第42話 ボス戦と多大な犠牲

 さぁ始めようか!


 索敵の結果、中には4体。開幕は俺のフレイムバーストで吹き飛ばす事になった。次にミドリのフレイムバーストだ。


 敵の位置は入って10m位の位置というのでそこを狙う。行くぜ!


 魔法を発動すると、建物が中から吹き飛ぶ。埃でよく見えないが、索敵班がまだ1体残っていると言う。


 ミドリがまたフレイムバーストを使うが、まだ生きているようだ。ヤバいなこいつは…。


 埃が晴れる前に、何かが凄い速さで飛んできだ。水の球だ!その球がこれまたデカい!1m弱はある。


 それが油断していた俺の真横を通り、ノーガードのミドリを直撃してしまった。そしてミドリは大きく飛ばされてしまう。マズいな!


「盾!前へ!!」


 顧問の指示が飛ぶ。俺は急いで下がりミドリの元へ。回復魔法を使える人間はそこまで居ない。そしてミドリも回復魔法を持っていたのだが…。まだ息はあるのか?ピクリとも動かない。そして首と胴と腕と足が曲がっちゃ行けない方向を向いているように見える…。周りもポーションを持って駆け寄ってる。


 埃が晴れて敵が姿を現す。サメだ!3mは有りそうだ。そして奴は無傷だ。身体を光らせて血管が浮き出す。そして槍を構えて突進してくる。早い!ウチの班のヒサがフルスキルでヘイトを取る。ボスはヒサに向かって槍を連続で突き出していた。


 それを受けた盾が砕かれてしまうが、ヒサは耐えている。ヒサのスキルは自身を強化できるので少しなら耐えれるが、他のタンクとチェンジする。


 その間にヒサは盾を交換して構えて待つ。


 周りもスキルや魔法で応戦しているが盾で防がれ、ボスに当たっても皮膚は固く、そしてどうやら回復していやがる!


 これのせいで無傷だったのか。


 次はアタッカーの出番である。アキとコズも動く。アキのハルバードには4cmの魔石が嵌めてある。本気だ。


 アタッカーが近づいた瞬間、球を撃ち出してきた。至近距離で二人が吹き飛ぶ!飛ばされた二人には後衛がポーションを持って駆け寄っていた。球を撃ちまくりながら槍で辺り構わず突いて払ってと大暴れである。大人数で囲むと被害が拡大しそうだ。


 俺はミドリの容態を確認する。


 息は……していない…。何故だ?何故息をしていないのだ?俺は良く分からなくなってしまう。とりあえずヒールを掛けよう。そうすれば息をするかもしれない。


 俺は一回ヒールを掛ける。ん〜目を覚まさないな…もう一回掛けよう。


 その時、肩を掴まれて後ろを向かされた。


 そこには佐藤顧問が立っていて俺に向かって何か言っている。


「残念だが飯山さんは既に亡くなっています。先ずはボスを倒すことが最優先です。怪我人も多数居ます。そちらの援護に回ってください!」


 顧問に強く言われる。


 あの野郎がミドリを殺したのか?許さねーぞ!!俺は心の底から怒りが込み上げてくるのがわかった。


 それでも俺には効果的なスキルも魔法も残ってはいない…。後方支援しか出来ない。


 誰でも良い、ミドリの仇を取ってくれ。


 俺がそう祈っている間にも戦闘は続いている。吹き飛ばされているのは他に6人もいる。アイツマジで強い。多分身体強化と回復を使っていやがる。


 そしてあの球がヤバイ。威力と速さが段違いだ。そして身体強化から繰り出す槍も皮膚の硬さも厄介だ。


 サメが姿を消して後ろに回り込んだヤマを槍で叩き出した。感知能力まであるのか?ヤマがヤバイ!


 サメがヤマにトドメを刺そうと顔を向けた一瞬、そこへアキとコズが右と左から躍り出る。コズは縮地で一気に距離を詰めてフルスキルでサメの槍を持つ右腕を吹き飛ばした。


 コズに気を取られた隙にアキがフルパワーでハルバードを振るう。実験の時でもスキルは乗せていなかったのだが、今回はフルパワーだ。


 ハルバードは光り輝き、雄叫びと共にボスの上半身を塵1つ残さずに全て吹き飛ばした。その後、爆風と共に凄まじい轟音が俺達を襲う。


 決着である。


 俺は急いでヤマに駆け寄る。ヤマは腕を斬られているが生きている。生きていれば回復できる。


 ヤマにヒールを掛けながら、ポーションも飲ます。傷はみるみる消えて立ち上がれる様になった。その後はアキの腕をヒールで治す。ハルバードをフルスキルで振ったのだからおそらく筋断裂していると思われる。


 まだハルバードの性能に肉体が付いて来れていないのだろう。


 周りを見回すと、ミドリの周りには7~10班のメンバーが集まり、泣いているのが見える。他にも3班のアタッカー2名も亡くなった。折角蜘蛛の恐怖を乗り越えて、これからというときに…非常に残念だ…。


 そして5班のヤスの所の1人と2班のタンクが1人。計5名が殉職した。


 今回は完全にこちらの油断だった。無防備に立っていた俺だって死んでいてもおかしくはなかった。たまたま逸れてミドリに当たってしまっただけだ。これが中層の洗礼か。油断したら即、死ぬエリアだ。


 何時までもここにいてもしょうがない。皆で手分けしてドロップ品を拾っていく。


 ボスの魔石は一際デカく、多分10cmは有りそうだ。そして姿は見なかったが残りの3体も8cmは有りそうな魔石になっていた。そして白身魚の柵とフカのヒレ、魚の鱗が落ちている。


 それとさっきから皆も気付いているだろうが銀の宝箱が有る。これは勝手には開けないで顧問立会で開ける。


 中にはカカトの外れた表面に金属が貼られた革のブーツ、それと赤ポーション、そして……また出た。バトルエリアの珠だ。しかも今度は「C」だ。


 宝箱の中身はとりあえず顧問に預ける。


 そして集めたスキルブックは

「三段突き」「気配感知」「ハイドロボール」


魔法は

「フィジカルアップ」「フリーズ」


 とりあえず佐藤顧問に全て預ける。佐藤顧問は俺に先に選ぶ権利があると言ってくれた。


 俺は今そんな気分ではないのだが、一応メンバーを呼んで相談する。


 皆一致で「フィジカルアップ」の魔法が良いのではないかと言うのでソレにする。


 スキルではなくて魔法という所がミソだよな。まあ俺が使うらしいので頂いて使っておく。


 早速コズに掛けて見ると、血管が浮き出して、筋肉も盛り上がってきた。これは…名前の通りだ…。


 素材の回収も全て終わったので、遺体を担いで帰路につく。ボートは対岸に空気を抜いて置いていく事になっている。


 帰路では我々1班を先頭に歩いている。ヤマのスキルで索敵しながら歩けるからね。


 皆意気消沈して歩いている。誰も何も話さない。門までの30kmがとても遠い。


 






 




 

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