私の落ち度でこのような事に巻き込んでしまって大変申し訳なく思います。そこで少しお聞きしたいのですが、この中で1番賢さが高いのは誰になりますか?」
ほとんどの人が俺を見てくる。自分でも俺だと思っている。賢さ34だ。
「磯山さんですね。それではこちらの魔法のスクロールを使ってください」
そう言って先程出た「フリーズ」のスクロールを俺に渡してくる。なるほどね、戦力の強化をするのね。俺は黙って頷く。
フリーズは5/5
フレイムバーストは1/1だ。
使用回数から判断する、フレイムバーストのランクはまだまだ上のようだ。
「次に、近接戦闘に自信のある方は私が模擬戦で実際に戦った感じから、安田さんか、片桐さんだと思うのですがどうですか?」
ほほう。ヤスの評価は高いのは知っていたが、コズも並んでいるのか。すごいぞコズ!
「自分は負けてる気はありません。ただ、証明の仕様がないのが残念です」
「私も同じです。ただ、判断基準が曖昧なためどちらが上かは決められません」
「分かりました。それでは今回は安田さんにこのブーツをお貸しします。魔石はこれを使ってください」
そう言ってこちらも先程出た魔石ブーツをヤスに渡している。どんな効果が有るのだろう。
ヤスがカカトに魔石を入れてから、足を入れると自動でサイズが変わった。ヤスが何度か軽く飛び跳ねて見ると、2回目のジャンブが1回目よりも高く、3回目は更に高く。どんどん高くなっていく。
今は縦運動だが、横に移動するときはどうなるのだ?
ヤスは軽く走ってみると、1歩目より2歩目、3歩目とどんどん加速していく。凄いブーツだ。
そんな事をしていると、ヤマが偵察から帰ってきた。ヤマの顔から焦りの色が伺える。
「どうしたヤマ?何があった?」
「デカいイヌだ。多分気付かれている。すぐ来るぞ。2体だ」
「全員戦闘準備!!盾役は先頭へ!」
顧問の掛け声で皆迅速に構える。
「多分奥にもっといる気配があった」
「来るぞ!」
そういった途端に、悪魔のような犬が飛び出してきた!体高は2m位で、目は真っ赤、体毛も上側が真っ赤で、まるで炎を纏っているかのような様相だ。こいつは「ヘルハウンド」だ。こいつがCランクか!
俺は真っ先に蜘蛛の糸を使い、ヒサにフィジカルアップを使う。周りもハイドロボールや蜂の針を飛ばしている。
Cランクが凄いと思ったのは、蜘蛛の糸を物ともせずに突っ込んで来ることだ!マジかコイツ!
盾役のヒサと、5班の盾役のキムが1体ずつ受け持ち、ヘイトを集める。その隙にアタッカーが囲んで叩いていく。それでもヘルハウンドの耐久が高く中々削れない。
俺はコズとアキとヤマにも強化を掛ける。
そしてアキが皆に声を掛けて離れさせ、フルパワーでハルバードを振るう。2体纏めて吹き飛ばすと思いきや、1体目にめり込んで止まってしまう。
嘘だろ!!
強化込みのフルパワーでこれか?それでも1体は瀕死なので皆でトドメを刺す。
ハルバードのフルスイングはアキにも負担が凄いので俺が回復する。筋断裂を起こしてしまう。
ここは新しい魔法を撃ってみよう。
「俺が行く、下がって!」
残りの犬にフリーズを撃つ。
すると犬の周りの空気が凍りだすのが見て取れる。そして一気に敵ごと氷結する。「パリパリ」と音も聞こえてくる。
「今だ!後衛で畳み掛けて!」
アタッカーが離れている隙に、後衛で魔法やスキルを撃ち込む。すると犬はガラスの様に砕け散った。
残ったのは12~13cm位の魔石だけだった。
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