第32話 報告会 ★

 11日目の探索を終え、ギルドに戻り魔石を渡し着替えて帰社。


 ミーティングルームで他の班が帰って来るのを待つ間に、今日ドロップした素材を提出していく。蜂の顎に狼の爪と牙、イノシシの牙と肉。

 肉を出すと、探索部部長の有馬さんや顧問、他の職員も驚いていて、ツンツン突っついている人までいる。


 肉はそのままラップをされて、運び出されていった。研究室に持っていったのだと思う。ダンジョン産の食材が食べられるのかは俺もかなり興味がある。食い気では無く、地球外生命体である魔物が出す食材だからである。まずは毒の有無、成分や栄養素、人間が消化出来るのか、他にも気になる所だが、すぐに答えは出ないであろう。こう言うのでもマウスに食べさせてみたりするのかな?人間の為に頑張ってくれ!


 職員と話しながら、コズがメリケン付きグローブの手の甲に蜂の針をくっ付けられないか相談している。「コズ、それはキン○マンで出てくるウォー○マンになっちゃうよ!」と突っ込みを入れると、「そうそれそれ!」と言われてしまう。当たってたのね!


 余談だが、コズが作ってもらったメリケン付き腕ガードと、アキのレガースは何気に人気があり、他の班の探索者も使い始めている。格闘術は比較的落ちやすいからかな。


 その後皆が揃ったのでミーティングが始まった。俺の班が一番最初なので、今日戦った敵やその特徴、討伐方法などを皆で話し合う。

 やはり一番の問題は剛毛と皮の硬さで、そのせいでなかなか致命傷にならない。他の班も狼とイノシシは遭遇したみたいだ。


 それとスライムについても伝えておく。ちなみにスライムに会ったのはウチの班だけだった。


 スライムの大きさや、酸による攻撃に注意が必要だと、ヒサが被ってたヘルメットを見せて報告する。


 討伐方法は氷系魔法を使った事と、その氷系魔法が刺さった周辺を凍らせた事を情報提供しておく。


 やはり今までは一撃で倒せていたので、皆知らなかった様だ。


 肉に関しては、他の班でも出ていたようで、明日からはラップを持ち歩こうと決まった。


 その後の報告では、人型の豚の様な魔物2体と遭遇した班がいて、かなり強敵であると言っていた。人型の豚と言えば「オーク」であろうと結論付ける。


 そのオークは両手持ちの大斧を振り回し、鎧を着込み、力も強く、体力も多いらしく、致命傷を与えるまでに時間が掛かるようだ。そしてそのオークからも肉が出るみたいだ。興味深い、豚肉になるのだろうか?


 大蛇と遭遇した班は、武器での通常攻撃は鱗に弾かれ、滑らされて有効打を与えられず、魔法で燃やして、潰してなんとか倒せたみたいだった。素材として鱗付きの皮が出たようだ。


「中層域の敵は、ナイフだとスキルを併用しないと刃が立たず、それよりは打撃系の武器が有効になってきていると思われる」と追加で報告しておく。


 その後、佐藤顧問が軽く中層探索初日を労ってから今日の報告をまとめて、先端に重りを付けたロッドの様な物が欲しい、と上に報告してくれるということでミーティングは終了。

 最初はモーニングスターと呼ばれる持ち手からチェーンで棘付き鉄球が取り付けられた武器を用意する方向で話が進んでいたのだが、取り扱いが難しいみたいで却下となった。


 ミーティングが終わり、いつも通り食堂へ場所を移し、酒を飲みながら今日の探索の話で盛り上がる。盛り上がりが一段落したときに7班のリーダーのミドリが余計なことを言い出す。


「おいイソ、お前コズエとやっただろ?今朝朝帰だったじやないか」

 と言って周りと共に「ヒューヒュー」と大はしゃぎである。


 こいつ…オブラートに包むタイプでは無いとは分かっていたがここまでとは…ここで何を?とトボケるのはダサイ。


「……あぁ」これはダサくないよね?


「アハハハ!聞いたかよみんな『あぁ』だってよ!ダセーなぁ!」 


 真似をされながらからかわれる。酔っ払いでいるよねこういう人。


 コズは照れて赤くなっているが微笑んでいる。


「うるせえ…良いだろ別に」

 俺も照れくさくなってきた。


「良い、悪いじゃないんだよ。幸せにしろよって事だよ!」

 と急に真面目に言い放つミドリ。


「幸せにするもなにも、明日をも知れぬってやつだぜ俺ら探索者は」

 とはぐらかす俺に、


「それでもだよ!」

 とミドリが机を叩いて声を荒らげる。なんか説教されてる気分だ。


「わかってるよ…」

 そう言って納得させる。


 その後はコズに、「酷いことされたらワタシに言いな。ワタシがぶん殴ってやるから」とか姐御肌全開の物騒な話しで周囲のメンバーと盛り上がっていく。


 多分、ミドリに言うよりコズが直接殴った方が強いよな…。とは口が裂けても言えない。結局いつも通りどんちゃん騒ぎで夜は更けていく。



        ★★★



「お、今日から北側と南側は奥に進んで来たな〜」


「へ〜、兄ちゃんが配置したあれはどうなったの?」


「まだそこまでは辿り着いてはいないみたいよ。東西南北に同じ集落造ったからね。どこが最初に討伐するか楽しみだね」


「そうだね!これが討伐出来ない様だとバトルエリアもキツイかもね…ランクとしては一緒くらいだもんね?」


「お!思い出したのね?」


「…ん?アハハハ…でもアレよ!確かキモイのが出るんじゃなかったかな?」


「キモイの…? あぁ、アレじゃない?雫が一時ハマってた海外のドラマでほら」


「あーー!そうだ思い出した!それだそれだ!あーー良かった思い出せて!エヘヘ」


「アハハハ。良かった良かった!思い出せて」


エヘヘ。アハハハ。


「それよりもほら。このコアのココとココの部分見てみてよ。小さいけどこれって穀物と大森林だよな?」


「わぁ〜ほんとだ〜。こんな感じで広がっていくんだね〜」


「まぁ10km四方じゃまだ拡大しないと見れない大きさだな。大森林の方はなんとか見れるけど」


 まだまだ先は長いや…。


        ★★★


 

 探索12日目朝。


 昨日は話題の中心人物にされてしまい、かなり遅くまで騒いでしまった。それでも酒は残っていない。そこは自信を持っている。


 チラッとミドリの方をみると、顔を真っ青にして偶にエズイてるように見える。あれは完全に二日酔いだな。


「ミドリ、お前完全に二日酔いだな?ダンジョンに転送したらキュア掛けてやるよ」


 こんな使い方したことないからわからないけど、酒は毒扱いでキュアなら治るはずである。


「助かるわ〜是非お願いね…オェ…」


 その後、5班のヤスを見つけて、昨日蜂から出た風魔法と、蟻から出る氷魔法のトレードを持ち掛けておく。氷魔法は有用そうだしね。


 朝の朝礼が始まり本日の注意事項などを伝えられ、皆準備運動をして今日の探索スタートである。






 


 

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