第31話 中層域探索

 最初に出てきたのは狼が3頭。デカい。頭を下げて威嚇してくる。尻尾の先まで入れたら多分2mはあると思う。

 ヒサが3頭をスキルで引き付けて、コズ、アキが1頭づつ受け持ち、俺とヤマが援護に回る。だが、狼共も動きに統制が取れていて、近づいてくる者と離れて行く者とがスイッチしながら、ヒサに狙いを定めて連携しているように見える。魔法を撃っても何かに反応して、ギリギリで躱してくる。


 お互いに一旦距離を取り、ヤマが隠密で気配を消すが、どうやら匂いに反応しているようで警戒される。銃は当たるが硬い毛と皮に守られて深く傷を付けられない。


「次ヒサに向かって来る狼を糸で狙い撃つ。糸に掛かったら残りの方を集中攻撃」

 と指示してヒサの横へ移動し、向かってくる狼に蜘蛛の糸を発動すると、不意を衝けたのか網に掛かってくれた。狼も噛みちぎろうと必死に暴れているが、糸は噛みちぎれないようだ。

 仲間の暴れ回る姿に驚いたのか、残りの動きも止まっている。そこへコズが縮地を使い一気に距離を詰め渾身の右ストレート。吹き飛んで木に当たって魔石に変わる。

 アキの方の狼も隙を見せた一瞬で首を切り落とされ、魔石に変わる。


 残った1頭を少し観察してみると、牙と爪の鋭さが眼を引く。それとやはり体毛の硬さが問題だ。トドメを刺そうと、1mの距離から拳銃でボディを撃っても途中で止まってしまい、致命傷には至らない。頭に至っては、頭蓋骨を貫通する事が出来ない。

 

 首をハルバードで切り落として魔石に変える。コズのパンチなら脳を揺らすので、効果はあると思うが、連携してくる狼は厄介と言う事がよくわかった。虫のように直線でくる事も無い。

 ヒサも「かなり衝撃がくる」と今迄でとは違う強さの敵に興奮している。


 ドロップした魔石は5cmと、巣のボスと同じ大きさだが生物として狼が厄介なのか、もっと強く感じる。素材は牙、爪がでた。毛皮は出ないのか…一応今後の対処法を皆で話し合う。


「銃が効いてないわけではいと思うので、銃で牽制しながら、コズとアキで1頭づつ減らして行く感じかな?」

 とヤマが提案してくるので、「そうしよう」と同意する。


「この強さの敵の巣とか有ったらヤバイよね」

 とアキが少し心配している。


「いや、逆に巣が有ったら俺の魔法の出番だと思うぞ」

 と強がってみる。


「それより中層域の動物型モンスターはアキのハルバード以外だと硬い毛に遮られて効率悪いね。案外打撃系の方が良いのかもね」

 と気になったので提案してみる。


「それだと棍術は見ないから棒術で良いのかな?棍棒とか警棒とか言うし役に立つかもね」

 とコズが良い所を突いてくる。確かウチの班で棒術を持っているのは誰も居ない。戦闘術のスキルブックは比較的出やすいのだが、棒術はまだ出て居ない。他の班からの報告で聞いているだけである。


 その後出くわしたのがデカいイノシシで、また3匹である。イノシシの怖い所は突進と牙である。地球でも、牙でシャクリあげられた時に太い血管を切られるという事故はよく起こる。

 見た目200kgは有りそうな大きさで、これまた剛毛のように見える。

 

 ヒサがスキルを使いながら引き付けて、3匹まとめて一直線に突進してくる先頭に向かって蜘蛛の糸、3匹ごと動けなく出来たので、1匹に向かってヤマがナイフでヘッドクラッシュを使ってみると一撃ではクラッシュしない。そのまま首にナイフを突き刺すと魔石に変わる。


 残りの2匹のウチの1匹に魔法を当てて見る。アイスアローとストーンバレットは皮膚から5cm位刺さって消える。皮下脂肪の下の筋肉で止まってしまうようだ。エアブラストで空気の塊をぶつけてみると、口から血を吐いた。内蔵にダメージを与えれたようだ。そのままトドメを刺して魔石へ。

 残りの1匹も皆で銃で撃ったり、魔法を撃ったりしながらデータを取ってトドメを刺す。

 魔石の大きさは5cmで、魔法「ロックランス」のスクロールと素材が出た。

 

 ロックランスは 岩の槍的な?土系になるのだろうが、土系って物理ダメージのイメージが強いんだよな。イノシシは見たまんま土系なんだね。じゃあ狼は?

 

 素材は牙となんと肉がブロックで1kg位出た。おそらく一匹分だと思う。何処の部位かはわからないが、これはかなり衝撃的では無いだろうか。この肉が食材として使えるかどうかは研究室で調べないとわからないが、食材は素材になるだろうから会社に提出する義務がある。腹が減ったからと勝手に食べる事は出来ない。


 もっと奥に行けば、もっと凄い食材が出るかもしれない。ドラゴンの肉とか?今後レア食材と呼ばれるダンジョン産の食材が世間を騒がす事になるだろう。食べられればの話だが…。


 持ち帰るにもバックパックは背負ってるが、肉を入れる袋がない。直接入れるには抵抗があるので、そこら辺にある葉っぱで包むことにした。


 その後も探索は続き、スライム1匹と遭遇する。手前にいたスライムの縦横共に倍の1m弱はありそう。身長が2倍になると体積は8倍になると聞いたことがある。縦にも横にも2倍になるとどうるんだ?体積が8倍になったから横にも膨れたのかな?


 そんなどうでも良い事を考えながら、スライムを観察する。「あの日」ダンマスがスライムに乗って現れたとき、スライムが触手を四方に放って、机や壁、天井を穴だらけにしたのは、ここにいるメンバーは観ていて知ている。

 浅層のスライムは何もさせずに瞬殺であったが、この大きさだと何をしてくるのか注意が必要だ。


「まずは遠目から魔法を放って様子を見よう。ヒサは触手が来るかもしれないから盾を構えておいて」

 

 そう伝えて魔法のアイスアローとストーンバレットを撃ってみる。


 アイスアローは先端が少し刺さり、その周辺のゼリー部分を少し凍らせた様だ。今まで気付かなかったが、こんな効果が有ったなんて誰も知らないのではないか。今日のミーティングで報告だな。


 ストーンバレットは威力としては変わらないが、刺さったあと弾力で弾かれてしまう。


 まだ凍ったままの場所を狙って皆で銃を撃って見る。すると凍った場所が削り取れてゼリーが溢れ出して萎んで行くではないか。


 ロックスピアも使ってみたかったが、このまま放って置こうと思った時に、スライムが最後っ屁で液体を吐いて魔石に変わった。その液体がヒサの盾とヘルメットに掛かると、みるみる溶けていく。


「急いで脱げ!酸だ!」と叫ぶ様に言う。


「うお〜〜」と言いながらヒサは慌てて盾を捨て、ヘルメットのあご紐を外そうとしているが慌てていて上手く外せない様だ。そうこうしている間にも、シールドはすでに溶けて無くなっていて、ヘルメットはまだ溶け続けている。


 なんとかヘルメットを脱ぎ捨てて人心地つくヒサのオデコが少し火傷の様にただれてしまっている。

 

 ヒールを掛けると、痕がみるみる消えて綺麗に治った。


 スライムから出た5cmの魔石が、スライムのゼリーの中に転がっているので、落ちている枝で巧く拾い上る。スライムは死ぬと消えるのにゼリーは残るの?と疑問に思いながら盾とヘルメットが無くってしまったので、今日の中層探索はここまでにして浅層で残り時間を狩りに費やし帰路につく。





 



 

 


 



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