第34話 中層域探索二日目後半
簡単な昼食を済ませ、休憩を取りながら皆でオークの肉やイノシシの肉がどれほど旨いか、想像を膨らませる。
気を失う程旨い、とか手が止まらなくなる程旨いとか、想像してはゲラゲラ笑い合う。
こういう時間は本当に楽しい。探索者第一期の特権かもな。我々の後ろに道が出来る的な?まあ夜の宴会も楽しいけどね。
休憩を終えて探索を再開する。ヤマに索敵を任せながら、慎重に進んで行くと、スライムが居る。しかも3匹もいる。
「昨日の1匹でも苦戦したのに」と愚痴りながらも、取り敢えずアキとウォールを使って防御を固め、皆ウォールの後ろにまわる。
俺のウォールの後ろに3人廻ったのは必然なのか?
昨日試せなかったロックスピアを1匹に向かって使ってみると、見事に串刺しに出来たのだが、また消える直前に酸を吐いてきた。
だが予想通りウォールに当たって吹き飛ばせた。
これで幾分かは怖さが減ったが、触手攻撃がいつ来るかわからないので近接は危険だと思い、また昨日と同じくアイスアローを当てて銃で撃って行く。
これが一番コスパが良い気がする。この後に何と遭遇するかわからないので、なるべく魔法を温存しておきたい。
全てのスライムを倒し終えて魔石を拾おうと近づくと、またゼリーまみれになっている。皆を集めて、
「昨日も魔石がこのゼリーにまみれて取りづらかったんだけど…」
と愚痴るとヤマが
「これがスライムの素材ってことは無い?」
と鋭い見解をみせる。
「そういう事か!敵は消えてるのにゼリーだけ残ってたから、おかしいとは思ったんだよ」
そう言いながら魔石を小枝で挟んで拾い上げる。このゼリーは強酸ではない様で、グローブでちょっと触れても溶けたりはしないが、恐る恐る指の先で触ってみると、ピリリとして、指の先の皮膚がツルツルスベスベになる。ヒールを掛けても皮膚のツルツルは治らないので、怪我や火傷をしたわけではないようだ。
思い切って手のひらを漬けてみると、手の汚れなどが綺麗になっていて、スベスベな肌を手に入れてしまった。
「これは皮膚の表面を薄く溶かしてるのかもな。いつか美容系で役に立つのかも知れないね」
と未来の美容液に期待が高まる。
一応念の為ゼリー状の液体を集めて、ラップに包もうとすると、ラップは溶けてしまう。これを回収するには瓶が必要な様だ。
素材は余す所なく回収しなければならないが、回収出来ない物はしょうがない。
諦めて探索を再開する。するとまたオークが2体座って木に寄りかかっている。
今度はフレイムバーストは無いので、ガチで戦ってみる。
ヒサがスキルで引き付ける。プロテクトと硬化も使っているようだ。
その間にヤマの気配が消える。隠密を使ったようだ。
オークがヒサに向かって突進してくるので、2体まとめて蜘蛛の糸を放つが、なんと大斧で絡め取られてしまう。
一同唖然とする。なんせ必勝パターンだと思っていたので、一瞬だが皆、止まってしまう。
オークがその一瞬の隙を突いてヒサに大斧を振り払ってくる。ヒサも一瞬止まってしまっていたが、ギリギリ盾で防ぐ。
だが体勢が悪かったのか、攻撃も変な角度で受けてしまったようで、盾に亀裂が入ってしまう。
そのまま押し込まれてしまうヒサに、追撃をかけようともう1体も大斧を振り上げる。
だがその大斧が振り下げられる事は無かった。
大斧を振り上げたオークは、隠密状態で後ろから現れたヤマによって頭をクラッシュさせられた。
オークは完全に油断していたようで、無防備過ぎたのか、クリーンヒットしたようだ。
残りのオークも、コズの攻撃を腹にくらい、前屈みになったところをアキのハルバードで首を斬られ魔石になる。
魔石を回収し、また出た肉500gをラップで包み、カバンにしまう。これで1.5kgである。結構ドロップするよね。
オークの武器や鎧も一緒に消えてしまうのはオークの一部扱いなのであろう。大斧がドロップしても困ってしまうけど。
念の為ヒサにヒールを掛けて、予備で持ってきていた盾に交換して次の魔物を探す。
その後は狼2頭を倒して、魔法エアプレッシャーのスクロールをゲットする。狼は風系のようだ。
そしてイノシシ2匹を危なげなく倒して帰路につく。イノシシの肉が1kg出たので肉パーティーしたいねと皆で話しながら転送門をくぐる。
ギルドで5cmの魔石16個に3cmが50個近くに2cmが10個程を渡すと驚かれる。まあ普通に大量だよね。
装備をしまい会社に帰って素材を渡しながら、今後は瓶が必要になることを職員に伝えておく。ミーティングでも話すけど、先に伝えておいてあげる。
他の班も戻って来たので、ミーティングが始まる。
内容はほぼ昨日と一緒だが、ウォール系の有用性と、スライムの素材で出るゼリーの今後の有用性と、回収には瓶などがあると良い事を伝えて報告を終わらせる。その後は他の班の報告を聞いてミーティングは終了する。
他の班で、大蛇の鱗付きの皮が出てるようだが、今後鱗の皮を盾やプロテクターに貼り付けてコーティングするなりした防具は出来ないものだろうか。ナイフやナタの攻撃を弾ぐくらいだから使い道は多そうだと思う。
その後はいつもの様に食堂に移動して、皆で騒ぎ始める。7班のリーダーのミドリに、「ミドリ、狼からエアプレッシャーが出たこけどまだ欲しいか?」と言うと、
「まじか!やっと出たのか〜じゃあ明日の朝もらって良いか?ウチからは明日出たやつで良さそうなのが有れば明日の夕方渡すよ」
と喜んでくれた。その後に5班のリーダーのヤスを探して、ドロップがどうなったかきいてみると、
「おうイソ、アイシクルランスって言う魔法が出たけどどうする?」
と逆に聞いてくるので、エアカッターと交換することで話しはついた。
「中層域で氷系魔法って何処かの班でドロップしてるのか?」
と周りに聞こえる様に聞いてみる。
「ウチはまだ見てない」と皆が首を振っている。
「スライムって何系になると思う?どう見ても水系だけど今まで水系って無いみたいだから氷系になるのかな?」
と疑問に思ったことを聞いてみた。
「酸だからアシッドだろうけど、それも無いよなあ?スキルで出そうだけどな〜、アシッドスプレー!とかミストーとかな!」
とミドリが大声でスキルを発動する動きをして皆で爆笑する。いつもの事だが黙っていればヤンキー上がりの綺麗な姐御なんだけど、こいつは中身オッサンだ!と一人で納得して、爆笑の輪に入る。
こうして探索12日目の夜は更けて行く。
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