第37話 五ツ星 京香 5
残りは巣の中だけとなったので、炙り出す前に壁に魔法を当てて刺激してみようということになった。
田中の魔法にエアブラストという空気を圧縮して飛ばす魔法が有るので、それを入口の少し上辺りを狙って撃ってもらう。
当たった周辺がえぐり取れて中が良く見えるようになった。音と振動もかなり出ていたと思うので、外で少し待ってみる。
すると中で何かが動いたと思った途端に、50cm程の水の塊が飛び出して来た。静香のより大きい。たとえ同じスキルでも能力値によって大きさやスピード、威力が変わってくる。
静香のより大きいと言う事は、静香より能力値が高いと言う事に他ならない。
恐らくはここのボスだろうと皆に戦闘体勢を取らせる。するとまた水の塊が今度は3個まとまって飛んでくる。どれも大きい。
マサとヒデが盾で直撃を避けるように上手に受けて上方向へ逸らす。それでも少し身体がグラついた様に見えたのだから、威力は相当なものの様だ。
それよりもボスが複数居るのか、もしくはただの取り巻きでボスはまた別な可能性が出てきた。ただ、大体の居場所は掴めたので、遠隔で攻撃を撃ち込んで行く。静香にも赤ポーションを飲んでもらい、スキルを回復してもらう。
「切り込みます。静香と田中は援護射撃を。マサとヒデは付いて来て」
「「「おう」」」「あい」と返事を聞いてから、身体強化を使い入口に飛び込む。敵は先程までの魚人より少し感じが変わっていて、クエの様な横に平べったく大きな口のある顔になっていて、人の要素が増しキモさも増している。魚の頭に少し髪の毛も生えている。
敵も黙って待っていてはくれない様で、ハイドロボールを撃ちながら、槍で突き刺しにくる。
敵の槍を剣で弾こうとするが、敵の力が強く鍔迫り合いの形になってしまう。
近くで見るとなお、気持ち悪い顔をしていて、匂いも生臭く皮膚が少し湿って見える。
そんな事を考えていたら、口を大きく開けてハイドロボールを撃とうとしてくる。この距離で喰らうのは流石にまずい。後ろに倒れる様にバク転をして攻撃をかわし、そのまま一歩踏み込み剣を横に一閃。
だが首を斬るまでには至らず、少し下がった所に、割り込むように別のクエが槍で攻撃を仕掛けてくる。
そこにマサが割り込んで来て、盾で弾くと少し脇が開いた。そこにまた私が飛び込み右切上。しかしこれも致命傷にはならない。
ただ、目線が私に釘付けになってる隙に静香がスキルで一気に距離を縮めて頭に一閃。頭が吹き飛ぶ。
ヒデが一匹受け持ってくれているので、4人で先程手傷を与えた一匹に向かう。首は斬れなかったがもう一息で倒せそうだと思っていた敵が、ほのかに光り傷が回復する。
「なに?!」とマサが叫ぶ。するとまた敵が光り、身体中の血管が浮き出して身体が一回り膨れた様に見える。
「なにかのスキルか魔法だろう。皆警戒を」と注意を促し構える。
敵も槍を構えて突進してくる。速い!そしてそのままマサに向かって槍を振り下ろす。
静香が蜘蛛の糸を発動したが、スピードはそこまで落ちない。おそらくブーストされた分でプラマイゼロなのだろう。
マサは盾で払い上げようとするが、そのまま吹き飛ばされてしまう。強い!だがこちらも負けてはいない。身体強化をまた使い、突撃する。
バトルダンスを使い斬りかかる。右に左に下に上にと連撃を浴びせていく。
敵も切り傷が増えていき、苛立ちも見えてくるので、わざと隙を作って誘い込む。
誘いに乗って敵が槍を薙いで来るので一歩下がってかわす。がスピードが速くてかわし切れない。剣で受けてしまった為そのまま吹き飛ばされてしまう。
追撃をしようと踏み込んで来る敵に、マサが間に合い盾で耐える。耐えた所に田中のフレイムが火柱を上げて敵を飲み込み、その隙に静香に首を斬られて倒し切る。かなり強かった。と言うか急に強くなった?
ヒデが相手をしている残り1匹を皆で囲むと、また光って血管が浮き出し少し膨れた。
槍を振るスピードが速くなり、ヒデが吹き飛ばされてしまう。そこをマサがカバーに入り追撃をさせない様に盾を構える。田中がヒールでヒデを回復している。
睨み合いになった時に突然、我々の横から特大のハイドロボールが凄いスピードで飛んできた。私と静香はなんとかかわすが、ヒール中のヒデと田中は躱せなそうだ。
ボールを目で追うことしかできず、目線だけで田中とヒデの方をみると、ビデが田中を押し退けて盾でボールを受けて吹き飛ぶ。スキルも間に合っていない様だったので、盾で受けたとはいえほぼ生身に直撃である。
「ヒデ!!」と皆で叫ぶがヒデはピクリとも動かない。田中が駆け寄って行くのが見えたが、まだ戦闘中であるので、ヒデは田中に任せて我々は敵に向き直す。
何が起こったのか確認する必要がある。横からボールが飛んできたので、もう一匹横にいるということだ。
私と静香が同時に横を向くと、そこには3mを超えるサメの魚人がこちらを向いて槍を構えている。デカイ!こいつがボスか!
ヒデの事が気にはなるが、ここで油断すれば全滅もあり得る。多分このサメが回復や強化を掛けていた張本人だ。こいつのボールは7~80cmはある。静香の2倍だ。それにクエもまだ1匹残ってる。
「出し惜しみは無しよ。全力でまずはクエから行く!マサは少しの間サメを」と言って静香に目で合図し、クエに向かって突撃する。
マサもおそらくスキル全開でサメと対峙しているようだ。
私達がいかに早くクエを倒せるかが勝敗を左右する。静香がボールを撃ちながら縮地で私を置き去りにして、フルパワーで剣を振るう。槍で受け止められるがそれで良い!完全に静香に気を取られた一瞬を見逃さず、スキル「不意打ち」を使って後ろから首を横に斬り飛ばす。
いつもは先頭で戦っているので忘れがちだが、こんなスキルも持っている。
残すはサメだけか?周りを見回してみるが
建物内はかなり広く、階層もありそうなので、このサメだけとは思えない。それでもまずは1匹づつ倒して行くしかない。
マサを先頭に、左右に私と静香が構える。まだ田中はヒデの治療中のようだ。サメは生意気に盾を左手に、三叉の槍を右手に構えている。
まずはマサがスキルでサメの注意を引くと静香がハイドロボールを撃つが、盾で打ち消されてしまう。しかしそこで終わりではない。私が身体強化を使って同時に飛び込み、バトルダンスで斬りつけていく。サメは盾と槍でかわしていくが、こちらのほうが速さは上。少しづつ剣がサメの肌を傷付けていくのだが、皮膚が固くて深手にならない。まるでヤスリを斬ってるみたいで、斬より突きに切り替え無いと武器が持たない。それにこいつは回復持ちだ。
静香も後ろから攻撃を仕掛けるが、槍の石突で腹を突かれて飛ばされてしまう。マサも魔法で援護射撃をしているが、盾に弾かれてしまう。サメは確かロレンチーニ器官と呼ばれる場所で微量な電流を感知しているのだったか。
「明らかに駒不足です。ヒデと田中が戦線に復帰するまで時間を稼ぎましょう。マサはなるべく攻撃を盾で受けず回避する様に」
ボスの攻撃はモーションが大きく、しっかりと構えれば回避可能で、そこまで喰らわないのだが、こちらの攻撃ももう一歩当てることが出来ない。
しかしこちらの作戦などお構い無しにサメはボワっと光った後に血管が浮き出して一回り膨れ上がる。あちらはここからが本番のようだ。
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