第40話 新たな巣

 探索13日目の夕方。


 俺達トウキン探索部1班は1日の探索を終えてギルドに戻って来ている。朝、5班から貰った魔法アイシクルランスの試し撃ち等をしながら討伐した5cmの魔石15個と、3cmの魔石32個、2cmの魔石を何個かをギルドに提出し、受取書にサインをして装備を片付けて会社に戻る。


 会社で本日ドロップした素材の肉や鱗付きの皮、ゼリーの瓶を提出して、ミーティングルームに入る。


 そこにはすでに5班のメンバーが揃っていて、皆の帰りを待っている様だった。


 朝もらった魔法のお礼と感想を伝えても何処か上の空で相槌を打ってくる5班のリーダーのヤス。


 これは何かあったのだと察して佐藤顧問を見ると目が合いうなずいてくる。


 その後皆が次々と帰ってきてミーティングが始まる。


 1班からいつも通りの報告をして5班の番になる。ヤスが立ち上がり報告を始める。


 その報告では、30km手前に魚人のモンスターの巣を見つけたということだった。


 ドローンで撮った映像を大型テレビにメモリーを差して映像を映す。そこには大きな沼やマグロの様な魚で、ヒレが伸びたような手足が生えていて二足歩行で歩いている魚人の姿、手に持っている槍、レンガ造りの建物などが映っている。


 これは巣なのか?集落になるのか?どちらにしろ新たな発見だ。


 ドローンに気付いたのか槍で突く動作をしているが、1匹が口を開いた途端に水の塊を吐き出してくる。


 ドローンは急速に方向転換をしてソレを躱すと、ヤスが映る位の所まで飛んで戻り、撃ち落とされた様で墜落した。急いで回収して戻る所まで録画されていて映像は終わる。


 映像をもう一度見せてもらい、今度は皆で気になる所を指摘していく。


「ここ、水の中にも敵影が映ってる」

「この島だけで30匹は居そうだね。この建物の中にもいるだろうしね」

「きも〜〜」「サイズはどれくらいだ?」

「ゴムボートが必要だよね」


 など思った事、気付いた事を皆で口に出しながら確認していく。


「何故沼に海洋生物が?」


 と俺も疑問に思ったので言って見るがどうやらそこは今じゃないらしい。


 マグロの様に見えるがそれは決してマグロでは無く魔物なのだ。そもそもマグロは陸地を歩いたりはしないし、この沼が淡水とは限らない。


 気になるサイズや正確な数はこの映像では解らないが、とにかく大量に棲息していることはわかった。


 この敵が全て5cm大の魔石を落とすとなるとかなりの量を確保することが出来る。毎回この量を確実に確保出来るのなら討伐しない手はない。


「これだけの数ですから、魔石もかなりの量になりますね。そうなるとひと班だけでの討伐は無理でしょう。明日各班の担当の巣、集落を討伐したあと合流して向かってみましょう。私も明日は参加します」


 と佐藤顧問が指示を出す。能力値的には我々の方が上かも知れないが、この人の戦闘技術には刃が立たない。能力値が全てでは無いという良い例となっている。


 その後も6班から報告を再開して全ての報告を聞き終わりミーティングは終了する。


 どうやら7班のリーダーのミドリが俺と同じ魔法のフレイムバーストを無事統合出来たようだ。こっそり今の賢さを聞いたところ、俺の32とほぼ変わらず、31と言うことだった。

 それでも俺は魔法攻撃力小アップのスキルがあるので威力は俺のほうが上になるのだ。

 

 これで明日は2発のフレイムバーストが撃てるという事になる。大量にいるであろう敵の殲滅には効果大だろう。


 場所を食堂に移し、夕飯を食べながら明日の討伐について意見を交わす。珍しく顧問と有馬部長も食堂で夕飯を取りながら話に加わってくる。

 

 明日の討伐担当をなるべく最小限のスキル使用で終わらせてから合流しようと皆の意見は一致している。そこからはいつも通りの宴会に変わっていく。その頃には顧問も部長も居なくなっていた。


 ミドリが今日ドロップした魔法で、フレイムランスという魔法が出たというので明日の朝、貰う約束をする。


 ヤスも報告が終わった辺りから、いつも通りに戻り、陽気に話しかけてくる。 


 皆は魚の魔物の呼び方や、攻撃方法などを勝手に想像しては動きに合わせて技名を叫ぶという定番の遊びが始まる。敵は最初「ナミタロウ」と名付けられたが、どう聞いても個人名の様なので却下され、「ツナ」という名が付けられた。マグロで良い気がするが…そんなこんなで夜は更けて行く。



 14日目の朝


 朝の朝礼で本日の重要事項を伝えられ、作戦名が「シーモンク討伐」と名付けられた。


 ……ツナじゃ無くなってしまったが、確かにシーモンクの方が良いね。確か何処かの民話に出てくる魚の修道士の事だったと記憶している。


 その後、明日にはバトルエリアへの侵入も控えているので今日は周りとの連携も意識してシーモンク討伐を行うよう言われて朝礼は終わり、各班に別れて転送門をくぐって行く。


 今日は3班と一緒に蜂の巣を討伐に行く事になった。3班は蜘蛛に襲われて一週間病院に入院していたので、まだ単独で巣の討伐は危ぶまれているので、ウチの班との合同討伐となっている。


 スキルや魔法もそこまで揃っていないので、我ら1班が先導して討伐していく。蜂の本隊が一斉に襲いかかって来た時には、悲鳴を上げていたので、まだ単独では無理そうだ。


 アキが先頭に立ちハルバードを振り回し、その横でコズがボクサーの様に左右にステップを踏みながらパンチを繰り出し続けていく。その他のメンバーで拳銃で撃ちまくって、本隊の討伐は終わる。


 巣の場所は一緒なので、そこへ向かい蜂の巣を拳銃で蜂の巣にしていく。


 巣の周りに居た敵を全て倒した所で、コズが助走を付けて素の右ストレートを放つと前面が陥没して崩れ落ちる。


「おぉ〜スキル無しでもここまで壊せるのか〜」

 と素直にコズを褒め称える。コズも嬉しそうだ。可愛い。


 中が確認出来る程度壊れたので、近づいてまた拳銃を撃ち込みまくって女王蜂の討伐を終わらせる。スキルブックと魔法のスクロールは3班に渡して、魔石はウチの班が全て貰う。戦闘術のスキルさえほとんど持っていなかった3班の面々は大変喜んでくれた。


 ボスからは2度目となるレアスキルブック「スティングストライク」というスキルと魔法エアブラストが出ていた。雑魚からもウィンドウォールが出ていたので、この魔法の有用性と検証結果を伝えて是非常用する様に伝えておく。


 その後は本日のメインである「シーモンク討伐」のために皆との合流地点へと雑魚を狩りながら移動していく。


 


 


 


 




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