第16話 女王蟻
「これからダンマス会議を始めたいと思います」
「わーわーパチパチパチパチ!」
「雫君、この映像を見てください。昨日北側から転送している人間が蟻塚を攻略しました。女王蟻は倒されなかったみたいだけど」
「おー!けっこう早かったね、もう少し掛かると思っていたから」
「こうなると、人間側の成長が早くなって来るかもだから、ここら辺の森の中にゴニョゴニョ」
「あーそれだったらコッチの方にゴニョゴニョ」
変なテンションの兄妹が居たとかなんとか
★★★
「働き蟻は、距離20mだったら、9mm拳銃でのヘッドショットで一撃です。兵隊蟻は数は多くないのですが、拳銃での致命傷は厳しいかもしれませんが、ナイフで関節等を狙って削るのが有効かと思われます。自分の場合は改良複合弓にて、一撃でした」
「それとよく考えてみると、ダンジョンの性質上、巣は地下にはなく、上モノだけの可能性があります」
今、ミーティングで蟻塚攻略の状況を映像とともに説明中である。
俺の使っている弓は、張力200ポンドもある化け物弓なので、常に持ち運ぶには不便でしょうがない。
それなので、蟻の弱点等を皆で意見を出し合っている。
「皆さまお疲れ様です。磯山さんも報告有難うございました。確かにダンジョンはどんなに掘っても、0時には元に戻ってしまいますからね。という事は、蟻塚を壊せれば女王蟻の討伐も可能と言うことですね?」
トウキン探索部顧問の佐藤さんだ。この方は昔、海外特殊部隊に所属していたが辞めて傭兵に転職し、要人警護などを行っていた戦闘のプロだ。
武器の扱いも上手く、訓練施設でも一緒に汗をながしていた。
「おそらくは…蟻の性質を調べて見ると、女王蟻はそれほど早く動けないと言うことですので、塚さえ壊せれば、女王蟻の討伐も可能かと」
「わかりました。磯山さんを頭に4班は引き続き5班と合同で蟻の討伐と蟻塚の破壊を、他の班も蟻以外にも昆虫の巣や、魔物の群れなど充分注意して、探索を行ってください」
佐藤顧問がそう言って、今日のミーティングは解散となった。
「明日から毎日蟻塚通いになるんだろうな」
と一人ごちる。
それを聞いてたヒサが
「嫌なの?魔石やスキルブックとかウマウマじゃない?それに女王倒したら凄いアイテム出るかもよ?」
とニコニコしながら言っていた。
確かに!と思い返して、俺もニコニコが止まらなくなった。
探索4日目のダンジョン内、蟻広場(命名)の前に現在、我々4班5班合同チームは居る。
昨日と変わらず、まずはドローンを飛ばして気を惹かせてから各個撃破である。
早速出てきた蟻を、まず俺の弓で一匹撃破する。それでもまだ気付いてないので、塚20mまで皆で移動してから、拳銃で戦闘開始。頭を狙えば一撃である。
中の蟻が出てこない…。一撃で倒してしまうとフェロモン出さないのかな?なんせ死ぬと消えちゃうからな。
しょうがないのでまた少し下がり、俺の弓で巣に対して一撃かます。
すると働き蟻が、ワラワラと出てきだした。それを引き付けて皆で撃ちまくる。
俺もアイスアローも使って攻撃を加えていく。魔法は、蟻に1cm程度刺さってから砕けて消えた…
兵隊蟻も出てきた。今日は近接で戦ってみようと話し合っていたので皆、ナイフを抜いて構える。
「6匹居るから手前3匹は4班で受け持つ」
そう言って俺達は兵隊蟻に向かっていく。
「3匹目をヒサがキープ、先頭をアキとヤマ、真ん中をオレとコズ」
「おう」「りょ」と返事が来て、皆で動き出す。
5班も振り分けが終わり、向かっていく。
アキが真っ先に敵にハイキックをカマしていたのが横目で見えた。
その後俺らも真ん中の敵に攻撃を加えて行く。敵の動きはそこまで速くなく、余裕を持って戦っていける。
最後の一発分のアイスアローを当てて見たが、ダメージは与えられてないっぽい。
ナイフ両手二刀持ちで、顔を狙って斬りつけていく。案外切れるし刺さる。コズも右ストレートを蟻の脇に突き刺し、蟻の装甲を打ち抜いていたのには驚いた。
そのまま俺が脳天にナイフを刺し終了。ヒサの援護に向かう。
ヒサの方の蟻は、試したいことも特に無いので、そのまま倒した。
周りの皆も終わっていて、魔石と素材の回収をして、怪我など無いか確認する。
ヒサは試しに盾で攻撃を受けてみたらしく、かなりのパワーがあったと興奮して話している。
集めたスキルブックを分配する。今日は4班がスキルブックを貰う約束をしていたので確認していく。
ナイフ術と格闘術、アクティブスキルの「ヘヴィショット」「硬化」のスキルブックがあった。
「ヘヴィショットはおそらく重い一撃?硬化はそのまま固くなるんかね?使った人じゃないと詳細がわからないのよねぇ」
とヒサが言う。そうなのである。使ってみないとわからないのである。
今回はコズが「ヘヴィショット」と格闘術で、ヒサが盾役に役立ちそうな「硬化」、ヤマがナイフ術を使うことに。
多分これでコズの右ストレートの威力は、世界一になるだろう。
「さあ、本日のメインイベントだ」
そう言っておそらく、2階建ての一般家庭の大きさがある蟻塚に近づいていく。
今日は5班が大ハンマーを持って来てくれているので、破壊していく。
1回2回と振り抜いて行くと、破片が飛び散る。3回4回と振り抜くと、殴った所にヒビが入っていく。それをローテーションで繰り返し、6人目だった5班リーダーのヤスのときに、大きく壊れた。
この調子で反対側からも殴り始めると、なんと壊れた場所から女王蟻が出てきた。
デカい!最初にそう感じた。多分1.5mはあると思う。巣穴が小さくて出て来れなかっただけか?ただ予想通り歩みは遅い。そして腹がぶよぶよしている。
「回避盾で行こう!5班は蟻の後ろに回って攻撃を、4班で敵を引き付けて!まずはスキルなしで行こう」そう指示をして戦闘開始。
強度としては兵隊蟻と変わらない。ただ生命力が違う。そしてコイツ
「回復してやがる!!」
何度か脳天や腹に致命傷を与えているが倒れない。そして傷口か無くなる。それを5回くらい繰り返したあと、やっと魔石に変わって行った。
「ふぅ…やったね」と、アキが笑顔で微笑む。「おう」とヤロウ共が答える。
ドロップした魔石は5cmで、今までで一番大きく、魔法のスクロールとスキルブックを1冊づつ落とした。そして巣の中に鉄ッぽい宝箱があった。
魔法「ヒール」のスクロールっ!!!
すげー早くもヒールだぜ!まだ探索4日目たぜ!!初日に他の班で出たけど、自分らで出したのとは感動が違う。ただこれは5班にあげる。約束だからね。
そしてスキルブックは「超音波」というアクティブスキル。
これは索敵用か?物の場所が分かる系?
よくわからないが、今の所アクティブをもっていないヤマが使うことに。もともと縁の下の力持ちっポイ立ち位置のヤマにはぴったりかも?
そしてお楽しみの宝箱!今回は鉄だぜ!
と興奮しながら近づく。
また盾を構えて大ハンマーの柄で突く。
「これ、俺じゃないといかんの?」と後ろを向いて聞いてみるが、みんなは一斉に頷くだけ。
ポーション持ってるしなんとかなるか。と思って、思い切って開けてみる。
箱の中にはなんと赤いポーションが5本入っていた。
「赤い!!」
何だかわからんがそう叫んでおく。鑑定スキルとかあれば楽なんだけどね。て思っていると5班の、さっきヒールのスクロールを使っていたミユが、
「青いポーションが生命力回復なら、赤はゲームとかだとMP回復だけど、このダンジョンにはMPが存在しないからひょっとしたら魔法とかスキルの使用回数が回復するとか?」
と凄く鋭いとこに気付く。それならと、俺がアイスアローを使い切って居たので使って見る事に。
「いざ!」
ちょっとヌルいが、味は不味くはない。
そして効果はまさに言った通り、魔法の使用回数が回復していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます