第41話 殲滅作戦

 皆との合流地点へ行くと、既に2班、5班、6班と佐藤顧問が肩から鞄を下げて立っていた。鞄の中身は折りたたみゴムボートと空気入れであろう。その鞄を2つ左右の肩から下げている。

 

 ウチの班の探索エリアは一番端なので、中央にある5班の探索エリアまではそこそこ距離がある。同じくゴブリン担当班も端の方なのでまだ来ていない。


 しばらく談笑していると7~10班が合流してくる。これでみな揃ったので佐藤顧問の号令の元、中層域へと進んで行く。ゴムボートの鞄は班毎に交代で持っていくことに。


 道中には当然敵もいるので討伐しながら進んでいく。こういう時のドロップ品は佐藤顧問が一時預かって後に分配される。3班と佐藤顧問にとっては初めての中層域で、緊張している様に見える。


 我々もまだ4日目なのだが、敵にはもう慣れたものだ。何組かの敵と遭遇しては倒し、進んでいくとヤスが止まれのサインを出す。


 先の方に目を向けると確かに水辺が有るのがみえる。探知スキル持ちは2名だけなようで、ヤマともう1人が木の陰からスキルを発動すると、沼の中に感知範囲だけでも30匹は居ると報告してくる。


 こちらは45人プラス顧問がいるので、数では勝ってる。ただどの程度の強さかわからないので慎重に1匹だけ釣りたい所だ。


 どうやって釣ろうか考えながら、顧問が木の陰から出た途端に、水面が波打ちだって何かがこちらに向かってくる。当然向かって来るのはツナで間違いないのだが。


「多分50以上来てる」と索敵チームの報告を受けて皆で武器を構える。水面から顔を出したツナ達が次々に水の球を撃ち出してくる。それを盾持ちは盾で弾き、アタッカー達は横へステップして躱していく。後衛の俺たちは木の陰に隠れる。


「水辺から10m程後退しましょう」

 と佐藤顧問の声を聞いて、ジリジリと下がっていく。


 それに釣られて槍を構えながら陸にあがって来るツナ達を後衛が魔法で牽制し、アタッカー達がそれぞれ得意な武器で次々に倒していき、5cm大の魔石と魚の鱗、赤身魚の切り身というか柵が次々に地面に落ちていく。


 至近距離からなら拳銃も有効で、ダメージを負わせて動きが鈍った所をアタッカー達にトドメを刺してもらう。盾持ちは水の球をガードしながら魔法や手持ちの武器でツナ共を倒している。


「後衛の方達も前に出て銃で撃って行きましょうか」

 と顧問の指示で我々後衛も前に出て、魔法から銃に替えて頭を狙って撃っていく。こちらの人数が多いので、ツナ共はどんどん数を減らしていく。


 水辺でバシャバシャと音を立てているせいか、次から次へとツナ達が襲ってくる。すでに50匹は優に超えている。


 だがこちら側はかなり余裕があり、このペースならまだまだ行ける。逆に途中からはワザと音を立てて呼び込んでいる節もある。


 体感で100匹は倒したと感じる頃には一段落していた。索敵班はここら辺にはもう居ないと教えてくれるが、念の為警戒しながらドロップ品を拾い上げ顧問に渡して行く。スキルブックと魔法スクロールが何冊か出ているようだ。


 魔法は氷系の様で非常に興味深い。というか欲しいけど一旦お預けである。これだけの人数だから、その都度分配していたら不公平が出てしまう。


 水の中にまだ潜んで居ないか索敵班に沼の縁から探してもらう。グルっと一周まわって帰って来て、反対側にまだ敵の反応が5~60匹は有るようで、皆で移動していく。


 水の中に敵が残っている中、ボートで島に渡り始めて途中で襲われでもしたら大変なことになる。それにまだ島にもツナ共は3~40匹はいる様に見える。


 上陸する時に邪魔になるので陸上のツナもどうにかしないといけないな。歩きながら顧問に尋ねて見ると、


「後で銃を撃ち込んで見ましょう」


 と返事がきた。確かにそれが1番手っ取り早い。まずは水の中の殲滅から始める。最近出番のない弓を持ってきても良かったかもな。


 その後も反対側に居たツナ共を呼び込みながら殲滅した。今のところ順調に進んでいる。


 ほぼ水の中のツナは討伐が終了したようでいよいよ上陸作戦だ。ゴムボートに空気を入れている間に、島にいるツナに銃で撃ち込んで見る。ただ島までは30m、流石に手持ちの拳銃では威力がない。


 ボートで真ん中まで進んでから撃ち込もうと言うことになった。15m位なら威力も出るし、いざ襲われたとしても岸からの援護も期待できる。



 よし、行こう!



 俺は岸でお留守番でした…。俺、結構遠隔攻撃得意なのよ?まあ作戦だからしょうがない。ボートには2艇10名しか乗れないのである。7班と8班が乗込んでボートを漕ぎ始める。そして所定の位置から銃を撃ち始めながら後退してくる。


 それに気付いたツナ共もこちらの動きに連られて、水の球を撃ち出しながら水の中に入っていく。


 水の球は最前列のタンクが盾で防いでいるが、ゴムボートに当たってしまうのは仕方がない。ただ島側から撃ってきているのでこちら側に押される感じになり、後退がスムーズではある。これが木のボートなら壊れていてもおかしくはない。 


 次々に倒して行くのだが、沼の中で倒すと魔石とドロップ品の回収が大変である。ゴムボートチームも岸に上陸して引き連れてくれているのでどんどん殲滅する。ザット30匹の殲滅は滞りなく終了した。


 魔石とブックを集めて顧問に渡していよいよ島へと乗り込む。と意気込んで居たのだが、先にスキルブックと魔法のスクロールを分配することになった。巣のボス戦で役に立つかもしれないからね。


 スキルブックはいつもの武器スキルに多分ツナ共が撃っていた「ハイドロボール」が3冊。


 魔法は

「アイシクルランス」x1 

「アイシクルバレット」x2

「アイシクルブレード」x2


 だった。


 ここはハイドロボールがほしいなあ。普段モンスターのスキルブックは非常に出にくいのだが、それが3冊も出ている。これは是非うちの班に欲しいところだ。


 そしていつもの入札制度。スキルブック3冊に4班が名乗りを上げて、協議と言うなのアミダクジでうちの班が落選。魔法も行き渡ってしまったのでうちの班は、次回の優先権と、オマケの武器スキル1冊。槍術だったのでとりあえず保留。


 さあボス討伐だ!


 2班ずつボートで島に渡ってはロープで戻しまた2班、それを繰り返して皆渡り切る。近くで見ると家はデカい!高さ15~6m位は有りそうだ。さあ何が出てくるか。




 


 

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