第15話 探索者 VS 蟻

 宝箱を見つけた俺達は、まだ開けずに合流を先にし、皆で木の箱の前に立っている。


 「トラップとかないわよね?」とアキが聞いてくるので「わからん」と答えるしかない。


 みんなの顔を見回しても、わかる人はいなそうなので、取り敢えず盾を構えてナイフの柄で突いて見る。


 特に何も反応がないので、心を決めて蓋を開けてみる。

 

 宝箱は特にトラップが発動した感じもなく普通に開いた。中には青い液体の入った小さなビンが3本入っていた。


「多分これポーションだね」前に自衛隊のドロップ品の資料を見ていたので、そう答えた。中身を取ると箱は消えた。


 今日の探索はここまでにしてギルドに帰ることにする。


 帰りは、行きに倒したモンスターが今日1日湧かないので楽なもんだ。


 帰る途中でアキにスキルについて色々聞いてみたところ、二段突きは素早さと器用が補正されるらしく、今日1日で3回使って、能力が1づつあがったみたいだ。


 早く俺もスキルが欲しい!強いヤツください!と強く思う。


 そしてギルドに着き、魔石を渡し、サインをし、装備を外してトウキン探索部に戻り、本日最後のミーティングを行う。


 我々は今日得たスキルブックとポーション、それとドローンに映った木々の生えてないサークルを映像とともに報告した。


 そして他の班の報告を聞き、本日も定時となったので解散となった。


 食堂で夕飯を取りながら他の班とも交流を持つことも大事な事だ。

 他の班は、5人で一緒に行動しているらしく、皆かなり暇しているみたいだった。


 時間もだいぶ経ち、皆酒が入り始めたので俺は自分の部屋に戻ってシャワーを浴びて寝ることにした。


       ★★★★★


 翌日探索3日目、朝の朝礼で、俺ら4班と、隣の5班共同で昨日見つけたサークルの探索を依頼された。


 ギルドに移動し、装備を整え転送門を通る。そして5班と今日の流れを相談し、一緒にサークル手前1kmの場所まで移動してから、またドローンを飛ばす事になった。


 今日はちょっと近くまでドローンを飛ばして見ると、5班のリーダーのヤスが「この真ん中、土が隆起して見える」と言う。


 確かに土の上に土が隆起していても上空からでは解りづらい。


 ドローンを近づけてみると、隆起していた土の中から、黒光りした小型犬くらいの大きさの昆虫が飛び出してきて、ドローンを威嚇しているのが見える。


 昆虫は蟻で、隆起していた土は、巨大な蟻塚であった。一匹に気付かれた後、10匹くらい出てきた。


 蟻は、地球上でもかなり危険な昆虫で、毒を持っていたり、自分より何倍も大きい獲物を強靭な顎で咥えて巣に運んだり、哺乳類を食い尽くす事もあるほど凶暴だ。


 そして組織としても優秀で、女王蟻を筆頭に、役割がはっきりと分かれている。


 そんな蟻が小型犬の大きさである。恐怖しかない。


 それでも俺としては蟻がどの程度の強度があり、銃やナイフが通用するか、試してみたかった。


 皆の顔を見回すと、皆同じだったようで頷いて答えてくれた。


 その後、木々が無くなるサークルの手前まで移動し、目視で観察してみる。


 蟻塚がデカイ!普通に2階建ての一軒家くらいはある。


 蟻達は、ドローンが出す空気の振動に反応していて、こちらには全く気付いいないようだったので、作戦会議をする。


 まずは俺の複合弓での射撃を蟻に向けて行ってみることにした。皆はいつでも逃げれるように準備してもらう。


 蟻達はかなり興奮しているらしく、隙だらけなので、一匹に狙いを絞って矢を放つ。


 すると背後から背板に入った矢が腹節の胸の辺りから飛び出して、蟻を魔石に変えた。


 改造複合弓が凄いのか、蟻が弱いのかよくわからないので、もう一匹、今度はヤマに拳銃で狙って貰うことにした。


 結果としては約50mの距離では、傷は付けることは出来たが、倒すまでには至らなかった。そして、こちらに気付いた一匹が、こちらに近づいて来たので、ヒサが盾役を引き受けてる間に、アキとコズにナイフでの近接攻撃を指示してみた。


 アキとコズの近接攻撃は、充分に致命傷を与えることが出来、ヤマの拳銃も、この距離なら頭部を撃ち抜ける事がわかった。


 そしてドロップした魔石は、今までのより一回り大きい。


 そんな実験をしていると、おそらく手負いだった蟻から救援フェロモンが出ていたのか

今までドローンに夢中だった蟻と、さらに巣からも新たに湧き出してきた。


 こちらとしても倒せることが判明したので恐れることはない。


「距離20mまで引き付けて、拳銃で射撃していこう」俺が指示すると、皆頷く。


 皆狙いを定めて距離20mに入ってくる蟻達を撃ち始める。撃ち尽くすとマガジンを交換しまた撃ちまくる。


 大体30匹くらい倒した頃、ひときわ頭の大きい蟻が数匹、巣から出てきた。誰かが「兵隊アリだ」と声に出す。


 俺はまた複合弓を手に取り、兵隊アリに向かって矢を撃ち始める。


 矢は働き蟻と変わらず、兵隊アリの頭を撃ち抜いた。その後は、周りに拳銃で威嚇射撃をしてもらっている間に、全ての兵隊アリを射尽くす俺。


 大小合計50匹くらい倒した所で後続が途絶えたので、女王以外は倒しきったと判断し、魔石の回収とスキルブックが何冊か、そして待望の魔法スクロールに、兵隊アリの物らしい顎が3個、見つけることが出来た。ちなみに女王は巣からは出てこないし、流石に巣に入るわけにも行かないので、放置しか無さそうだ。


 このクラスの敵からは、魔物の素材が出ることがわかったが、自衛隊の調査隊からの報告はなかった。秘密にしていたのかな?


 魔石は、ゴブリンとかの底辺モンスターが2cmくらいで、働き蟻が3cm 兵隊アリは4cmの大きさがあった。


 ドロップ品は、パッシブスキルのナイフ術と格闘術、アクティブスキルのパワースラッシュ、そして魔法はアイスアローだった。

 

 パワースラッシュは使うと強い斬属性の一撃を繰り出せるスキルだと思われる。

 そして魔法アイスアローは氷の矢で敵を射抜く魔法だ。


 協議の結果、魔法は俺が使うこととなって、その他のスキルブックは5班に全て渡すことで話しは終わった。コズ曰く「どうせ明日もここに来れば、何かしら出るから」と言うことだった。


 今日の感じだと、ひと班で行けそうだったし、ここのエリアの探索担当は我々4班である。今後が楽しみだ。


 女王蟻討伐は名残惜しいが、ここに居てもしょうがないので、スキルと魔法を試してみることにする。


 パワースラッシュとナイフ術は、5班のリーダーのヤスが使うようだ。


 武器系のスキルブックの効果は分かりづらいが、ナイフを手に持てば、一振り一振りが洗練されて、動きや軌道が最適化されているように見える。これがナタに持ち替えた途端になんか大雑把になるから不思議である。


 そんなナイフ術を覚えたヤスがパワースラッシュを使っても、敵が弱すぎてわからなかった…。


 そして待ちに待った魔法を覚えるときが来た。俺の「賢さ」は13だ。他の項目とは違い、上げにくいのが賢さである。


 それでも一応我々4班の中では一番賢い。

それだから俺が魔法スクロールを頂く事になったわけだが。


 それではいざ参る!


 スクロールを使うと、すーっと俺の中に吸い込まれるように消えていく。


 そして頭の中と、目の前にあるタブレットに、「アイスアロー3/3」という名前が書き込まれている。多分3回使えるっぽい。今日は後は普通に探索するだけなので、アイスアローを使い切ろうと思い、お披露目を兼ねて雑魚モンスターを探す。


 すると前にイモムシがいるのでアイスアローを使う。「アイスアロー!」叫ぶ必要は無さそうだが、ノリで言ってしまった。


 すると、空中に氷の矢…というか氷柱つららが浮かび上がり、イモムシに向かって飛んでいくではないか。


 周りも「おぉ〜」と感嘆している。


 氷柱はイモムシを貫通して一撃で倒せたが雑魚過ぎて当てにならないので過信は禁物である。


 その後は蟻退治は午前中で終わってしまったため、5班と別れて昼食をとり、自分たちのペースでいつも通りの雑魚狩りである。


 戻る時間まで、雑魚狩りをしてからギルドに戻る。今日の魔石は、いつもより大きいのが多数あるのでダンジョン省の魔石担当員はビックリして記録していた。

 

 調査隊は新宿のギルドにしか大きい魔石は納めてないはずなので、ここ上野ではひょっとしたら初物かもしれない。


 我々は受領書にサインをし、装備をしまって会社に戻り、ミーティングではドローンの映像を見せながら、敵の特徴や戦闘方法、ドロップ品などを報告した。

 


 






 




 


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