第33話 ウォール系魔法
ダンジョンに転送され、ミドリを待ってキュアを掛けてあげる。するとみるみる顔色が良くなっていき、元気ないつも通りのミドリに戻っている。他にも二日酔いは居ないか聞いてみると、2名居たのでキュアを掛けてから探索を始める。
まずは担当の蜂の巣を討伐しに行く。昨日試せなかったロックランスを使ってみたいので、巣の方を任せてもらう。
蜂の本隊はアキを中心に周りが援護して討伐していく。3cmの魔石と素材の顎、魔法ウィンドウォールが出る。
そういえば今まで一回もウォール系を使ったことなかったけど、スライムの酸攻撃とか防げちゃうんじゃ?と思い、貰って使ってみる。今まではアキしか持っていなかったので、使っている所を見たことが無い。
ウィンドウォールを使ってみると、自分の前方1m辺りに薄っすら風が下から上に吹き上げてのが見える。
ヤマに近くにある小枝を投げてもらうと細切れになって吹き上げられていく。
皆は「おぉ〜」と感嘆してくれている。いやアキ、貴方も持ってますよ?とは言わずに、「アキもやってみてよ。どう違うか実験してみよう」と提案する。
魔法は賢さによって威力が変わってくる。俺はお陰様で賢さは30ある。魔法使いまくってるからね。
アキのウィンドウォールに小枝を投げてみると、粉々とは言えないが、何箇所か折れて少し吹き上げられて落ちてくる。
俺の威力とは差があるが、積極的に使って行くことで合意してもらう。幾らヒールが有るからとはいえ、酸が目に入ったりしたら大変だ。ヒールでは部位欠損は治せない。
なので自己防衛は必然である。今のウォールで何処まで防げるかはわからないが、やらない手は無い。
まだウォールが出ているので、ヤマに落ちている石を強めに投げてもらうと、やはり吹き上げられてこちら側には来ない。それならと念の為にヒサから新しい盾を借りて、ヤマに本気で石を投げてもらうと、貫通してくる。ただしかなり狙いがそれて、頭の上を通り抜けて行った。
「ウィンドウォールスゲー!」と皆で感嘆する。風系だから視界も遮られず、少し違和感がある程度なので、使い勝手も非常に優れている。
他の班は使ってるのかな?使う様な強敵に出くわしていないだろうけど今後は有用になってくる。
実験を終わらせ、巣の討伐に向かう。巣にはまだ外に10匹、中にも10匹いるが、早速ウィンドウォールを出しながらロックランスを巣の真ん中辺りをイメージして使ってみる。すると巣が少し揺れた様に見えた。
「ん?」と全員が首を傾げていると、巣から蜂が飛び出してきて襲いかかってくる。
一瞬出遅れたのだが、ウィンドウォールにぶつかった蜂が次々に上へと千切れ飛んで、魔石に変わっていく。凄く楽なんですが…。
「スゲー」と皆で感動しながら、魔法や武器で殲滅して終了。
ヤマが女王蜂の気配も無いと言うので、巣を壊してみると、魔石と魔法スクロールを残して消えていた。
「もしや初撃のロックスピアで倒してたのかな?」と言って、もう一度ロックスピアを使ってみると、地面から2m位の岩の槍が突き出してくる。これで人知れず倒していたらしい。
ドロップした魔法はエアカッターで俺は覚えているので、アキに使ってもらって、賢さ上げを頼んでおく。ウォール系の強化につながるからね。
その後は、早足で中層へ向かう。ウチの班では俺が一番歩くのが遅い…これはしょうがない事ではあるのだが、こんなはずでは無かったのに…。最近では自分でも後衛にドップリ浸かってしまっている。
向かう途中の雑魚を狩りながらどんどん奥に進んで行くと、木々が太くなってきて雰囲気が変わってくる。中層の入口辺りに到着したようだ。
大体昨日と同じ場所に来ている。ヤマに周囲を警戒してもらいながら探索していくと、早速狼が3頭現れる。昨日話し合った作戦通り、ヒサがスキルで3頭共引き付けてる間に、他で弾幕を張る。
明らかに嫌がっているのがわかる。俺はヒサの隣りに移動して、ウォールを発動。これに突っ込んでくれればダメージを与えられるのだが、警戒させてしまったようだ。何故か狼は魔法を感知するんだよな。ヒゲで感知でもしているのか?
弾幕に痺れを切らして飛び出して来た1頭をコズが横から殴り、反対側からアキに斬り捨てられる。連携が崩れてしまえばこんなものなのね。残りの2頭は一斉に飛び掛かって来るので、蜘蛛の糸で捕縛して殲滅終了。魔石と素材の牙と爪を回収する。
コズが昨日グローブの改造を頼んでいたけど、針より爪の方が良い気がするのは俺だけか?と聞いてみると、
「爪だと引っ掻くイメージでしょ?私は殴りダメージに追加で刺突ダメージが加われば一石二鳥かなって思ったの」
ほうほう。理に適ってるっぽいな。賢いぞコズ!
その後は昨日とは反対側を探索してみる事にする。慎重に移動していくと、ヤマの止まれのサインが出る。そして前方を指差してアゴで合図してくる。
指の差す方には木があり、その木に隠れてその先を覗いてみると、昨日オークと決定した魔物が3頭?3体?座っているのが見える。3体で行こう。胴体には革っぽい鎧を着込み、膂力の有りそうな骨格から、筋肉が浮き出した肩が目につく。太い腕にもガードを着けている。そして話しに聞いていた大斧が脇に置かれている。
これは今まで見てきた敵の中で最も強そうだ。だがまだ気づかれていないので、先制攻撃のチャンスだ。
一旦離れて作戦会議をする。
「初手でフレイムバーストを撃つ。どれだけ敵の耐久力があるかわからないので、各自打ち漏らしに備えておいて」
未だ1日1回の魔法をここで使う。この魔法を使う時は今でも緊張する。
また先程の木の陰に進み、敵の中心に向かってフレイムバーストを使う。空気が一気に圧縮され、敵の中心が一瞬輝き、一気に爆発する。周辺一帯をオーク諸共消し炭に変えていた。中層でも余裕で通用するようだ。
メンバーも未だに慣れない様で、少し顔が強張っているのがわかる。魔石を回収し、噂のオークの肉も500g位の塊が2つドロップしていたのでラップに包んで俺のバックパックにしまう。後衛の宿命なのか?それともリーダーの宿命?どちらにしても黙って持つ。
ここら辺で昼食の時間になるので、休憩を取ることにする。昼食と言っても簡単な栄養補給食品であるのは味気無い。オークの肉が俺のバックパックに入っているのに…。
何年後かにはドロップした肉を普通に食べながら遠征をする時が来るのかな?今の我々にとっては未知の食材であるのだが。
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