第21話 進化
試しに蟻でもシバきに行こう。と思っていた所で、再度集合が掛けられ、今後の方針を告げられる。
1班と休養中の3班の担当エリアを残りの8班で再配置しながら補っていく。
我々が1班になり、蜂の巣の担当となった。俺とヤマのスキルが有用なため、このエリアを単独一班のみでの対応と言うことらしい。
俺自身出来る自信はあるし、メンバーも乗り気だから良いのかな?蟻からヒール貰いたかったけど…でも蜂は6cmの魔石も出るし良いかね。
そして5班が蟻で、6班が2班と合同で土蜘蛛、7~10班がゴブリン集落となった。
ゴブリン集落にも参加したいんだよな。なんせゴブリン集落で火の魔法が取れたみたいだし。それでも敵と種族による、出る魔法の系統は関係ありそうだけど出るか出ないかはランダムなので、そのうち参加してみたいと思う。
さあそんなこんなで朝礼は終わり、準備をして、いざ今日もダンジョンへ。
我々5班改め1班は、森から3kmの地点まで移動し、索敵を開始する。
ヤマにスキル「隠密」を使って貰うと、途端に気配が消える。凄い!
隠密と超音波での索敵はかなり有用で、すぐ一匹目の蜂を見つけて帰ってきた。
今日は見つけた蜂は、最初から倒していく。そして、次から次に飛んでくる蜂の方向に向かって進んでいく。
「大量に来る」ヤマの超音波に反応が有ったらしく、皆構える。
そして現れた蜂の先頭に向かって蜘蛛の糸を放つ。5~6匹を纏めて飛べないように出来た。蜘蛛の糸マジ神!
その後も迫る蜂を危なげなく30匹程を処理し終えた。これはヤマの超音波で不意打ちを回避出来ているからの戦果である。ウチの班に隙はない。
俺の魔法の威力もスキルの魔法攻撃力小アップによって強化されていた。小アップは威力20%アップみたいだ。
魔石と素材の毒針を拾っていると、おかしな点に気付く「どう見ても昨日より小さい3cmサイズだよね?昨日は4cmだったので見間違いではないと思うけど…。ワンランク下がっている?」
みな思い思い魔石を眺める。
「ボスを倒して見てからもう一度確認しましょ」
とアキに言われて頷き、移動する。
ちなみにスキルブックは「槍術」と「縮地」が出た。これは幸先が良い。
槍術はアキに、縮地はコズに渡す。
アキは中距離から、槍での「二段突き」という作戦も取れるようになった。
そしてコズはノウキンマッシグラ…
敵のランクが下がったからだろうかあまりドロップしなかった。魔法スクロールも欲しいよ!
そして蜂の飛んできた方向に歩いていくと
昨日と同じ大きさの巣が有った。
外側に這っている蜂を拳銃と魔法で落としていく。そして蜂の巣の攻略に掛かる。
コズが縮地を使ってみたいというのでOKを出す。
グローブを両手でガシガシ合わせ、構える。縮地を使った途端、コズが一瞬で蜂の巣の眼の前に現れ、そのままヘヴィショットを乗せた右ストレートを打ち込む。蜂の巣の前面から2/3が吹き飛んだ。中に残っていた雑魚蜂も一緒に魔石に変わる……言葉が出ない。
胸を張ってフンスと鼻息を荒げているコズを、皆で褒めちぎる。
まだ女王蜂が残っているからね?と皆を落ち着かせて戦闘開始。
俺の蜘蛛の糸を使って動きを封じたら、後は皆でタコ殴り、いつも通りで終了。
女王蜂の魔石を拾うと、5cmだった。やはりランクが落ちている。原因としては、初討伐だったから?というのは恐らく無い。蟻も蜘蛛も初討伐でも変化はなかったから。
そうなると理由は一つしかない。
「人を喰うとランクが上がる?」
と皆に語りかけると、皆驚いていた。でも他に理由が見つからない。
これは我々での検証は出来ない案件であるので、研究機関にお任せだ。
ボスのドロップは「エアバレット」だった。これは圧縮した空気の弾を打ち出せるウィンド系よりは上の魔法の様だ
ヤマに使って貰う。狙撃男子が誕生したようだ。
鉄の宝箱も有るので開けてみる。宝箱には敵のランクは関係ないからね。多分箱の材質でランクが決まっているのだとおもう。
箱の中には武器が入っていた。2m弱くらいある槍で、その先端には斧みたいな刃とその裏側には小さなハンマーみたいなのが飛び出した「ハルバード」という突いてよし、斬ってよし、叩いてよしのスペシャル武器が入っていた。そして柄頭がまた外れていて下から10cmほどが空洞になっていた。ナイフの時と一緒である。
取り敢えずハルバードは所有権の関係上、一旦会社に持ち帰る。ただ槍術スキルは何処まで生きてくるのかな?追々分かってくるから良いか。
巣の周りにいた敵からもスキルブック「パワースラッシュ」と魔法「ウィンドカッター」のスクロールが出ていた。
パワースラッシュは前にも出ていたもので、このスキルは一旦保留にしておく。今のところ斬属性のメイン武器を使っているのは誰もいないから。
ウィンドカッターはヤマに。ヤマのスキルにも賢さによる補整が掛かるものが増えてくるかもしれないから、今のうちに賢さを伸ばして貰おうとの考えだ。
その後は散開して時間の許す限り雑魚刈りをする。
時間になったので集合して皆でギルドへ帰る。アキとコズは上機嫌である。強くなっていく実感があるのだろう。
俺も近接スキルとか欲しい……
今日の魔石をまとめてギルドに渡して確認してもらう。最近は2cmと3cmの魔石が同量となったので、来月の給料日が楽しみだ。
歩合分は、30日〆の翌25日払いである。
受取書にサインをして装備を外して会社に戻り皆の帰りを待ってからミーティングが始まる。
まずは1班からなので、我々の班の獲得スキルとドロップ品の報告をしたあとに、
「今日気になったことが有りました。皆さんも昨日の蜂からドロップした魔石の大きさは覚えていますよね?」
「ええ、覚えていますよ。私がダンジョン省に提出しましたから。ノーマルの蜂からは4cm、女王蜂からは6cmでした。書類でも確認しています」
と佐藤顧問が言う。
これから話すことは憶測であると断りを入れてから、
「昨日の魔石は我々もそう認識していますが、本日の蜂からのドロップ魔石はそれぞれ1ランク下の3cmと5cmでした。これを踏まえて私の私見ですが、魔物は人を食すとランクが上がるもしくは進化するのではないでしょうか?」
一同一斉に俺を見る。当然である。俺も信じられないのだから。
「これに関しては我々で検証は出来ませんので、研究機関での調査にお任せするしかありません」
「それと本日、蜂の巣の宝箱から武器が出たのですが、前回のナイフと同じく柄頭が取り外し出来て、柄頭から10cmほどが空洞となっていました。前回のナイフの調査はどうなっていますか?」
「あぁ 丁度先程その武器の仕組みについて、武器開発部門から連絡がありました。どうやら柄頭を外して、そこに魔石をセットするようなんですよね。それにより魔石からのエネルギーを取り出せるかなり高度なテクノロジーが使われているみたいです。これが今まさに日本中の研究機関が開発しようと躍起になってる部分でもあります」
「ですから開発部から、ぜひあのナイフを提供してくれとの嘆願書が届きました。上層部の方でもダンジョン出土品は研究、開発のため提供してもらうとの回答が来ております」
まぁそりゃそうだよな…この武器の技術を究明解析すれば、軍事にも家電にも応用出来る様になるのだから。
「ただ、今回はダンジョンから武器が出土するとは知らずに権利の有無を事前に決めていなかった会社にも落ち度がありますから今日の今現在迄に出土した武器に限り獲得者、またはチームの物とするという事になりました」
「それを踏まえて、前回お預かりしたナイフなのですが、会社の方で買わせて頂きたいと思っております。出来れば10億くらいで手を打って頂けると助かります」
と佐藤顧問に言われる。ん?よく聞こえなかった。周りを見ても誰も動かない。
「…え?」
取り敢えずその一言だけは出た。
「いやですからエネルギーを取り出し…」
「いや…そこじゃないです…」
「あぁ、研究したいから売ってくれってところですか?」
「…いや、その先です…」
「10億でなら買取るよと言ってます?」
「「「じゅうおく!!!!」」」
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