第36話 五ツ星 京香 4

 取り敢えず魚人を50匹近く倒したので、今後の作戦会議をする。


 まず一番の問題はどうやって島に行くかであろう。敵は魔法か銃を撃ち込めばそれに反応してこちらに襲いかかって来るだろうから問題ない。

 船を作るには道具がない。困ったな…と考えているとマサが、

「この木を切り倒しますか?高さ30mは有りそうだから倒せれば陸地に届きますぜ。この剣と我々の能力値なら木を切り倒せれるんじゃないですかい?」


 と提案してくれる。木など切ったことはないが、本当に剣で切れるものなのだろうか。


 それでも他に良案は浮かばないのでそれしか無さそうだ。提案者のマサに木を切ってもらっている間に残りのメンバーで魚人の殲滅を再開する。


 真ん中の陸地手前に居る魚人に向かって皆で拳銃を撃っていく。するとこちらに気付いたのか、手前に居た10匹くらいが水に入って泳いでこっちへ向かってくる。


 顔が水面から無防備にも出ているので攻撃したいところだが、魔石が水の中に落ちてしまいそうなので止めておく。


 確か10匹くらいが水に入ったはずだが、30匹くらいが出てきた。まだ水の中にも居るようだ。どちらにしても殲滅するだけである。


 私は先頭に立ち、向かってくるハイドロボールを打ち落として行き、近くに居る魚人から斬っていく。ヒデに守られながら、静香も暴れている。ハイドロボールも使っているようで、偶に敵が吹き飛んでいるのが横目に見える。後ろからも田中の魔法が飛んできて敵を倒して魔石に変えている。頼もしい限りである。マサは木こり中である。


 第二波も難なく討伐終了し、魔石と素材を集めていく。素材の切り身が邪魔でしょうがないのだが、研究室に持っていけば喜ばれそうなのでしっかり集めていく。魔法のスクロールも「アイシクルランス」「アイシクルバレット」の2冊落ちていた。ヒデがバレットを覚える。ランスは後でマサに使って貰おう。盾役でも魔法は覚えておいたほうが良い。


 島の正面に敵は居なくなってるので、1/4周まわってまた敵に弾を撃ち込むと、また手前の敵10匹くらいが水に入って向かってくる。今度は何匹来ても良いように構えて待つ。


 今度は20匹くらいが上がってくるが、片っ端から倒していく。水の中から撃ってくるハイドロボールを叩き斬り、突き出される槍を弾きながら両手の剣を振り払っていく。


 静香の放つハイドロボールは、すでにサッカーボールサイズになっていて、一撃では倒せないが敵を吹き飛ばせる威力はあり、飛んで倒れた所を難なく首?をはね飛ばしている。


 多少少なかったが、三波目も無事倒しきった。これで既に100匹近く倒しているが、まだ島には数匹うろついているのが見える。

 当然島の反対側の沼の中にもまだ潜んで居るだろうから、これで半分終了と思っておいたほうが良さそうだ。


 マサの方を見ると半分を越えたところみたいだ。木を倒す方向を大きく切れ込みを入れて、最後に反対から切り倒すらしい。


 皆で少し休憩を取ることにして、簡単な昼食と静香持参のスイーツを食べる。静香は必ずなにかしかスイーツを人数分持ってきている。これが女子力と言うやつかな?


 マサとヒデが切り身の匂いを嗅いだり、持ち上げて見上げたりして観察している。

「おいヒデ。この切り身は食えると思うか?」


「どうなんでしょうね?どちらにしろ魚だから鮮度が大事じゃないですか?」


「食える様ならその場で刺し身にして食いてえな。ここの部分なんて大トロみたいじゃないか」


「マサさんがまずは毒味役として一切れ行ってみますか?毒だとしても田中さんがキュアで治してくれますよ」


「馬鹿野郎!まずは研究室に持ってかないとヤバイだろ?俺を何だと思ってるんだ?」


 ゲラゲラと何だか楽しそうな二人である。私としてはたとえ食べることが出来るのだとしても、あの魚人の切り身だと考えると食欲が無くなってくると言うのに。


 豚人の肉もそうだが、二足歩行の生き物の肉は何だか気が引ける。


「休憩は終わりにして再開しましょうか。マサは引き続き木こりで良いですか?ヒデと変わりますか?」


「いや、もう少しなんでこのまま切り倒してやりますよ」

 と力こぶを出して言ってくる。

 

 任せて平気そうなので我々はスタート地点の反対側に周り、魚人を釣る。10匹程がこちらに向かって水に飛び込んでいる。


 流石に四波目ともなると慣れたものである。30匹くらいを殲滅したところで、木が倒れて行くのが見えたので、マサの方へ向かうと木が倒れた振動で気付いた魚人共が、島に届いた木の先端に集まっている。


 マサと合流した私達は、木の上を渡る順番を決める。私が先頭で行くと言うと皆に止められてしまった。まず盾持ちのマサ、その次に遠隔で魔法を撃てる田中、次に静香、私、最後尾にヒデが続く。


 島側でも、木で渡ってくる我々に気付いたのか、木を囲むように魚人共が展開している。その数ざっと50匹は居る。予想より少し多いいが、マサが盾でガードしながら魔法を撃ち、その間に田中の魔法が飛びまくり、静香のハイドロボールで吹き飛ばして隙間を作る。

 そこへ私が飛び込み魚人共を滅多斬りにしていく。


 敵は密集しているので、こちらとしてはやりやすい。剣を振れば必ず当たる。槍に当たったとしても気にしない。敵も槍を振りづらそうに突きづらそうにしている。


 そうこうしている間にマサとヒデが割り込んで来てスペースを広げてくれる。そこに更に田中の魔法、静香の剣戟が轟く。ハイドロボールは打ち止めのようだ。

 敵が怯んだ隙に、私は両手に握った長剣で切り刻んでいく。倒れた敵が消えてくれるのが本当に助かる。死体が積み重なってしまうと邪魔でしょうがなかっただろう。


 見える敵は全て倒しきり、魔石を拾って行く。残りは巣の中と、水中にもまだ居るのかもしれないが、今は放置でも良いか。

 魔法スクロールと戦闘術のスキルブックが出たので、魔法はマサかヒデに、スキルブックは他のチームのために取っておく。うちのチームはほぼ覚えているから。


 残りは巨大な巣のみである。これは巣と言って良いのかわからないが、人工的に作られた1辺が15mくらい有り、5階建てのマンションくらい有りそうな土色レンガで造られた建物である。普通に我々人間が入ることが出来そうだ。


 ただ、敵の正体がまだわからないので、流石に入るのは危険だと判断し、炙り出す作戦を取ろうと話しをするが、魔法で衝撃を与えてみようと言うことになった。


       

        ★★★



「雫〜。そろそろ始まりそうだから見ておいた方が良いよ〜」


「あい〜。おー南側の剣姫が最初に到着か!流石だね!」


「かなりのペースで進んでいたからね。それでも200匹のシーモンクには苦戦するだろうと思ってたんだけどなぁ」とニヤニヤしている。


「でもこの人って、乱戦の方が適正高い様に感じるんだけど?」


「スキルの良いの持ってるからかな〜?それでもシービショップには苦戦するさ!だってあいつは俺のオリジナルデザ…」


「あ!始まるね!どうなる?ちゃんと映像は録画できてる?」


「あ…あぁバッチリだよ!楽しみだね〜」


「すぐにアップするの?」


「いや。ネタバレになっちゃうとつまらなくなっちゃうからすぐにはアップしない予定だよ」


「そっか〜楽しみだね!」


「そうだね!楽しみだよ!」


アハハハ、ウフフフ






 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る