第23話 バトルエリア ★
実験は午前中で終わり、アキの腕も元に戻っているようなので、昼食を取ったあと我々はダンジョンの蜂エリアへ向かっていく。
取り敢えず会社から3cm大の魔石を3個と実験で使った4cm大の魔石を1個貰い、武器には3cmの魔石をハメている。
ドロップ品を直接使うのは、まだ法律的に不味いみたいなので支給してもらうことになった。
バレなきゃ良いと言うわけにはいかないみたいね。当然か。
もう蜂の巣の場所も把握しているので一直線に目指す。
途中で蜂の本隊が襲ってくるが、もう慣れたものである。他より少しだけ広い場所でアキがハルバードをフルスイングすると、5~6匹が消えて、魔石に変わる。実際に斧の部分に当たっていなくても、衝撃波によって消えていく。
俺らも魔法や拳銃で落としていく。呆気ない物である。
控え目に見ても、ここら辺で俺らを止められるモンスターは存在しない。
あの森の中心の建築物に速く行きたい。もちろんその手前にも強敵は居るはずである。
そんな夢を妄想しながら、蜂の巣の前に到着する。
アキが「ちょっと行ってくる」と言って、ハルバードを振りかぶったまま走り出し、蜂の巣に向かってパワースラッシュを打ち込む。
衝撃波と共に凄い音が耳を
蜂の巣は周りの木ごと無くなっている。
周りに居た蜂や中にいた女王蜂を含むすべての蜂が魔石に変わり消え去った。
そしてドヤるアキ…これは凄いな。
これでは移動時間の方が討伐時間より長かった。
それでもスキルブックと魔法スクロールは出るわけで、有り難い事である。
スキルブックは「ヘッドクラッシュ」と「長剣術」、魔法は「ウィンドカッター」と「エアプレッシャー」
「ヘッドクラッシュ」は頭を狙うとボーナスとか?
「ウィンドカッター」は風の刃で斬るのかな
「エアプレッシャー」は空気圧で押しつぶすかな?大気圧と言うのかな?そんな感じで、他の魔法よりランクが上っぽい。
「ヘッドクラッシュ」はヤマに使ってもらって、隠密からの「ヘッドクラッシュ」なんて斥候冥利につきるでしょう。
「エアプレッシャー」は俺に使えと皆の目とアゴが言っている。
「長剣術」と「ウィンドカッター」は保留にする。他の班とのトレードが出来るか聞こうという方針にした。火魔法が欲しいね。森ごと燃えても翌日には元に戻ってるしね。
そして宝箱には何か黒い珠だけが入っている。
ゴルフボール位の大きさで、古いヨーロッパの方で使われてた様な文字で多分「D」と書かれている。
ボールを手に取り、目の前に持ってきてじーっと見つめると、
『ここでは使用出来ません』
機械的な音声アナウンスが脳内に流れた。
ビックリして珠を落としてしまう。それを見て、メンバーもビックリしている。
「今の何?聞こえた?」
と周りに聞くと「ん?」と言われた。
「見つめてみ」と言ってヒサに珠を渡してて見てもらう。
「うわ〜っ」と言って、ヒサもビックリする。
「ビックリするだろ?」と仲間が出来て嬉しくなる俺。
メンバー全員にやってもらって、意見を求める。
「わからん」と帰ってきたので、「俺も」と答えるしかない。
この珠は保留にして、来た道と違うルートを戻り、雑魚刈りしながら、転送門への帰路に着く。
ダンジョンから出ようと、転送門を
『Dランクバトルエリアに飛びますか?YES NO』と響いた。
これは……と考えていると、後ろを歩いていたコズがぶつかってきた。
「痛った〜〜。急に止まらないでよね!」と鼻をさすりながら涙目で怒られた。
「ごめんごめん、ちょっとコズ、この珠持って門潜ってみ」
と言ってコズに珠を渡して門を潜らせてみる。
「なんかバトルエリアに飛ぶか聞かれてるけど何?どうすればいいの?」
とプチパニックになっている。可愛いなぁ
と思いながら、
「NOと念じて」
と促して、黒い珠を受け取り直す。そしてまた門を潜り、ギルドに戻り、いつも通り装備を脱いで、会社に戻る。
ミーティングでの報告で、
「魔法ウィンドカッターとスキル長剣術が余ってます。同等レベルの火魔法スクロールとの交換を希望します。それとこの黒い珠を拾ったのですが、どうやらバトルエリアへの転送トリガーのようです」
と報告する
「バトルエリアですか?それはどういったものなのでしょうかね?」
と部長に聞かれたので
「隔絶された特殊エリアで魔物との戦闘を行う場所だと認識しています。このDランクがどの程度なのかはわかりませんが、敵を倒せば、何らかの報酬が出る場合が有ると予想されます」
と、web情報をそれっぽく伝える。だって知らないもの。
「そういう事ですか。敵を倒せなかったらどうなるのでしょうね?」
「敵を倒せない=こちら側の全滅となります」
「ふむ……」
と部長は考え込んでしまう。
「磯山さんは、どう考えているのです?」
と今度は顧問が口を開く。
「私の班は、ぜひ挑戦してみたいと考えております」
と、予めメンバーと決めていた結論を伝える。
「ただ、何人入れるかわかりませんが、サポートをしてくれるメンバーも募集したいとは考えております」
「ふむ〜…この話しは本社に持ち帰らせて頂きたい。ここで結論を出すことは出来ませんね」
と部長に言われた。当然だと思う。なんせ危険度や中で何が行われるのか、わからないことが多すぎて結論など出ようはずがない。
「それで結構です」と言って報告を終わる。
その後、土蜘蛛討伐、蟻討伐、ゴブリン討伐の報告を聞いていると、ゴブリン討伐隊の宝箱から、能力値アップ薬の残りが出たらしく、検証の結果を報告している。黒い液体が「チカラ」茶色が「体力」であったようた。
そんな報告を聞いた後、ミーティングは終了する。
部屋を出る間際に、ウチの班が部長に声を掛けられる。
「1班の皆さん、昼間の実験お疲れ様でした。実験結果は早くても2~3日中にはデータが来ると思いますから、来たら連絡しますね」
と言って、部長は部屋を出ていく。
実験結果か。魔石武器の結果は楽しみだ。
4cm大の魔石は音速を超えて超音速になるわけだから、スイングスピードは時速で気温にもよるが、約1200km/h以上になる。秒で約340m/sである。マッハ1超えである。
マメとして、プロ野球選手のスイングスピードは、早い人でも170km/hであるから、いかに魔石武器とアキが異次元であるかが良くわかって頂けるだろうか。
そうなると、全く同じ物が作れる訳ではないだろうが、現在開発中のダンジョン用兵器がすべて過去の技術となってしまう可能性もある。
まぁ10年後とかかもしれないけどね。
我々も部屋を出て、食堂にいくと、ゴブリン討伐担当の七班の班長の
「おいイソ。さっき言ってたウィンドカッターの魔法は風系魔法では下の方だろう?明日出た火魔法と交換してやるよ」
と言ってくれる。
「マジか!頼むよ〜。長剣術もつけるからさ〜」
交渉はメンバーから任されているので、大盤振る舞いである。
「いや長剣はいらねえな。そんかしバトルエリアに入る許可が出たら、そのサポートにウチら7~10班の班長も連れてってくれよ」
とミドリが交渉してくる。なんとも好奇心先行型みたいだ。実益よりロマンを追いかけるみたいな。
「こっちは全然良いけど、まだ入れるかもわからないぞ?」
ちょっと心配になって、一応確認として聞いてみる。
「それで全然構わない。何ならそっちの魔法とその権利なら、明日出るかわからないがワンランク上の魔法と交換でもいいよな?」
と言って、ミドリは周りのメンバーに顔を向けると、「それでいい」と言わんばかりに皆、うなずいている。完全にミドリがヒエラルキーのてっぺんに居るのは間違い無さそうだ。血の気も多いし…誰かと一緒だ。
「そんかし、明日ウチらにも黒い珠が出たら等価交換でのみだ」
そりゃそうか、初物の希少価値にこそ、それだけの交換レートが付くわけだ。「神様、明日は珠が出ませんように」と祈るしかない。
その後は夕飯を取りながら、皆でバトルエリアについて夢を語り、大いに盛り上がって、夜は更けて行くのであった。
★★★
ダンジョン10層にあるコアルーム内。
「あれ〜俺バトルエリアなんて作ってないんだけど?」
「あぁ忘れてた、ちょっと前にワタシが作っていたの。駄目だった?」
と上目遣いで尋ねられると、駄目だなんて言えるはずもなく、
「全然駄目じゃないよ!それよりどんな感じ?何が湧くの?」
ちなみにここで言う「湧く」とは「敵が出る」という意味だ。
「ん〜とね……何だったっけ…?忘れちゃった。ただなんかイッパイ湧くように作ったんだっけな?テヘヘ 忘れちゃった。」
うん。可愛いから許す!
今の所、魂の数は東で5、西で3、南でも3北で4で合計15となっている。全ての死亡報告は蜂からとなっている。
まぁまだ最初なので、探索者もかなり慎重に行動しているようだ。これは2~3年は下地作りかなあ。
これからどんどんエリアを広げて、門も増やしていく予定ではあるが、今回のようにバトルエリアで魂の回収をするのも効率は良いのか?
何か俺、悪魔的な発想になってきているな…。
とりあえず新たに小さなエリアに、動物のウサギを10羽…匹?程放しておく。ウサギなら草食って放っといても増えるかなと思って。
ここで新たな発見。人間の魂1つの大きさだとウサギ5匹に変換することができた。これは有り難い。魂の節約ができる。
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